さて、前回の続き。初心者にとって最もわかりやすい野球観戦の魅力と言えば、やはり何と言ってもホームラン。そのホームランが、統一球の導入によって著しく減少してしまった。これは、早急にホームランに代わる見所を提案しなければ!……と思っていたところに、一通のメールが届いた。

「今日、後楽園ホールで新日本プロレスの大会があるんですけど、一緒に行きませんか?」

 メールをくれたのは、以前から親交深いバンド「FUNKIST(ファンキスト)」のベース・JOTARO君。彼は大のプロレス好きで、その縁から、8月に行われるプロレス3団体による東日本大震災復興支援チャリティープロレス「ALL TOGETHER」のテーマソングをFUNKISTが担当することになったほどだ。

 じつは、僕にとってプロレス観戦は初めてのこと。鍛え抜かれた肉体がぶつかり合う興奮。観客を意識したパフォーマンス。リングの内外で繰り広げられる光景を目にしているだけでも、それは十分に刺激的で楽しい時間だったが、僕はJOTARO君のおかげで、よりプロレスの魅力を堪能することができた。

「いまから対戦するふたりは、普段タッグを組んで戦っているので、特別な思いがあると思うんですよ」
「この選手はいまひとつ伸び悩んでいたんですが、最近になって悪役(ヒール)に徹するようになり、何かいい味出すようになってきたんですよねえ」
「このふたりは以前タッグを組んでいたのに、片方が裏切ったんです。つまり、因縁対決なんですよ」

 JOTARO君の解説のおかげで、プロレス初観戦の僕でも、選手の歴史や関係性がわかり、感情移入して楽しむことができた。ん、感情移入……これだ!

 あまり野球に詳しくない人に観戦を楽しんでもらう。そのために、僕がプロレス観戦を楽しんだのと同様に、選手の背景を知ってもらい、“にわか感情移入”してもらうという手もアリなんじゃないだろうか。

「今日の両チームの先発は、高校生のとき甲子園でも投げ合っているんだよ」
「この選手は、プロに入団してきたときはピッチャーだったんだ」
「いま代打で出てきた選手は、去年まで相手チームにいたんだよ」

 あまり押しつけがましいのもよくないけれど、さらりとそんな背景を伝えるだけでも、投げて、打ってというスポーツに深みを持たせることができるのではないだろうか。たとえホームランが見られなくたって、野球の楽しさは存分に味わえるはず。伝えられるはず。

 ああ、こんな原稿を書いていたら、またスタジアムに行きたくなってきた。やっぱり、僕は野球が好き。みなさん、いつか、どこかのスタジアムでお会いしましょう!・乙武洋匡オフィシャルサイト
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