PC版より中身が増えた? 「ブラウザ三国志モバイル」のトップ画面

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今やすっかり市民権を得たソーシャルゲーム。特に日本ではフィーチャーフォンで遊ぶ「モバイル・ソーシャルゲーム」が大人気で、テレビコマーシャルで「GREE」「Mobage」のロゴを見ない日はないといって良いほどです。しかし、その舞台裏については、意外と知られていないのではないでしょうか。

そこでGREEで遊べる人気ゲーム「ブラウザ三国志モバイル」開発の舞台裏について、いろいろと話を伺ってきました。取材を受けていただいたのは、AQインタラクティブ(AQI)の飯塚直也さん、ONE-UPの人見楽さん、竹内正彦さんです。(聞き手:小野憲史、2011年8月9日収録)

■モバイル・ソーシャルゲームには珍しく、盛りだくさんな内容

−−今日はよろしくお願いします。はじめに、皆さんの自己紹介をお願いします。

飯塚 AQIのプランナーで、飯塚直也です。「ブラウザ三国志モバイル」ではプロデュースを担当しています。

人見 ONE-UPの人見楽です。本作では竹内と二人で、ディレクターをしています。全体的な仕様の策定や、ユーザーインターフェース(UI)などを担当しました。

竹内 同じくONE-UPの竹内正彦です。共同ディレクターという形で、僕の方では武将のパラメータを作成したり、ゲーム内のデータ管理などを担当しました。

−−ええっと、なぜ会社が2つに分かれているか、わからない人も多いと思うんですが、AQIがパブリッシャー(販売会社)で、ONE-UPがディベロッパー(開発会社)ですよね。出版業界でいうなら、出版社と編集プロダクションという感じでしょうか。

飯塚 そうですね。出版と違うのは、完成して、売って終わりではなくて、継続的にサービスを運用していくところです。本作でもONE-UPさんに協力いただいて、弊社でサービスを運用しています。書籍ではなくて、連載漫画に近いかもしれません。

−−その上で、本作はPC向けに2009年にスタートした「ブラウザ三国志」のフィーチャーフォン向け移植ゲームということですよね。GREEさんでサービスインされていて、基本プレイは無料で遊べると。

飯塚 はい。GREEさんの会員同士で遊ぶ、ソーシャルゲームですね。6月にサービスを開始して以来、多くの方に遊んでいただいています。

−−いろいろ前ふりが長くてすみません。では、改めて「ブラウザ三国志モバイル」の概要について、教えてもらえますか?

飯塚 本家「ブラウザ三国志」は、三国志をテーマにした、ブラウザだけで遊べるネットゲームです。プレイヤーは三国時代の君主となって、自分の領地を開拓し、武将を集め、軍勢を育てて、天下統一をめざして戦っていきます。天下統一には、他のプレイヤーとの同盟をはじめとした情報戦が繰り広げられるため、コミュニケーションが重要な要素となっています。また武将がカードになっていて、コレクション要素もあります。

−−「ブラウザ三国志モバイル」は、その移植版という位置づけですか?

飯塚 そうですね。もっとも、フィーチャーフォンの機能やプレイヤーにあわせて、内容を変更しています。基本の遊びは「内政」「武将バトル」「同盟バトル」の三本柱です。内政で武将を集め、武将バトルで国力を増やし、同盟バトルで領地を取り合います。このうち「武将バトル」が「ブラウザ三国志モバイル」で加わった要素です。

−−ええっ? 普通モバイルに移植する際には、仕様を削りますよね。

飯塚 そうなんですが、増えちゃいましたね。その事情はおいおいと説明します。

−−「内政」は領地拡大、「同盟バトル」は同盟を組んでの多人数対戦ですね。「武将バトル」は何ですか?

人見 プレイヤーが1対1で戦う個人バトルです。勝つと相手のアイテムを奪うことができます。これに対して「同盟バトル」は最大20人同士で、リアルタイムに対戦する団体戦で、勝つと領地を1つ奪うことができます。規定数の領地を奪うと、その州を制覇したことになり、次のステージに進むことができます。このように自分の所属する同盟単位でステージを進めていって、最後まで到達すれば天下統一です。

−−「ブラウザ三国志」は戦略シミュレーションのように天下を統一するイメージでしたが、「ブラウザ三国志モバイル」は双六に近いんですね。

飯塚 そうなんですよ。実際「ブラウザ三国志」では天下統一ができるのは、一つの同盟だけでした。そのかわり4ヶ月ごとにゲーム進行がリセットされて、最初からやり直しとなります。一方で「ブラウザ三国志モバイル」では、複数の同盟で天下統一ができますし、自分たちの好きなペースで遊んでもらえます。

人見 もっとも、まだ序盤の6ステージしか開放していないんですが。大陸全土を外周からぐるぐる回りつつ、次第に中央に攻め上っていく、というイメージです。全部で15ステージ以上に分かれていて、徐々に開放されていく予定です。

竹内 一方、三国志の有名武将がカードになっていて、コレクションする要素は健在です。ゲーム内で条件を満たすと、「ブショーダス」というバーチャルなガチャが回せます。優秀な武将ほど、いろいろなシーンで活躍できるので、人気があります。

人見 要するに、モバイル・ソーシャルゲームでは珍しいくらい、いろんな要素を盛り込んだゲームなんです。

■PCとモバイル、プラットフォームの壁をどう乗り越えるか?

−−それにしても、これだけの内容をフィーチャーフォンで実現するのは、大変だったでしょう。

飯塚 最初は「ブラウザ三国志」をそのままモバイル向けに移植しようとしたんです。そこで、あまりに内容が複雑になってしまって、これはまずいぞと。

人見 モバイルゲームは小さい画面と、テンキーで遊ばせなければいけません。そのため「ブラウザ三国志」みたいに複雑なゲームは、そもそも向いてないんですよ。

飯塚 ですので、モバイル専用に一から作りなおしました。

人見 当初から要求されていたレベルは高かったですよね。

竹内 モバイル・ソーシャルゲームには、人気ゲームによく似た、クローンゲームが非常に多いですよね。でも、AQIさんから新しいチャレンジも必要だと言われまして。

飯塚 弊社としても、コンシューマゲームを中心にリリースしてきたこともあって、そこはこだわった点でした。せっかく「ブラウザ三国志」のモバイル版を出すのに、既存のゲームをそのままコピーして、絵柄を載せ替えただけのようなゲームではダメだと。

人見 そのため、ヒットしているモバイル・ソーシャルゲームをいろいろと研究して、面白い要素を組み合わせる方針で臨みました。そんな風に、様々なゲームの楽しい要素を組み合わせて新しい楽しさを生み出すのが、うちの社風なんです。本家「ブラウザ三国志」の開発スタッフにも協力を得て、仕様を固めていきました。

−−開発で一番大変だったところはなんですか?

竹内 それぞれありますよね。僕の場合はパラメータのつなぎこみでした。 

人見 自分のパートではUIの設計でしょうか。

−−まずUI設計の話から伺いましょう。先ほどもありましたが、フィーチャーフォンの小さい画面と、テンキーで遊ばせるのは、大変ですよね。

人見 内政だけのゲーム、クエストだけのゲーム、バトルだけのゲーム。どれか一つの要素だけのゲームなら、たくさんあります。それぞれ、かなり参考にさせていただきました。でも、これらを全部まとめたゲームは、これまでなかったんです。そのため竹内と、ああでもない、こうでもないと、喧嘩しながら作っていました。

−−なるほど。

人見 特にケータイのトップ画面に何を表示するかが、一番重要なんです。そのため一般的にモバイル・ソーシャルゲームでは、ページの上から順番に、重要なボタンやリンクを並べていきます。でも本作では、まずトップ画面の一番上に自分の領地を見せたかったんですよ。そのため、トップ画面に配置できるボタンの数が少なくなったんです。

竹内 そこで、いろんなデザインを試しました。領地の表示範囲を狭めたり、ボタンを細くしたり。でもボタンを細くしすぎると、今度は文字がつぶれてしまったり。何度修正したか分からないですね。

人見 トップページをシンプルにしたければ、メニューの階層を増やせばいいんですが、モバイル・ソーシャルゲームではホームページのアクセスのように、画面の切り替え時にサーバとのアクセスが発生します。そのためサーバが重くなると、てきめんに遊びにくくなってしまうんです。最初の一ヶ月くらいは、ホワイトボードで画面遷移のフローチャートばかり作っていました。そのうち、みんなフローチャートを書くのは、ものすごく手練れになりましたね。

飯塚 サービスインしてからも、ボタンの配置を細かく修正しています。プレイヤーが何をしたいのか。いかに目的の画面まで、シンプルにたどり着かせるか。内政だったり、バトルだったり、状況ごとに細かく詰めていっています。

人見 一方でボタンの優先度だったり、見やすいUIのデザインというのが、我々が提示したいものと、プレイヤーが遊びたいものと、プラットフォームホルダーのGREEさんからの提案とで、また違ったりするんです。そこが難しいところです。

飯塚 イベントやキャンペーンをゲーム内で行う場合は、目立たせたいので、画面中央にバナーなどを配置したりもします。最近ではブショーダスで武将カードを引いて、特定のカードを指定枚数集めると、よりレアなカードができるコンプリートブショーダス、という定期的なイベントを開催しています。これはブショーダスで武将カードを引いて、特定のカードを3枚集めると、諸葛亮孔明のレアカードがゲットできる、というイベントです。こんなふうに、常に細部が変わっていくんです。
(小野憲史)

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