■ 深センに加入

ドイツW杯の日本代表でジェフ千葉やロシアリーグのアムカルでプレーしたFW巻誠一郎選手が中国スーパーリーグの深センに加入することが明らかになった。4月からの1年契約ということである。FW巻は2003年にジェフ市原に加入し、2010年夏にロシアリーグのアムカルに移籍。しかし、思うような活躍はできずに移籍先を探していた。

深センというと、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏が監督に就任したばかりで「日本人を獲得したい。」と発言していたが、結局、FW巻という選択になった。FW巻の移籍先としては、地元のロアッソ熊本という選択肢もあったと思うが、予想外のCリーグ移籍となった。

■ ロシアでは不発

FW巻は2006年のドイツW杯のブラジル戦でスタメン出場。さらにオシムジャパンになってからは代表の中心的な存在となった。2007年のオフにMF佐藤勇、MF水野、MF山岸、MF羽生、DF水本ら日本代表クラスの選手が続々とチームを去った中で、ただ一人、代表クラスの中ではチームに残留すると、大幅に戦力がダウンした中、チームの大黒柱として獅子奮迅の働きを見せて、見事にJ1残留に導いた。

しかしながら、翌2009年は怪我の影響もあって思うようなプレーは出来ずに、チームも最下位でJ2に降格。2009年途中からチームを指揮した江尻監督のサッカーとの相性も悪く、2010年夏に戦力外に近い状況でロシアに移籍したが、ここでも思うような結果は残せなかった。

■ JリーグとCリーグ

今回、FW巻が加入することになる中国のCリーグであるが、1部は16チームで、ACLで日本のチームとも対戦しているので、大連実徳、上海申花、山東魯能、北京国安といったクラブはお馴染みである。しかし、日本人と中国人の人材交流は驚くほどなかった。

日本人でCリーグに在籍した経験のある選手というと、名前が知れている選手では、元ヴェルディ川崎のフォワードで、明るい性格で人気者となったFW藤吉信次くらい。逆も、1993年にガンバ大阪でプレーしたDF賈秀全(カ・シュウゼン)とコンサドーレ札幌でプレーしたFW徐暁飛くらいである。

Cリーグのレベルは決して低くはない。今年のACLでは、日本勢との対戦成績は3勝1分け。地震の影響で4試合全てが中国のホームゲームだったこともあるが、上位クラブだけで見ると、Jリーグのクラブと大きな差はなく、お客さんが入らないといわれるKリーグとは違って、スタジアムも熱狂的である。

両国は経済面では非常に密な関係になっているのに、驚くほどサッカーで人材交流がないのが現状である。これだけ近い国で、これだけ交流はないというのは、世界的にも珍しいことだろう。

■ 交流がない理由

日本のクラブにとっては、

 ・中国人プレーヤーは年俸が高すぎる。
 ・中国人でJリーグで成功した選手がいない。
 
という2点が中国人の獲得に向わない大きな理由であるといえる。もちろん、即戦力となれるような中国人選手自体が少ないことも影響しているだろうし、1980年代の中国を代表するディフェンダーだったDF賈秀全が大外れだったことも、道を閉ざしてしまったと思われる。

一方、日本人がCリーグに挑戦しない理由としては、

 ・反日感情が強い国であること。
 ・日本には、J1、J2と38のクラブがあって、その下にJFLもあって受け皿はある。

という点が挙げられる。両国ともに共通するのは、トップレベルの選手は欧州リーグに移籍することを望んでいるという点であり、JリーグあるいはCリーグという選択肢は、今の選手にはほとんどないというのが現状である。

■ 巻は新しい道を作れるのか?
 
とにかく、今回、FW巻がCリーグに挑戦することになった。元日本代表ということで中国でも注目されるはずであり、どのくらいできるのかというのは、日本でも興味を持って報道されるはずである。

正直に言うと、FW巻のような大柄なセンターフォワードタイプの選手は、中国にはたくさんいると思われるので、「大きな」がストロングポイントになりにくい環境だと思うが、運動量であったり、献身性といった別の部分で評価されると可能性は広がっていく。

韓国の場合、同じように日本人でKリーグに挑戦する選手は非常に少ないが、韓国からJリーグに挑戦する選手は、数えきれないほど多くて、ほとんどのチームに韓国人選手が在籍しており、Jリーグでは欠かせない勢力になっている。トルシエ監督やFW巻によって、ほとんど鎖国状態のJリーグとCリーグの関係が変わっていくのかどうなのか。興味深く見守っていきたいところである。

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