「円の価値を考えるなら、1ドル70円は適正価格の範囲内」と語る吉本氏

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 復興や財政再建を名目に増税が議論されている。なかでも本丸と思われているのが消費税の増税だが、『日本経済の奇妙な常識』の著者・吉本佳生氏はそれは誤りだと主張する。

 そして、返す刀で、財務省と大手メーカーの御用機関となった新聞やテレビをバッサリ切り捨てる。真実をねじ曲げるメディアによって広められた、「奇妙な経済常識」の真実を暴いていくのが本書だ。

――消費税増税は絶対に行なってはならないと主張していますね。

 間違いなく愚策です。しかも1、2%ずつ、少しずつ上げていくのが一番よくない。日本の企業数の99%を占める中小企業は、そのコスト増を価格に転嫁できないからです。

 考えてみてください。近年、資源価格高騰がいわれているのに、日本ではモノの値段が下がり続けているでしょう。それは、日本の企業数の99%を占める中小企業がコスト増を値段に反映させられていないから。原材料費が上がっても、それを中小企業は賃金カットやリストラで吸収しています。

――中小企業の従業員を犠牲にして、日本はデフレが進行しているということですね。

 そうです。これがさまざまな業種で起こると日本経済全体の消費が落ち込んでしまいます。今の日本の不景気の原因のひとつがこれです。消費税を上げても、中小企業は価格を上げられないでしょう。仮に10%上げるなら日本中で大幅な値上げが起きるかもしれませんが、少しずつ増税すると、そのたびに企業の体力をじわじわと奪っていくことになります。賃金デフレがさらに進んでしまうのです。

――こういう消費税増税批判は、大手メディアではあまり見かけないですね。

 日本のメディアが一般の消費者の方向を向いていないからです。ほかに、歴史的な円高だから円安に誘導すべき、という意見も頻繁に出てきますが、それも誤り。

 今は1ドル70円台後半ですが、円の価値を考えるなら適正価格の範囲内。決して円高ではありません。なのに、多くの新聞やテレビが円安誘導を主張するのは、広告主の大手輸出企業のご機嫌を取ろうとしているのです。

――広告とは無縁のNHKでも、円高対策すべきという番組があります。

 はっきり言うと、NHKの経済報道をやる人に基礎知識がないのです。経済学の修士号を持っているような優秀な人はいます。しかし、そんな人を差し置いて、素人同然の人が国際金融の番組を担当したりする。英語がしゃべれて美人だから取材しやすいだろう、なんていう理由で抜擢されることがあるのです。

 その人たちは経済の知識がないから、ほかのメディアがどんな報道をしているのかを見て、なんとなくこっちが正しいのだろうという調子で方向性を決めてしまう。あと、経済については、『日本経済新聞』のような権威あるものから外れた主張をすることに風当たりが強いようです。2004年に起きた不祥事以降、NHKは内向きの事なかれ主義の組織になってしまっている印象があります。

――報道が画一的だと、まともな議論すらできませんね。

 そこが問題なのです。増税や円高の報道は、まるで戦時中の大本営発表のように、財務省やスポンサーの顔色をうかがってねじ曲げられています。メディアや専門家に騙されないためには、自分で考える能力が必要。

 この本では、非常に細かく詳細に経済理論の基礎を解説したつもりです。図版などのデータも豊富に入れました。それは、知識と判断する力が何より大切だからです。それがないと、騙されて大損をしてしまいますよ。

●吉本佳生(よしもと・よしお)
1963年生まれ、三重県出身。エコノミスト・著述家(元大学教員・元銀行員)。専門は金融経済論、生活経済学、国際金融論

『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書/777円)=NHK『出社が楽しい経済学』やベストセラー『スタバではグランデを買え!』の吉本氏が、間違った経済の常識を覆す! 「日本政府の財政破綻は絶対に避けるべき」「資産運用は国際分散投資」「国際競争を考えたら、労働者の賃金アップはムリ」……これらの誤りを基礎から徹底解説する。

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