朝日、読売、日本経済の3新聞社が展開してきた記事読み比べサイト『あらたにす』が、4月からフェイスブック上の「学生サイト」に生まれ変わる。

 すでに2月末日で閉鎖されている『あらたにす』のスタートは'08年1月。「3紙の記事を比較して読むことができる」をキャッチフレーズに、3社によるインターネット事業組合が運営。'07年10月にインターネットを利用した共同事業、販売事業で業務提携を結んでいたこともあり、新聞業界の“勝ち組”による事業と注目された。
 しかし、人気は伸びなかった。当初の目標ビュー数は上回ったものの、そもそも新聞を読む人口が激減している時代。広告も集まらない状態だったという。

 これに輪をかけたのは、3社のインターネット事業への取り組みの違いだった。日経は'10年3月、『日経電子版』を立ち上げ、現在の会員数を120万人(同社発表)まで増やしてきた。対する朝日は'11年5月、『朝日デジタル』を立ち上げたものの、会員数は7万人まで届かない。「使い勝手が悪いなどの理由で、社員の多くが会員になっていない」(朝日の社員)状況だという。
 両サイトとも、新聞を購読していれば月間1000円で視聴できる条件は一緒だが、朝日が月間5億数千万ビューあり、広告収入も確保してきた無料の『アサヒ・コム』を捨てきれなかったことが、低迷の大きな要因らしい。
 ここにきて、『アサヒ・コム』を大幅縮小し、デジタルでなければ全文を読めないシステムに変更したものの、「手遅れ感」が同社には漂っているとか。デジタル部門で失敗した取締役が、今年6月に予定されている新社長レースから脱落したともいわれる。
 残る読売は、『YOMIURI ONLINE』をもち、過去の記事を検索できる『ヨミダス歴史館』などを売り物にしているものの、「紙(新聞)で勝負」との基本姿勢は崩していない。
 こんなに違う運営方針では、『あらたにす』が続くはずもない。

 わずか4年あまりで姿を変える(実質は消滅する)『あらたにす』は結局、先の読めない新聞社がインターネットに完膚なきまでに敗れ去っただけということか。