中国における鉄道建設技術の権威的存在である王夢恕氏は「中国経済週刊」の取材に応じて、中国の高速鉄道が最高時速350キロメートルで走行していたことはないと述べた。鉄道部などが一時唱えていた「世界最速」は「単なる宣伝にすぎなかった」という。中国経済週刊が報じた。

 王氏によると、2011年2月28日に汚職などの疑いで停職処分になった鉄道部の張曙光元副総工程師らは、「中国の高速鉄道は、時速350キロメートルでも不足だ。時速400キロメートルが必要だ」と述べていたが、「大ぼら」だった。

 実際には、時速400キロメートルを実現できるわけがなかった。線路、橋梁(きょうりょう)、トンネルが堪えられる(設計上の)最高時速は350キロメートルだ。時速400キロメートルで走らせたら「電車を壊し、人を殺す」ことになるという。

 中国ではその後、「高速鉄道の最高時速を300キロメートルに引き下げる」と発表されたが、「実際に減速したわけでない。もともと、そんなに速く走らせる予定ではなかった」という。最高時速350キロメートルというのは「宣伝のためだけの“最高速度”」であり、「不合理な宣伝をしていたために、(減速と)発表するはめになった」という。

 王氏は「宣伝するにしても、事実にもとづかねばだめだ」と、中国政府・鉄道部を批判した。

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◆解説◆ フランスの高速鉄道TGVは、一部区間で最高時速320キロメートルで営業運転を行っている。日本では山陽新幹線と東北新幹線が、一部区間で最高時速300キロメートルで営業運転している。東北新幹線では2012年度末までに、TGVと並ぶ営業運転時の最高時速320キロメートルを実現する予定だ。(編集担当:如月隼人)