――イグアナも名脇役でしたが、共演した感想を聞かせてください。

宮崎:あの子はすごいですよね。
:すごいね。動かない時は動かないし、動かなきゃいけない時は動くし。
宮崎:あの子はすごく穏やかで絶対に噛まないし、ずっとずっと頭を撫でていても、うんともすんとも言わない。でもたまに顔を近付けるとペロッてなめてくれるのが、すごくかわいいんですよ。

――すごい! 完全に役者ですね。

:撮影は大変だったと思いますよ。すごいですよ。
宮崎:スタッフさんがすごいですよね。
:動くシーンはやっぱりスタッフさんの勝利だと思いますよね。ただやっぱり、“動かない”というのもすごく大事で、二人が揺れ動く中に動かない存在が一つポンッとあるだけで結構安心出来る。夫婦の間に一匹生き物がいるってすごく大事だなと思いました。尊敬の念すら出てきましたね。

――お二人は爬虫類は大丈夫ですか?

:大丈夫でした。
宮崎:私も大丈夫でした。

――原作者の貂々(てんてん)さんも撮影に協力してくれたとか?

:貂々さんが最初にセットをご覧になった時に、イグアナの装置のダメ出しから入ったのがおかしかったですね。「これはイグアナ的にはありえません」って。

――それは面白い(笑)。では、貂々さんと一緒に作り上げた作品ということですね。

宮崎:ペンの持ち方が貂々さんは変わっているので、その指導で現場にも来てくださったこともあってすごく協力して頂けたと思います。
:本当に主要なスタッフの一人で、今回のためにカットも書き下ろしてくださっているので、貂々さんは必要不可欠な方でした。ご家族でいらっしゃったりしていたので、その雰囲気をいいなと思いながら見るのは素敵な経験でした。

――“ツレ”さんも現場にいらしたとのことですが、演じる上で影響を受けたことはありましたか?

:今回は我々の夫婦の形というのがあったから、あまり影響されないようにしようと思っていたので、特に“ここが”というのはないです。子育ての苦労とか、昔ブラスバンドをやっていたんだよという雑談程度のお話をしていました。

――映画の“ハルさん”&“ツレ”夫妻についてはどう思われますか?

宮崎:素敵だなと思いますね。この夫婦はうつ病という壁にぶつかって、それをちゃんと二人で力を合わせて乗り越える。きちんと向き合っている姿はすごく尊敬します。いろいろな夫婦の形があるけど、私はすごく良い夫婦の形だなと思います。
:僕もそう思います。どこかに完璧な理想像があって、自分の手持ちの材料を全部捨ててそこに近付いていくんじゃなくて、今ある関係性を今ある材料の中で上手く使いこなしながら、一歩でも良い方向に進めていくというのがすごく成熟した大人の関係な気がするんですよね。答えをどこか違う所に求めるんではなくて、あくまで自分たちの関係性の中でそれを見出していく。すごく素敵なことなんじゃないですかね。