原発事故の低濃度汚染水約1万トンを海に放出したのは、アメリカ政府からの強い要請のためだった――。劇作家の平田オリザさん(48)が、菅直人政権の内閣官房参与という立場でこう発言して物議を醸している。

   平田オリザさんは、岸田國士戯曲賞を受賞するなど演劇界で活躍する一方、鳩山由紀夫前首相のスピーチライターをしたことでも知られる。

「ゲッ、菅直人政権(民主党)は主権国家を放棄!」

   今回の発言は、内閣官房参与として、韓国・ソウルで2011年5月17日夜に講演したときに飛び出した。

   報道によると、平田さんは、在韓国日本大使館主催の講演で「震災と日本再生」をテーマに話し、原発事故による風評被害の防止や日本への観光を呼びかけた。公演後の質問に答える形で発言があり、「流された水は非常に低濃度で、量も少なくて、あれはアメリカ政府からの強い要請で流れたんです」と明かした。

   さらに、汚染水放出を事前に韓国に知らせなかったことについて、「韓国の方々にも大変なご迷惑をおかけして、通告が遅かった」と謝罪したのだ。

   こうした発言が報じられると、ネット上では、驚きの声が広がった。これまで、政府が東京電力の打診に許可を与えたとだけ説明されてきたが、それがウソだったことになるからだ。さらに、韓国への通告遅れについても、枝野幸男官房長官が当初の会見で「国際法上、直ちに問題が生じるとは考えていない」と正当性を強調していたことともニュアンスが違っている。

   各党からも疑問の声が上がっており、新党日本の田中康夫代表はツイッターで、「ゲッ、菅直人政権(民主党)は主権国家を放棄!」とつぶやいた。また、自民党の佐藤正久参院議員もツイッターで、「主体的な判断をしていなかったともとられかねない」と指摘している。

平田オリザ「ほかのことと混同して、勘違い」

   平田オリザさんの発言については、枝野幸男官房長官が2011年5月18日の会見で、アメリカから要請があったことを否定した。「少なくとも私は承知していない」というのだ。

   さらに、細野豪志首相補佐官も、18日の政府・東電合同会見で、「日本の判断で、米国からの要請は一切なかった」と述べた。汚染水の放出当時に、細野補佐官はアメリカ政府との窓口を務めていたことから分かるという。

   細野補佐官が、発言について平田さんに直接確認したところ、「勘違いだった」と訂正したとしている。

   平田さん事務所のアゴラ企画では、取材に対し、「平田はほかのことと混同して、勘違いしてしまいました」と認めた。何と混同したかは、本人からまだ確かめていないという。そのうえで、「事実ではありませんので、発言を撤回して謝罪したい」と話している。

   一部報道では、日本政府は汚染水放出の3日前に米国政府に打診して内諾を得ていたとされており、平田さんは、この報道を勘違いしたのだろうか。

   ただ、東京電力の広報部では、汚染水を放出した4月4日のうちに打診・許可が行われたとしている。また、枝野官房長官も会見で「米国に事前に通告したとも聞いていない」と述べており、米国政府の内諾があったのかはよく分からないままだ。

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