先ごろ、覚せい剤取締法違反で検挙された40歳代以上の初犯者が、この5年間でなんと約20%増えていることが警察庁の調べで分かった。

 昨年覚せい剤事犯で逮捕されたのは、全国で1万1993人。そのうち、40歳代は3290人で初犯者は916人('06年比19%増加)。50歳代を見てみても1776人で、初犯者は334人と同年比で19%増加している。
 「昨今の長引く不況で、40代を過ぎて一度職を失ってしまえば、雇ってくれるところもない。そんな社会不安の増大で、覚せい剤に手を染める人が後を絶たないんです。今の時代、覚せい剤は簡単に手に入る。外国人から買えば足もつきづらいため、病みつきになる人が少なくないようです」(社会部記者)

 北九州市内のある無職の男(45)も福岡地裁小倉支部の公判で、覚せい剤に手を出した理由を「仕事がなくなり悩んでいた。気を紛らわしたくて使った」と述べている。
 薬物捜査が長い捜査関係者が言う。
 「ひと昔前なら覚せい剤といえば極道と決まっていた。ところが昨今は、逮捕される3分の2は堅気なんです。雇用不安に加えて、中高年は会社でも孤独。以前は後輩を伴って飲み歩いて憂さを晴らしていたようですが、今の若者はあまり酒を飲まないでしょ。結局、一人寂しく飲むか、一度シャブを覚える機会があれば最後、桃源郷の世界を彷徨うことになるわけです」

 覚せい剤の特徴は、打つと万能感を得られることだ。逆をいえば、それだけ仕事やプライベートに空虚感を覚える中高年が増えているということか。
 「バブルが弾けた後も、覚せい剤事犯で検挙された者が急増しました。やると何事も自分の意のままになるという無限の力を得たような錯覚に陥る。落ち目の芸能人がシャブを打っては在りし日の自分を思い起こし、再び人気が復活するような気を起こして深みにはまっていくのはそのためです。分別盛りの40代、50代が初犯で捕まるというのは、社会全体が病んでいる証拠ですよ」(同)

 先が見えない不安の大きさを物語っている。