新規武将をゲットできる「ブショーダス」は人気フィーチャーだ

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■モバイル・ソーシャルゲームでは「美しくない」方が良い?

−−UIだけでも、おなかいっぱいという感じですが、話をパラメータに移しましょう。

竹内 僕が主に担当した部分ですね。ゲーム内で得られるお金などのご褒美や、その重みづけなどの設計を、人見と喧嘩しながら作っていました。

人見 一つのゲームで、複数の遊びの要素があるものって、たくさんありますよね。ドラクエでメインのストーリーとは別に、カジノが遊べるとか。その場合、カジノでお金を稼ぐとアイテムが買えて、メインのストーリーが進めやすくなるというように、循環構造をとるのがセオリーです。

−−そうですね。でなければ、ミニゲームの意味がなくなっちゃう。

人見 でも本作では、それを一部で違反してるんです。たとえば内政でお金が増えても、ブショーダスで使えない、とか。あえて、美しくないことをやっています。

−−ええっ? なんでですか? 

人見 二つの理由があって、一つはゲームバランスが破綻してしまう恐れがあるんです。というのも内政はゲームの進め方に大きく依存するので、個人差がつきやすいんです。一人用ゲームなら良いんですが、ネットゲームのように多人数で遊ぶゲームだと、このリスクが高まってしまうんですね。本作を作って、その意味がわかりました。

−−なるほど、もう一つの理由は?

人見 循環構造をとると美しいんですが、最初にゲーム内容をしっかり理解して遊ばないと、十分に楽しめないんです。家庭用ゲームで、じっくり遊びたいプレイヤー向けならいいんですが、ソーシャルゲームのカジュアルなプレイヤーに対しては、もっと手軽に遊べるようにしないと、ダメだろうと。

竹内 理屈が分かってなくても、すぐに遊ばせたい。そのためには、テンキーの「5」キーをポチポチと押していくだけで、なんとなくゲームが進むというようにしなくちゃいけない。そのために、それぞれの遊びをどんな風に配置するかや、パラメータをどう繋ぎこむか、さんざん議論しました。

−−なるほど。モバイル・ソーシャルゲームは基本プレイが無料なので、幅広い人に手にとってもらって、手軽に遊んでもらわないといけない。そのためには、フックをたくさん作る必要があるということですね。

飯塚 まさに、プレイヤー層の違いが顕著に出ている例かもしれませんね。

■やっぱり「呂布」は強かった? 人気武将の条件とは

−−このほかに、違いを感じられたことはありますか?

飯塚 実はここにいるメンバーはみんな、元々家庭用ゲームを開発していた人間なんですが、モバイル・ソーシャルゲームに移ってきて、データの収集と分析を、非常に熱心にやるようになりました。

竹内 KPI(Key Performance Indicator)を毎日とって、いろんな考察や研究を行っています。一人いくら課金しているかとか、それぞれのレベルで何人プレイヤーが辞めるかといった、プレイヤーの詳細データのことです。

人見 さっきのUIなどの話は、けっきょく社内で議論していても、机上の空論だったりするんですよね。それよりも実際にアップデートでボタンを変更したものをリリースして、3日くらいKPIをとって比較してみると、けっこう数値が変わるんです。

飯塚 もっとも、いくらデータが正確でも、分析が間違っていたら、意味がありません。そこが課題ですね。

−−逆にねらった施策があたったりすると、すごく嬉しいんじゃないですか?

竹内 嬉しいですね。効果が目に見えてわかるので。

飯塚 シミュレーションゲームを実際に体験しているようなイメージですね。

竹内 人気武将がブショーダスに登場すると、一気に課金率が上がったり。時には反応が予想と違って、驚かされることもあります。

−−何か良い例はありますか?

竹内 実はスタート前は、可愛い女の子の武将キャラに人気が出るだろうと思っていたんです。それこそ「お金になる」のかなと。ところが実際は人気が出ませんでした。それよりも呂布が登場したときは、通常の数倍の売上げになったんです。

人見 三国志のゲームファンは、やっぱり三国志が好きなんですね。そのため萌えキャラよりも、知名度があって能力の強い武将に人気が集まることが分かりました。しかも能力値についても、みんな共通の思い入れがあるみたいなんです。

竹内 たとえば武力100は呂布で、知力100は諸葛亮だとか。

−−過去の三国志に関するゲーム体験が、みんな根付いているですね。

人見 蜀の晩期に活躍した姜維という武将がいて、非常に人気があるんですが、これも改めて驚かされました。

竹内 若くてイケメンなイメージで描かれることが多いんです。諸葛亮なき後も孤軍奮闘して戦ったりと、純粋なイメージなんですね。もちろんパラメータも高いですし。

−−ちなみに、いま登場している武将は、どれくらいですか?

竹内 最近の三国志のゲームでは、600名くらい武将が登場するものもあります。その一方で本作では、まだ130名くらいしか登場していません。なので、今後もまだまだ、有力武将が登場する予定です。

人見 また同じ武将でも、違うシチュエーションで異なる武将にすることもできます。同じ劉備でも、桃園の誓いの時と、漢中王に即位した時の劉備といったように。こんな風に「三国志オールスターズ」的な作り方ができるのも、ソーシャルゲームならではですね。
飯塚 歴史設定に必ずしも厳密である必要はないということですね。それよりも、見た目やモチーフでいかに共感が得られるかが大事なんです。

■ソーシャルゲームならではの「やさしさ」も大事

−−プレイヤーの行動で驚かされることはありませんか?

飯塚 一番驚いたのは、ゲームの機能で不足している点を、皆さんが独自の発想で克服していたことです。「ブラウザ三国志モバイル」を遊びながら、フィーチャーフォンに搭載されているコミュニティ機能を使って、簡易掲示板のようなサイトで互いに情報交換をしたり。そんな風にして同盟バトルを遊んでいるプレイヤーさんが、結構多いんです。

人見 僕らも最初はモバイルなので、暇つぶしに遊んでくれる方が多いんだろうなと思っていたんです。ところが実際には、そうした機能を使いこなすほど、熱心に遊んでくれるプレイヤーが多かったんですよ。実は本家「ブラウザ三国志」がそうしたタイプのゲームなのですが、モバイル・ソーシャルゲームでも、そうなんだと。

竹内 僕らもプレイヤーと混じって遊んでいるんですが、午後3時半にケータイにメールが届いて、「4時から同盟バトルやります!」とか。

人見 モバイル・ソーシャルゲームといっても、どんどん一般的なネットゲームのように成熟して、濃いプレイヤーが増えているんだと思います。

−−今後のアップデートについて教えてください。

人見 基本的な遊びのスタイルは完成しているので、前述の通りステージをどんどん開放していくのが一点ですね。またステージが違ったり、レベル差が離れているプレイヤー同士が一緒に遊べるように、さまざまなイベントを計画しています。同盟バトルなら「みんなで赤壁の戦いに参加しよう」だとか、武将バトルなら「天下一武道会」みたいな大会だったり。さまざまなプレイヤーをイベントでぎゅっと圧縮できるのが、モバイル・ソーシャルゲームの良いところです。

−−最後に読者にコメントをいただけますか?

竹内 内政・武将バトル・同盟バトルと盛りだくさんですが、ぜひ同盟に入って、コミュニティで領地を奪い合う楽しさまで、味わって欲しいですね。他のゲームでは味わえない面白さが詰まっていて、自信があります。

人見 人気ランキングを見れば分かりますが、現在はクエストをこなしていくタイプのゲームの人気が高いんです。それに比べて「ブラウザ三国志モバイル」は一見すると、難しそうに見えるかもしれません。ただし、今までにないアイディアがふんだんに詰まっていますので、普通のゲームに飽きたらぜひ遊んでみてください。

飯塚 実際、モバイル・ソーシャルゲームでは珍しいほど、たくさんの要素が詰まっています。内政・武将バトル・同盟バトルと一粒で三度おいしいゲームで、それぞれが独立して遊べるのが、家庭用ゲームにはない魅力ですので、ぜひためしてみてほしいですね。
−−もう一つだけ確認させてください。領地を奪い合うタイプのゲームでは、一度カモにされると、再起不能になってしまうことがありますが、本作ではどうですか?

人見 そこは悩んだところです。「ブラウザ三国志」が典型例で、そのハードさもゲームの魅力です。でも、モバイル・ソーシャルゲームでそれはありなのかと。一方で、多少の悔しさがないとつまらない。最終的に同盟バトルで負けて、領土は奪われても、個人資産は奪われないという形に落ち着きました。

飯塚 そのため、何度でも再起可能です。やっぱり「ソーシャルの優しさ」も必要じゃないかと。通常のネットゲームと、ソーシャルゲームの中間的な位置づけですね。

−−なるほど、「ソーシャルの優しさ」は良い言葉ですね。ありがとうございました。
(小野憲史)