悲願の初優勝はならなかったが浅尾美和。パートナーの楠原には毎日、報道陣から「今日の点数」を聞く声が飛んだ。決勝は70点。浅尾は「母親から、今日は100点取れるといいねとメールがきてたのに…」と残念がった (撮影:野原誠治)

 ビーチバレー国内ツアー第6戦ペボニアカップ最終日は2日、お台場海浜公園(東京都)にて男女決勝、3位決定戦が行われた。ニューペアで決勝まで勝ち上がった浅尾美和(エスワン)・楠原千秋(ユナイテッドホールディング)組は田中姿子(エコ計画)・溝江明香(産能大)組にフルセットの末、敗れ準優勝。浅尾のツアー初優勝はならなかった。男子は西村晃一・モカ・モイシス組(WINDS)が井上真弥・長谷川徳海組(フリー)を下し優勝した。3位には浦田聖子(千の花)・西堀健実(丸善食品)組、朝日健太郎(フォーバル)・今井啓介(フリー)組が入った。

 ほぼ1年振りの決勝、7シーズン目の初優勝、満席のスタンドも報道陣も期待の視線の先には浅尾がいたが、重圧を受けていたのは彼女ではなかった。

 「絶対に負けられない試合だった。勝つことが目的だった」と話す3勝目をねらう対戦相手、田中・溝江により大きなプレッシャーがかかっていた。

 昨日、日本代表の浦田・西堀組が浅尾・楠原の前に撃沈。同じ代表として連敗は阻止しなくてはいけない。今季のシード権を持たない浅尾と、アテネ、北京のオリンピアンとはいえ、一線から退きトレーニングをおこなっていなかった楠原。そんな1週間前に始動したチームに、昨季の年間女王が負けるわけにはいかない。

 また、2年目、21歳の溝江とペアを組むベテランの田中にとって、"生徒"浅尾の良さを引き出しながらゲームをコントロールしていく"教官"楠原は、ライバル心を燃やす存在でもあろう(2人は同い年でもある)。

 第1セットから双方腹の探り合い。女王ペアは予想に反し、サーブを楠原に集める。スタミナの度合いを確かめる作戦か。対する即席ペアも、今大会、機能していた浅尾の1ブロッカー体制を捨て、浅尾、楠原ともにブロックに跳ぶ2ブロッカー体制に変更。ディフェンスから揺さぶりをかけていく。

 中盤、女王ペアは溝江のスパイクで点数を引き離し始めると、サーブを浅尾へ。狙い通りの浅尾のミスもあり5点差。しかし、この差を縮めようと楠原が豊富な経験と技術をもとに仕掛けてくる。通常の2アタックだけではなく、ノールックでアンダーハンドトスでの2アタック(相手のポジショニングが頭に入っているがゆえの技)、絶妙なタイムアウト。

 劣勢ながら流れは浅尾・楠原に傾き、終盤2点差まで追い上げる。18−20。しかし今度は田中が、ここしかないタイミングでタイムアウトをコール。このコールが効いて、第1セットは女王ペアが奪取した。

 第2セット。浅尾・楠原の2ブロック体制は継続だが、女王ペアのサーブは、浅尾へ狙いが絞られた。だが「99%、私が狙われると思っていたので、びっくりしていた」(浅尾)第1セットから、ようやく本来の仕事がまわってきた浅尾はレシーブだけでなくスパイクも好調。一進一退ながら試合の流れを掴む。最後は楠原の「打て!」の声に、右腕を振り相手コートに強打を決めた。

 勢いは浅尾・楠原。そのまま最終セットに突入する。しかし、ここまで何度も試合中、声を張り上げ、いつになく厳しい表情でプレイを続けていた田中が地力を見せる。強打、ポーキーショット、サービスエースと「イエス!」の叫び声とともに4連続ポイントを挙げ、流れを引き寄せた。後は女王の作戦通り。スタミナに不安のあった楠原を動かし続けたことが最後に効いてきた。極端に動きの悪くなった楠原にミスが増え、一気に突き放した。

浅尾・楠原組 田中・溝江組 田中・溝江組
[ 写真左 ] 浅尾・楠原組、  [ 写真中央と右 ] 田中・溝江組

 負けられない試合に勝った田中は話す。「相手が誰であれ、自分達が失点している点は修正しなくてはいけない。だが(楠原)千秋は簡単にボールを返してこない。ゲームをコントロールしていた」

 対する楠原は「後半、私のミスがあった。スタミナ切れ。私が狙われてサイドアウトが切れなかった。ただ(日本代表相手に)やりようによってはどうにかなる。パワー等はともかく、自分の持っているもので対応できる」と語った。

 次戦、JBVツアー川崎市長杯(10月6日から、川崎市川崎マリエン於)にも浅尾・楠原組は出場する。浅尾も敗戦会見に「負けて悔しいけど、手応えはあります!」と笑顔で対応した。対戦する相手に大きな重圧のかかるチーム。またも、台風の目になるか。

結果は次の通り

□女子3位決定戦
金田/村上 1(21-18,16-21,9-15)2 浦田(聖)/西堀

□女子決勝戦
田中/溝江 2(21-19,19-21,15-9)1 浅尾/楠原

□男子3位決定戦
青木/白鳥 1(17-21,21-16,13-15)2 朝日/今井

□男子決勝戦
井上/長谷川(徳) 0(13-21,13-21)2 西村/Moca

浦田聖子・西堀健実組
3位にも、笑顔がなかった西堀健実(左)浦田聖子(右)。今季シード落ちの浅尾と、練習をしていない楠原の急造ペアに負けた昨日の試合が相当こたえており、会見でもその話に終始していた

■3位は死守した浦田聖子・西堀健実
第1セットはディフェンスとサーブが弱かったが、それを修正できた。3位は満足していない。(負けた昨日の準決勝は)頭を使って身体を動かしていないから。どちらが悪いということではなく、相手の良さを引き出さなくては…。キリカエになった試合だと思う。

■初優勝の西村晃一・モカ・モイシス
最高のウィークエンドになった。一戦ごとに良くなってきていた(モカとのコンビは3戦目)ので、お台場では優勝したかった。(井上・長谷川組に4連勝)相手も考えてきているが、その上を考えて戦略を決めた。日本のビーチバレーのレベルにはびっくりしているし、上手いチームとやるのは楽しい(モカ)

■準優勝に終わった井上真弥・長谷川徳海
僕らはサイドアウトを切り続けてナンボのチームだが、決勝ではそれができなかった。要所でミスが出てゲームの流れを引き寄せることができなかった。ネット際では相手(モカ)のブロックが高いので厳しくなってしまう。

■4度目の対戦で白鳥・青木組を初めて倒した朝日健太郎・今井啓介
チームを結成してから今日が一番いい試合だった。今まで積み重ねてきたことが、いい場面で出た。相手もプレッシャーがあったと思う。行き当たりばったりでやっていたレシーブも連携が取れるようになった。

浅尾・楠原組 田中・溝江組 田中・溝江組
[ 写真左 ] 西村・Moca組、 [ 写真中央 ] 井上・長谷川(徳)組、 [ 写真右 ] 朝日・今井組

(取材・文=小崎仁久)浅尾・楠原組、決勝、悲願の初優勝へ(2011年10月02日)
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