40〜50代がガンダム世代。30代はドラゴンボール世代で、20代がワンピース世代だと語る鈴木氏

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■経営コンサルタント・鈴木貴博が、各世代を人気漫画に例えて分類化する

 幼い頃からの不況、1995年の震災、銀行の破綻、携帯は中高生で持ち、9・11テロを目撃。このような“今の20代に影響を及ぼした出来事リスト”の中に、97年の『ONE PIECE』連載開始も入れるべきだと主張するのが『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』の著者・鈴木貴博氏だ。

――では、「ワンピース世代」の20代と、それより上の世代の特徴、そして今後起こりうるワンピース世代の反乱とは?

 人の行動規範の原型ができるのが13〜19歳頃だと思いますが、漫画やアニメはそんな10代の若者にとても浸透しているメディア。ですから、『鉄腕アトム』の未来像に憧れた団塊の世代が多数の優秀なエンジニアを輩出したように、今の40〜50代は『ガンダム』、20代は『ONE PIECE』の強い影響を受けていると考えられます。

――「ワンピース世代」の特徴とは?

 キーワードは「自由と仲間」。主人公のルフィは組織の論理を振りかざすことなく、いつも仲間のために行動します。海賊団の仲間たちは、みな自分の専門分野ではルフィより優れた技術を持ち、“各々に役割のある個性”の集まりを形成しています。

 同じように、ワンピース世代は“個性的な自分”を意識しながら、“個性的な少数の仲間”のいる「ヨコ社会」に属すことを望みます。一方、会社などのタテ社会への忠誠度は低く、どこかよそごとです。

――「ガンダム世代」の場合は?

 こちらは、「組織への従属」と「ニュータイプへの憧れ」がキーワードになります。ガンダムでは「ニュータイプ」と呼ばれる進化した個人が登場しますが、彼らは結局、優れた武器の使い手として消耗される。新しい可能性は、結局、社会の中で貶められていくのです。冷戦下の世界とも符合する、このような物語構造を見て育ったガンダム世代は、組織や社会に疑問を持っても、苦悩を抱えたままその中に留まる傾向があります。

――『ドラゴンボール』は分析の対象にならないのですか?

『ドラゴンボール』に影響を受けたのは30代が中心ですね。彼らは修行すれば強くなれると思っている。だから、進化に憧れるガンダム世代にも理解可能です。でも、『ONE PIECE』に修行シーンはないでしょう。世代間の軋轢が主題だったので、『ドラゴンボール』は割愛しました。

――その軋轢は、今後10年以内に劇的に拡大すると主張されていますね。

 日本の財政は近いうちに破綻するでしょう。そうなると、高齢化している日本は苛烈に若者を搾取する可能性が高い。仲間を傷つけられたワンピース世代は、そのとき、どんな行動に出るでしょうか。彼らは、何が正しいかは自分で判断して行動します。そして、会社に対してと同様に、社会にも忠誠心は持っていない。

 だから、ルフィが41巻で「あの旗、撃ち抜け」と世界政府に宣戦布告したように、仲間を守るため社会へ反乱を起こすのではないか。そのとき彼らは、暴動のような、わかりやすい行動はとらないと思います。

――本の後半で言及される、二重政府などのシナリオですね。

 私の予言は外れたほうがいいと思いますが、そのためには若者世代のことを上の世代が知らなくてはなりません。ワンピース世代を傷つけずに国難を乗り切る方法をガンダム世代が見つけないと、日本の将来はかなり暗いものになると思います

●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
1962年生まれのガンダム世代。イノベーション専門の経営戦略コンサルタント