『友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー/インターシフト) 進化心理学コラム集。友達でいられるのは何人なのか?

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お互いをよく知り理解しあえるグループは何人だろうか?
150人である。
っていうのがダンバー数。
『友達の数は何人?』という本は、その「ダンバー数」のダンバーさんが書いたサイエンスコラム集。

部族社会の集団の平均人数は153人。ビジネス組織でも150人を越えると、さぼりや病欠がぐっと増える。学問の分野でも、研究者どうしが注目しあえるのは100〜200人ぐらい。それ以上になると、その学問分野はいくつかの領域に分裂する傾向にある。

そういえば、「twitterをつづけるコツはひとまず100人ぐらいフォローしてみよう」って多くの人が言っている。フォロー数が100を越えてくるとタイムラインの感じが変わる。ぎりぎり追えるか追えないかぐらいになって、150越えると全員を把握できない感じになって、そのせいで逆にちょっと気軽になる。

なぜ霊長類は脳が大きくなったのか? という謎も、ここに結びつく。
「集団のサイズは、脳の新皮質の大きさに比例している」のだ。
社会的知性説である。

だがしかし! 本書の第一章には、違う説が紹介されている。
脳が大きく発達したのは、複雑な社会に適応するためじゃない。
“脳は、一雄一雌関係を保つことにいちばん「頭を使って」いるのではないか。”
鳥類を調べると、長続きする一雄一雌関係を持つフクロウや烏、オウムなどは、相手を一年でとりかえる鳥よりはるかに脳が大きい。哺乳類でも、イヌ、キツネなど一雄一雌の関係を持つモノの脳が大きく、大勢の群れをつくる種は脳が小さい。
ダンバーは言う。
“妻(夫)のひどい態度に心を痛め、どうして彼女(彼)はそんな仕打ちをするのかと嘆いている人は、自分にこう言いきかせよう。どんな逆境のなかでも最善の結果を出せるのは、進化によって優秀な脳を授かったおかげだと。それに解決策を見いだすのは難しいことではない。庭に舞いおりる小鳥だってやっていることなのだ”。

章タイトルは以下の通り。
●Part 1 ヒ ト と ヒ ト の つ な が り
第1章 貞節な脳(男と女)
第2章 ダンバー数(仲間同士)
第3章 親類や縁者の力(血縁)
第4章 ご先祖さまという亡霊(民族)

●Part 2 つ な が り を 生 む も の
第5章 親密さの素(触れ合い・笑い・音楽)
第6章 うわさ話は毛づくろい(言葉・物語)
第7章 今夜、ひとり?(魅力)
第8章 エスキモーのあいさつ(キス・匂い・リスク)
第9章 ずるいあなた(婚姻)

●Part 3 環 境 や 人 類 と の つ な が り
第10章 進化の傷跡(肌の色・体質)
第11章 進化の邪魔をするやつはどいつだ?(進化と欲望)
第12章 さよなら、いとこたち(絶滅の罠)
第13章 こんなに近くてこんなに遠い(人類の起源)
第14章 ダーウィン戦争(進化と創造)

●Part 4 文 化 ・ 倫 理 ・ 宗 教 と の つ な が り
第15章 人間ならではの心って?(志向意識水準)
第16章 カルチャークラブに入るには(文化)
第17章 脳にモラルはあるのか?(道徳)
第18章 進化が神を発見した(宗教)
第19章 頭を使って長生きしよう(健康・知性)
第20章 美しい科学(芸術)

『友達の数は何人?』は、人と人との関係を中心としたサイエンスコラム集で、興味深いエピソードがいくつもいくつも登場する。

最後に第8章に出てくるモテるための物質を紹介しよう。
アンドロスタジエノンというステロイドだ。これを女性の上唇に塗る。そうすると、お見合いパーティーで、他の女性グループよりも、男性に高い評価をつけ、もう一度会いたいと積極的に働きかけたのだ。
アンドロスタジエノンというのは、“ひげそり直後の男性から発散されるちょっとカビ臭いような匂いがそれ”って書いてあるんだけど、ひげそり後にそんな匂いする? しねーよ(はっ、だからモテないのか!)。(米光一成)