■デーブ大久保が絶賛。ニュー古木の打撃

――球界復帰にあたり、今年の5月に格闘家を引退してから、デーブ大久保氏(現・楽天コーチ)の下で練習をしていたということですが、どこからそういう話が?

「僕が週に数回出ていた中野の居酒屋にデーブさんが飲みに来たのが始まりで、最初は僕を少年野球のコーチとして引き抜こうとしていたらしいんです。僕自身も指導者の志向があったので、後日、デーブさんの野球塾に指導方法など教えを請いに行ったんですね。そこでデーブさんに『試しに打ってみろよ』と言われて」

――デーブ氏は「今の古木の力は現役でもトップクラス。重いバットを苦もなく使いこなせるから、統一球も関係なく本塁打30本を超せる数少ない選手」と大絶賛していて、正直、驚きました。

「僕も格闘技をやっていたことで体は動ける自信がありましたけど、最初は現役に戻れる力があるとは信じられませんでした。でも半年前からはじめた連日の過酷な練習と、デーブさんの打撃理論に触れ、野球に対する知識を深めていくうちに、以前にはなかった技術も自信も出てきました。現にバッティングも自分では信じられない打球が飛ぶようになりましたからね。それとデーブさんには気持ち的な部分でも大切なことを教わりました。これまでウジウジと悩んでいたことも、前向きに開き直れるようになったと思います」

――横浜時代はバッティングフォームがころころ変わり、守備がヘタとやじられては心を折りまくっていましたが……もう大丈夫だと。

「ええ。僕は守備がヘタクソですからね。いくらもがいても、“古木あーっと”(注:1)のイメージは覆せないですから(笑)。でもそこで変に意固地になっても仕方ない。その分、自分にはホームランを打つしかないんだと、言い聞かせられますからね」

(注:1)03年7月5日の広島戦で平凡なサードゴロをさばくも、つまずいて大暴投した古木に実況アナウンサーが絶叫した言葉。これ以後、奇想天外な古木のプレーの代名詞としてネットなどで定着した

――トライアウトを前にデーブ氏からは何か言葉はありましたか?

「特にありません。『今の古木ならいつもどおりやれば大丈夫』と。あと、『復帰できたら授業料として、ハマスタの食堂で目玉チャーハンとネギラーメン食べ放題をおごれ』ということぐらい」

――今回、球界関係者もかなり注目しているようですが“ニュー古木”のどこを見てほしいですか。

「一度死んだ人間が生き返ろうとしているわけですからね。前回とはまったく違った古木克明で戻ってやろうと思っていますよ。もちろん、現実はそんなに甘くないこともわかっています。でも、なぜだか今はワクワクするだけで不安はまったくないんです。僕の頭の中にはずっと、プロに復帰しホームランを打っているシーンしか思い浮かばない。それがどこのチームのユニフォームかはわからないんですけど……もう迷うことはありません。絶対にプロ野球のグラウンドに戻ってみせますよ」

(取材・文/村瀬秀信 撮影/佐賀章広)

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