海水浴シーズン真っ盛りの神戸市・須磨海水浴場で“入れ墨論争”が起こっている。発端は、今年の春に同市が採択した改正「須磨海岸を守り育てる条例」だ。

 同条例は、昨年8月に須磨海岸で大学生らが麻薬所持で逮捕されたことを受けて制定されたもので、規制の大幅な強化が特徴。中でも注目されるのが、全国初になる「入れ墨の露出禁止」である。
 「海水浴客減少の原因を治安の悪化と見る市が“入れ墨は他の利用者に不安を覚えさせる”として、条例に盛り込んだのです。そのため須磨海岸では、入れ墨はシャツやタオルで隠さねばならず、罰則はないものの、注意に従わない場合は退去命令が出される。しかし、普通の入れ墨に加え、若者の間に流行するワンポイントのファッション・タトゥーや、シールタイプのフェイク・タトゥーまでもが規制されたことから、利用者から“やりすぎでは”と反発の声が上がり出したのです」(地元紙記者)

 実情を確かめるべく須磨海岸へ行くと、ビーチ入口には確かに「入れ墨露出禁止」の看板が。そのせいかこの日は、入れ墨を露出させている海水浴客は皆無だった。しかし、ある海の家には、腕に小さな唐草模様のタトゥーを入れている従業員がいた。
 「パトロールが来たらシャツで隠すように注意されています。面倒くさいですね。タトゥーはファッション感覚で入れたもので、その筋の人たちとはいっさい関係ありません。市の人は、昨年の大麻事件のことを持ち出していますが、一緒にせんといて、と言いたいです」(従業員)

 このような状況を受け、須磨海岸の海の家が作る須磨海浜公園売店協同組合は「規制は利用者の選別で、人権侵害にあたる」として、神戸市に対し条例の一部停止を求める提訴の検討に入った。この動きに対し、神戸市の関係者は「規制はあくまで露出行為。タトゥーそのものを規制しているのではありません」と、理解を求めている。

 法廷闘争にまで発展しそうな入れ墨問題。今後の成り行きが注目されるが、
 「入れ墨は、堅気の前ではよほどのことが無い限り露出させないもの。それが常識や」
 とは、ある暴力団関係者。少々大事に発展し過ぎな感もあるが…。