また、昨季終盤、岸野サッカーの屋台骨としてチームを支えた八角や武岡優斗、渡邉将基の復帰が予想よりも大幅に遅れており、骨格がないままチーム作りを進めざるを得ない状況が計算を狂わせている。ベースがない上に上積みをしたことでチーム全体のバランスが崩れることとなってしまった。

「今までの岸野サッカー」と「今年の岸野サッカー」という2つの絵が融合するどころか、空中分解をしている。飯尾が叫んでも、柳沢将之が叫んでも響かない。それが横浜FCの現状なのである。まずは岸野監督が今チームが目指すべき1枚の絵を示さなければならない。それが低迷から脱する唯一の策と言えるだろう。

■岸野監督の燃えたぎる情熱がチームを浮上させるか

だが、岸野監督も分かっているようだ。リーグ再開となった第8節鳥栖戦後、練習場であるサポーターから浴びせられた「チームに覇気がない」という言葉に、思うところがあったという。「そこは僕が一番得意としているところ。そういうところを鍛えるために僕は横浜FCに来た。『覇気がない』とか『粘りがない』とか、僕の中にはない言葉。やっぱりこんなんじゃアカンと思いましたね」。その時、岸野監督の目には1枚の絵が焼き付けられていた。

それ以降、徐々にチームは変わりつつある。それが表現されたのが、第11節栃木戦の後半であった。つなぐだけではなく、シンプルにボールを裏のスペースに入れ、相手のボールになれば、猛然とプレスをかける。きれいなサッカーではなく、相手を威圧するサッカーで栃木を圧倒したのであった。「本当にあと一歩。以前の負けとは違う。変わってきている」と飯尾は手ごたえを口にした。光が見えてきているのは間違いない。ただ、大幅に出遅れているのも事実。この差を取り戻すためには岸野監督自身がもっともっと“熱く”ならなければならない。岸野監督の燃えたぎる情熱なくして、横浜FCの浮上はない。

■著者プロフィール
【佐藤拓也】
1977年生まれ。北海道生まれ、横浜育ち。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、フリーランスのライターとして活動を開始。その後、「EL GOLAZO」や「J’sGOAL」、「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「スポーツナビ」などサッカー専門媒体に執筆。現在はJ2を中心に様々なカテゴリーを取材して回っている。

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