身長200cmケーシー・パターソン(右)と身長199cm朝日健太郎(左)のネット際の対決。最高到達点は332cm(ケーシー)と330cm(朝日)だ (撮影:小崎仁久)

 「言い訳になるのですが…。これだけ砂が深いと私たちの機動力が生かせない。砂にやられてしまった。本当はどんな砂でも対応しなくてはいけないのですけど…」お台場海浜公園にて行われた東京オープンでは、小さな体で機動力を発揮。拾い続けるバレーで優勝した金田洋世・村上めぐみだったが、ここ、名古屋ではまったく生彩を欠き2試合2敗。早々に姿を消した。

 同様に男子、東京優勝の井上真弥・長谷川徳海も、名古屋では準決勝敗退。ほとんど何もできず、第1セットにいたっては挙げた得点は5点のみ。長谷川は「砂は関係なかった」と話すが、明らかに動きが悪かった。

 毎年開かれるJBVツアー大日本印章オープンは、昨年まで名古屋から南へ30km、伊勢湾に面するビーチで行われてきたが、今年は会場を名古屋の中心部に変更。百貨店が建ち並ぶ繁華街の中にスタジアムを設けた。街の中に映える美しい色、周辺へ配慮し、砂埃が立ち難いなどを理由にオーストラリアから砂を輸入、特設コートに敷き詰めた。

 サラサラの白い砂は「珪砂」と呼ばれガラスの原料にもなる。特にオーストラリア産は高純度で、粒子も細かく均一なため、そのまま原料として使用できるほどである。関係者の一人は「国内では最も深いのではないか。同様に粒子の細かいコートはあるが、それ以上だと思う」と話した。

 「砂が深い」と皆が一様に表現するコートを、ある選手は「横に動くより、ジャンプに影響が大きい。跳ぼうとして踏み込むと、足の裏から砂が逃げていき、地面に力が伝わらない感じ。絶対的な筋力量が少ない小柄な選手がキツいと思う」と話す。試合後の会見でも「相手は足が動いていなかった」「サーブで前後左右に揺さぶると崩れた」「ショット(コントロールしたスパイク)しか打ってこなかった」などパフォーマンスが下がったチームが負けている様子がよく聞かれた。 

 現に、選手らは全体的に動きが悪く、長いラリーが続くと、ボールが落ちた途端コート上の4人全員がばったりと倒れる場面も幾度となく見られた。高く跳べないためか、突き刺さるような強打も少なく、スパイクをふかしバックアウトになる割合も多かった。

 しかし、準決勝で井上・長谷川を下し、決勝も難なく勝った西村晃一は、こう言い切った。「これが世界基準の砂。ビーチバレーの砂。アメリカで練習してきた我々にはやり易かった」。

 地域、天然砂、人工砂など様々だが国内のコートは概して粒子が大きく砂が硬い。対して、欧米では砂が深いのは当たり前だという。今季から参戦しているカリフォルニア出身、ケーシー・パターソンも東京オープンでは、日本の砂の硬さに戸惑っていた。

 また、長くワールドツアーに参戦している朝日健太郎も言う。「確かに、プレイの迫力には欠けるかも知れない。だが、これがある意味、ビーチバレー」同様に世界で経験を重ねてきた一人、女子優勝の田中姿子も「これは当たり前。この砂の上でボールを拾い、強打を打ってくる。それを落としているようでは世界では勝てない」と言う。

 いつもは選手たちに踏みつけられているだけの「脇役」にスポットライトが当たった。決勝に上がってきたチームは男女いずれも世界を知っている。「砂の深さ」が選手の筋力、チームの実力を露呈させ、選択した結果なのかも知れない。

 西村が最後に言った。「ここで打てるのが『本物』とは言わない。が、世界はこの砂の上で戦っている」。(取材・文=小崎仁久)