民主党政権誕生の原動力となった「子ども手当」は、当初約束された満額月2万6000円を一度も支払うことなく廃止され、かわりに「児童手当」が復活することになった。「社会全体で子供を育てる」という理念は、もはや完全に失われた。

 さすがに「言うだけ番長」だ。民主党の前原誠司・政調会長は3月15日、「児童手当に戻るのではなく、われわれの理念は継承する」と強弁してみせた。

 民主・自民・公明3党の合意により、月内の成立が確実となった児童手当法改正案が衆院を通過した。名実ともに子ども手当は姿を消し、4月からは名称も自公政権時代と同じ児童手当が復活する。

 しかし、子ども手当と児童手当は根本の思想からしてまったく違うものである。

 児童手当では、6月から所得制限が課され、夫婦と子供2人の世帯で年収960万円(所得額736万円)を超えると、手当の支給対象から弾かれる。親の所得にかかわらず平等に手当を配分することで「社会で子供を育て、少子化を食い止める」という子ども手当の理念は完全に失われた。

 実際、子ども手当の成果は上がっていた。実施後、2010年の日本の出生率は1.39と(前年比0.02ポイントアップ)、2年ぶりに上昇に転じている。こういうデータを役所は宣伝しないし、その意を受けた記者クラブ・メディアも報じない。

 子ども手当の効果は海外でも証明されている。日本と同じように少子化に悩んでいたフランスは、第2子以降には20歳になるまで月2万〜3万円程度の家族手当(所得制限なし)を給付するなどして、出生率をEU加盟国2位の2.01(2011年)まで押し上げた。

 日本でも出生率が上向きの兆しを見せていた矢先、その原動力は唐突に廃止されてしまったのである。

※週刊ポスト2012年4月6日号