はじめに

 世間はクライマックスシリーズで宴もたけなわですが,ポストシーズンに突入したということは,リーグ戦のデータが揃ったということでもあります。そこで,少し早いかもしれませんが2011年のデータをまとめて行きたいと思います。

 2011年はいろいろあった1年ですが,影響の大きかったものとしては“統一球”を避けて通ることはできません。最近では,スポーツニュースでも統一球によって今年のプロ野球がどう変わったかというデータを紹介していたりもします。「もう少し詳しいデータを出してよ」と見ていると思うのですが,まぁスポーツニュースにそこまで求めるのは酷というものですから自分で分析みたいと思います。

 今回分析してみるのは,先発投手の投球内容(投球回・自責点)と試合の勝敗の関係です。統一球の導入は投手有利に働いたというのが一般的な見解ですが,これは全ての投手に与えられた恩恵なのでしょうか,それともある程度の実力を持った投手にのみ有利に働いたのでしょうか。

2006〜2010年までのデータ

 まずは,2006年〜2010年のデータをまとめてみたいと思います。2006年〜2010年のデータは以前に報告しているのですが,今回改めて整理したものを掲載したいと思います。データは,プロ野球ヌルデータ置き場様を参照しています。


投球回と自責点の関係

 まずは以下の表1のデータを御覧ください。

表1




 これは,2006年から2010年までのNPB12球団のリーグ戦のうち,引き分けの試合を除いた4212試合,8424チーム分のデータで,投手の投球回数と自責点の関係を分析したものです。

 例えば,投球回が“7”で自責点が“1”の欄に“457”とあって赤色がついています。これは,先発投手が7回登板して,自責点が1点だった試合が457チームあったということです。

 7回と1/3,7回と2/3といった8回未満のデータは7回に含みます。色の付いた欄は試合数の多いことを示しています。色付けの基準は以下の表2に示します。

表2

 次は,同じデータをリーグごとに見てみたいと思います。まずは,セ・リーグ4224チーム分のデータを表3-1に示します。

表3-1



 続いて,パ・リーグ4180チーム分のデータを表3-2に示します。

表3-2





投球回と自責点と勝敗の関係

 以上が,投球回と自責点の関係を試合数から見たものです。次は,投球回と自責点と勝敗の関係を見てみたいと思います。ここでいう勝敗は,試合の結果を指します。投手の星勘定ではないので注意してください。

 まずは,全チームのデータでの関係を表4に示します。

表4



 投球回と自責点の見方はこれまでと同じです。表1と表3では試合数が示してありましたが,ここでは勝率を示しています。表1と表3で色を付けた,試合数の多い条件のところでは勝率によって色をつけています。色付けの基準は以下の表5に示します。

表5

 勝率が高いほど暖色系,勝率が低いほど寒色系の色にしています。

 次は,リーグ別に勝率のデータを示します。セ・リーグの勝率を表6-1に示します。

表6-1



 続いて,パ・リーグの勝率を表6-2に示します。

表6-2



 ここまでのデータは,以前分析したものを改めて整理したり,追加したものです。ここまでの分析と同じフォーマットで2011年のデータを分析して,比較してみようというのが今回の目的となります。

2011年のデータ

 2011年のリーグ戦から引き分けを除いた808試合,1616チーム分のデータを用いて分析します。

投球回と自責点の関係

 まずは,投球回と自責点の関係を表7に示します。

表7



 2006年から2010年までのデータでは,表1がこのデータと対応しています。この表の合計のデータを,2006年〜2010年と2011年のデータを比較したものを図1-1と図1-2に示します。

図1-1

図1-2

 データを見ると,自責点が減って,投球回数が僅かながら長くなっていることがわかります。

 続いて2011年のセ・リーグの試合のうち,引き分けを除いた803チームのデータを表8-1に示します。

表8-1



 このデータは,表3-1のデータと対応しています。この表の合計のデータを,2006年〜2010年と2011年のデータを比較したものを図2-1と図2-2に示します。

図2-1

図2-2

 2011年のデータは,自責点0〜1の試合が増えているのが特徴です。また,5点以上の大量失点の試合の割合が少なくなっています。一方,投球回数は,2006年〜2010年では6回が最も多いですが,2011年は7回が最も多くなっています。

 続いて2011年のパ・リーグの試合のうち,引き分けを除いた813チームのデータを表8-2に示します。

表8-2



 このデータは,表3-2のデータと対応しています。この表の合計のデータを,2006年〜2010年と2011年のデータを比較したものを図3-1と図3-2に示します。

図3-1

図3-2

 2011年のデータは,自責点0〜1の割合が増えているのが特徴です。セ・リーグとは異なり,大量失点の試合の割合はあまり変化が無く,自責点3〜4の試合の割合が大きく減っていることが特徴です。一方,投球回数にはあまり変化はありませんでした。

 自責点が少なくなっていることは想定できましたが,その半面で少なくなった試合が,セ・リーグでは大量失点の試合で,パ・リーグでは自責点3〜4の試合という違いが見られました。この違いが単なる偶然なのか,何か意味のあるものなのかはわかりませんが,興味深いデータといえます。

投球回と自責点と勝敗の関係

 次に,投球回と自責点と勝率を見て行きたいと思います。全チームのデータを表9に示します。

表9



 このデータは,表4と対応しています。2006年までは,自責点を0〜1に抑えて5回以上投げれば,かなりの確率で勝利できていました。しかし,2011年では,自責点の少ない試合が増えたため,自責点1では勝利できる確率がこれまでと比較して低下しています。しかし,得点が入りにくくなったからといって,3失点以上すると勝率が劇的に下がるわけではなく,2010年以前のデータとさほど変わらない結果となっています。

 このデータもリーグ別に見ていきます。まずは,セ・リーグの勝率を表10-1に示します。

表10-1



 続いて,パ・リーグの勝率を表10-2に示します。

表10-2



 セ・リーグの場合は全体の傾向とあまり大差ありません。一方,パ・リーグの方は,3点以下の自責点の場合は全体とあまり変わりませんが,4点以上の自責点の場合の勝率が低下しています。

まとめ

 以上,先発投手の投球回数と自責点とチームの勝敗の関係を2010年以前のデータと比較することで統一球の影響を分析してみました。

 どうやら統一球の影響は,特定の投手というよりも全体的に表れたと見るべきなのかもしれません。また,失点が少なくなっているため,そのまま続投させるケースが増えたためか,若干投球回数が長くなっています。2011年は好成績をあげた投手が多かったですが,投球回数と球数が増えることによる故障のリスクには注意が必要かもしれません。

 また,興味深いことに,先発投手の投球回数と自責点の変化がリーグ間で異なることがわかりました。指名打者制度の有無と統一球の導入によってこのような違いが生まれたことが予想されますが,その原因についてはもう少し考える必要があるようです。

 さて,統一球の導入によって失点が減るという,投手にとっては恩恵の大きな1年でしたが,投手の失点が減るということは味方の得点が減ってしまうということでもあります。

 2010年以前は,自責点を1点以内におさめていればかなりの確率でその試合を勝利することができますが,2011年は1失点でもしてしまうと,これまでのような勝率を期待することができなくなりました。

 これは考え方を変えれば,ロースコアの接戦が増えることで勝敗の行方が最後まで見えにくくなっているともいえます。野球の試合は中盤までに大差がついてしまうと興が失われてしまいますが,そういう事態が起こりにくくなっていると前向きに捉えることもできます。それが面白いかどうかは人それぞれで難しいところなのですが……


おわりに

 2011年のデータまとめ第1段でした。2011年のデータはまず統一球の影響から考慮する必要があり,これまでと同じようには扱っていけない難しさがあります。

 とりあえず,ささっとまとめられる先発投手の投球内容と勝敗の関係を分析してみましたが,これからもいろいろな角度で分析してみたいと考えています。

 とりあえず,今日はこの辺りにしておきます。