資生堂中国事業部の事業管理部次長の太田正人さんに、中国の化粧品市場について教えていただいています。今回は、中国という国の大きさにびっくりです。(写真は、インタビュアーの麻友美さん)

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 資生堂 <4911> 中国事業部の事業管理部次長の太田正人さんに、中国の化粧品市場について教えていただいています。前回は、SMAPの香取慎吾さんが、中国で資生堂の化粧品のCMに出演されているという話を聞いてびっくりしました。今回は、中国という国の大きさにびっくりです。

――30年前から進出して誰もが知っているブランドに育てていったということですが、中国で資生堂の化粧品が受け入れられたのは、どんなきっかけからですか?

 資生堂は今でこそ、都市部で90%くらいの方々に認知していただいていて、「オプレ」というブランドも同じくらいの認知度になっています。現在では、デパート専用の「オプレ」、化粧品専門店で扱う「URARA(ウララ)」、そして、薬局で取り扱うブランドとして2010年3月に投入した「DQ(ディーキュー)」など6つの中国専用ブランドを展開しています。

 1981年には「SHISEIDO」という世界共通のグローバルブランドで中国に進出しました。その当時から、日本の製品に対する信頼性、安心感などは強くあって、日本で有名な化粧品ブランドがやってきたと注目していただいていたのですが、カウンセリングを中心にお客さまにぴったり合った化粧品を提供するという「おもてなし」の販売を地道にやり続けたことが、現在のように中国におけるプレステージブランドとして認知される結果を生みました。

――この「オプレ」のパッケージには、「SHISEIDO」と書いていませんが、中国の方は、「オプレ」の化粧品は資生堂が作っているとわかっているのですか?

 オプレは1994年にローンチし、2008年にはブランドのリニューアルをしました。リニューアル前までは、「AUPRES」というロゴの下に「SHISEIDO」と入っていたのです。つまり、「オプレ=資生堂」だったのです。「オプレ」というブランドが認知され、独立したプロダクトブランドとして十分に育ってきたので、「SHISEIDO」を表記することをやめました。中国で生産している中国の国民ブランドとして「オプレ」というブランドをさらに大きくしていこうという考えです。

 資生堂には世界共通で販売している「SHISEIDO」というグローバルブランドがります。「オプレ」も「SHISEIDO」に負けないブランドに育てていきたいという思いがあります。中国には香港も入れると33の行政区があります。これは、33カ国が集まっているくらいの規模感があるのです。それゆえ、中国専用ブランド投入するポテンシャルがあるといえます。国別の専用ブランドがあるのは、海外では中国だけです。

 ただ、ブランドという点では、中国では漢字文化の国ですので「資生堂」を中国読みで「ツーシェンタン」と読まれています。中国では「シセイドウ」と読んでくれないのです。漢字文化なので「ツーシェンタン」という発音を変えるのは時間がかかると思うのですが、ここは時間をかけてでも「シセイドウ」と読んでいただけるようにしたいと思っています。

――中国1カ国で、33カ国に相当するというのは、すごいですね。

 「オプレ」や「ウララ」を買っていただける女性は、中間所得者層以上の方々なのですが、2010年にその対象者のうち化粧人口がおよそ1億人になりました。13億人の人口のうち女性が約6億人、そのうち1億人くらいが購買層すなわち化粧人口ということです。それが2020年には3億4000万人くらいになるだろうといわれています。

 日本は人口が1億2000万人で、化粧品を使う女性は5000万人くらい。それを考えると、3億4000万人という市場は物凄いポテンシャルがあるといえます。それだけに、グローバル統一のマーケティングとは違うやり方が必要なのです。

――資生堂の化粧品の評判は、日本と中国では違いがありますか?

 中国事業部に所属しているという贔屓目があるかもしれませんが、「評判」ということであれば、中国の方が日本よりもやや高いかもしれません。

 たとえば、中国の方は、日本に観光に見えたときに買い物をされますが、資生堂の化粧品が非常に人気なのです。日本に来て銀座のデパートで資生堂の化粧品を買って帰ることがひとつのステータスになっているようです。

 銀座のデパートで、中国の国慶節(10月の大型連休)と春節(旧正月)の時期に、中国にいるビューティーコンサルタントを日本に派遣して、銀座のデパートに中国語のコーナーを作ったことがありました。中国のお客さまが日本で買い物をするときに言語がネックになります。中国語が話せるビューティーコンサルタントがいることにより、コミュニケーションが円滑にできて良かったと大変好評でした。

――日本では「美白」「UVケア」など、機能が付いた化粧品が広く使われていますが、中国ではどうですか?

 日本のスキンケアは中国でも受け入れやすいと思っています。中国でも「美白」「アンチエイジング」などが広まっています。特に、中国では「美白」についての意識が高いようです。これまでは、乾燥、紫外線などについてのケア意識が不十分だったので、これを改善したいという意識が強く働くようです。  中国の方々も日本人も同じアジア人なので、日本人の肌ケアのアイデアが通用するところがあります。中国国内で調査・研究を続けながら、中国の方々に合った「美白」や「アンチエイジング」などを提案していきたいと考えています。

――日本ではシャンプーの「TSUBAKI」も有名ですが、中国でも売っていますか?

 日本から商品を輸出して売っています。一般のシャンプーが10元−20元のところ、1本95元(1200円くらい)で販売しているので、高級なシャンプーと言えますが、その機能・品質の良さから、大変好評です。(つづく)(編集担当:徳永浩)