by Carl Montgomery

アフガニスタン中央部に位置する世界遺産「バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群」の2体の大仏が2001年にタリバンにより破壊されて10年がたとうとしていますが、ニュースで爆破の様子を映像で見てショックを受けたのはまだ記憶に新しいという人も多いのではないでしょうか?

爆破された大仏の破片はヨーロッパや日本の専門家たちの手により保存され、残念ながらまだ現実的な修復の見通しは立っていないのですが、破壊前には特定されていなかった正確な建造年代や、かつては赤や青など鮮やかな色が着けられていたこと、少なくとも小さい方の大仏に関しては修復は可能であることなどが、調査により明らかになっています。

詳細は以下から。TUM - Bamiyan Buddhas once glowed in red, white and blue

シルクロードに位置するバーミヤン渓谷を6世紀から見守り続けてきた仏像群。なかでも最も巨大な高さ約55mの大仏は大日如来だと言われています。写真は1974年に撮影されたもので、木製の面が付けられていたと言われる顔の上半分は、ムスリム勢力の侵入により千年前には失われていたと考えられています。

by thalpan

大仏群のなかでも中心的だった55mの大日如来像と38mの釈迦像は、2001年に「反イスラム的な偶像である」としてタリバンにより破壊され、3月12日の爆破の様子を撮影した映像は世界に配信されました。


ミュンヘン工科大学の科学者たちは数百個の破片をバーミヤンから持ち帰り、1年半にわたる調査により、破壊前には知られていなかったさまざまな事実が明らかになっています。


大仏の色

大仏はもともと鮮やかに着色されていて、イスラム化の前に何度か塗り直されていたことが明らかになっています。当初は袈裟(けさ)の内側は濃い青、外側はピンクで、その後外側がオレンジに塗り替えられ、さらに内側が水色、外側が赤(大日如来)と白(釈迦)に塗られたことがわかっています。これは、「赤い仏像」と「月のように白い仏像」について記した11世紀の文献の内容にも一致するそうです。袈裟以外の肌などの部分は白い下塗りが施されていた可能性がありますが、確証は得られないとのこと。


工法

大仏本体はがけから彫り出されたものですが、身にまとった袈裟の部分は2〜3層の粘土で成形されていました。表面は焼いた陶器のように滑らかに整えられ、驚くべき職人技を示しています。粘土には吸湿のためのワラやもみ殻、ガラス繊維のようにしっくいを安定させる動物の毛、縮小を防ぐ石英などの添加剤が混ぜ込まれていて、1番下の層は木の杭で固定された縄を芯材として最大8cmほどの分厚い層を仏像にかぶせていたそうです。これにより1500年間もはがれ落ちることなく仏像を包み、爆破に耐えた部分もあるほどしっかりと固定されていたのです。


年代

破壊以前は、大仏の年代は文献や袈裟のスタイルなど文化的な手がかりのみで推定されていたのですが、チューリッヒ工科大学とキール大学で行われた質量分析により、袈裟の粘土に混ぜ込まれた有機物(動物の毛など)の放射性炭素から、大きい方の大仏の建造年代は591年〜644年、小さい方の大仏は544年〜595年と特定されています。


保存と修復への道

国際記念物遺跡会議(ICOMOS)では爆破された大仏の破片をバーミヤン渓谷の仮設倉庫に一時的に保管しているのですが、大きな破片は現地で覆いをかけただけの状態で、多孔質な砂岩は数年で崩れてしまうと懸念されています。また、こういった場合に遺跡の補強・保存のため岩に注入されるような合成樹脂は、大仏の大きさと気候条件を考えると、岩との性質の差が大きすぎるため使用できません。そこでミュンヘン工科大学のEmmerling教授らは、卒業生の会社Consolidasと協力し、Consolidasが開発した有機シリコン化合物を岩に注入する技術を改良中とのことです。

また、ミュンヘン工科大学では現在、すべての破片の位置を示す3Dモデルを作成中とのこと。Emmerling教授は、奥行き2mほどで像というよりレリーフに近い小さい方の大仏(釈迦)に限って言えば、基本的には修復は可能だと考えているそうですが、奥行き12mの大きい方の大仏(大日如来)の修復に関しては、懐疑的なようです。しかし、現実の仏像修復には技術的な問題だけでなく、政治的な障壁も立ちふさがります。破片の保存・修復にはバーミヤン渓谷に工場を建てる必要があり、現地で工場を建て作業することが困難な場合は、重いものでは2トンにもなる破片を1400個ほど、ドイツへ運ぶ必要が出てくるのです。

3月上旬にパリで開催される会議で、大仏の今後が検討されることになっているそうです。

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