アイディアはこれしかないの? もっとできるはずなのに、もっと可能性があるはずなのに、なぜそんなに小さく縮こまるのか。タッチライン際をせわしなく動く、関塚監督の試合中の振る舞いを見ていれば、余裕のなさは一目瞭然だった。世界で19番目に強い国の監督にはとてもではないが見えなかった。

しかし、日本は勝利を収めた。劇的な勝利に酔いしれた人も少なからずいるはずだ。日本に蔓延る結果至上主義が、問題点を隠蔽してしまう恐れは十分にある。115位のシリアに、それこそ全力で戦い負けそうになった試合を喜んでしまえば、近い将来、罰が当たるような気がしてならない。

シリア戦ではとにかくボカ蹴りが目立った。特に後半、バッコンバッコン、後方からボールを蹴りまくった。

パスを繋ぐサッカーの片鱗も見せたことは見せた。前半、手の込んだ小さなパスを例によってちょこちょこ繋いだ。一見巧そうに見えるが、実は、展開力に欠ける生産性の低いパスワークで、攻撃のスピードを鈍らせていた。

不思議なのは、それとボカ蹴りとの関係だ。どちらが本当の姿なのか。ここまで落差のあるサッカーをするチームは珍しい。洒落たサッカーを目指しているのか、田舎っぽいサッカーを目指しているのか。支離滅裂とはこのことだ。アトランタ五輪以前に大幅に逆戻りしたような、それこそ世界ランクで50位以上転落したようなダメぶりを見た気がする。かつてないひどい事態だと思う。

ザックジャパンのことは、多くの人がアーだコーだいって関心を示すが、五輪チームにはそれがない。もともと曖昧だった存在が、いっそう曖昧になっている。監督の采配、メンバー選考に異を唱える人もほとんどいない。ファンの関心も高そうではない。巷で話題になることは少ない。五輪は女子がいるからそれで十分といわんばかりのムードさえある。五輪チームはどこへ行こうとしているのか。世界ランク100位台の弱者と、思いきり真面目に戦い、好勝負を演じる姿について、注意を促す人がもっと増えないと、世界ランクはどんどん落ちるような気がしてならない。