ホワイトハウスがネット規制法案に反対を表明

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1月14日土曜日、オバマ政権は現在問題となっているネット規制法案に反対する旨を表明した。この法案は、裁判所の命令に基づきインターネットのインフラに手を加えることで、オンライン上の著作権や商標権侵害に対処することを目的とするものだ。

声明では、「インターネットのセキュリティの基礎であるドメインネームシステム(DNS)や、アーキテクチャを変更するような法案は認めることができない」とし、「DNSフィルタリング条項によりサイバーセキュリティに重大なリスクが生じ、密輸となる商品やサービスがオンラインで扱いやすくなることが、我々の分析で判明した。我々は、危険かつ信頼の置けないDNSサーバにユーザーを導き、DNSセキュリティ拡張(DNSSEC)のような次世代セキュリティポリシーを危険にさらすような法案に賛成することはできない」と述べている。

今回の声明が発表される前、上院・下院のリーダーたちは嵐のような一週間を過ごした。多方面から圧力が掛けられ、上院が提出したネット規制法案(PIPA)と下院のオンライン海賊行為阻止法案(SOPA)から、DNSリダイレクト条項を少なくともいったんは削除すると発表させられた。上院司法委員会委員長であるPatrick Leahy氏(民主党、バーモント州)と Lamar Smith氏(共和党、テキサス州)がDNS条項を再導入することは恐らくないだろうと、ホワイトハウスは暗に述べている。

今回の法案で問題となっているDNSリダイレクト条項とは、海賊行為を働いていると法務長官が判断したウェブサイトを一般に閲覧できない状態にする規定だ。

今回のオバマ政権の発表は、セキュリティ専門家の反対意見に譲歩したものだろう。専門家によれば、今回の法案はハッカーからDNSを保護するという政府のこれまでの取組みを妨害し、インフラに誤った情報が混入するためネット表記システムが破壊される。また、SOPAとPIPAの両法案は、普遍性というネットの特徴を失わせ、DNSSEC(偽のDNSを使ってネットのハイジャックを企もうとするハッカーへの対抗策)を普及させようと努力している政府の邪魔をするとも述べており、政府もこれに同意している。


しかしながら今回の法案により、いわゆる偽装サイトに対して訴訟を起こす権限が政府に付与され、裁判所はGoogleなど検索エンジンにサイトのリンクを表示しないよう、命令を出すことができるようになる。また、オンライン広告サービスやクレジット会社が問題サイトと手を切るよう、裁判所に命令を要求する権利が発生する。もっとも、政府はこういった規定に賛成であるかどうかは明らかにしなかった。

今回の声明は、著作権の権威であるVictoria Espinel氏、最高技術責任者のAneesh Chopra氏、サイバーセキュリティ担当で大統領特別補佐官のHoward Schumidt氏により作成された。

David Hirschmann商工会議所長は「この法案を通すことは非常に重要だ」とし、DNS条項を削除して審議を進めるよう議員を促した。デジタル著作権関連団体のPublic Knowledgeの法務部副部長、Sherwine Siy氏によると、オバマ政権は今回の法案が「インターネットのセキュリティと安定性に重大なリスクをもたらす」ことを強調しているという。

Darrell Issa議員(共和党、カルフォルニア州)は、下院監視・政府改革委員会でサイバーセキュリティに関する公聴会を1月18日水曜日に実施する予定であった。Issa委員長は、DNSリダイレクトがネットのセキュリティにどのような影響を及ぼすのか証言するよう、専門家らに呼びかけた。しかし、ホワイトハウスが今回の声明を出したことに伴い、公聴会はいったん延期となった。

Issa議員が召還したメンバーの中には、ブッシュ政権時代に国土安全保障省で政策担当部長を努めたStewart Baker氏もおり、DNSをいじくり回すと「インターネットのセキュリティに大きなダメージを与える可能性がある」と述べている。


TEXT BY David Kravets
TRANSLATION BY GMOスピード翻訳/鈴木真一







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