■ クウェート戦

2月9日にクウェートのフル代表と対戦したU-22日本代表は0対3で敗れて、チーム発足後、初めての黒星を喫した。前半42分にコーナーキックからカウンターを許して先制ゴールを奪われると、後半10分にもサイドを崩されて2失点目。さらに後半32分にも3点目を許し、結局、0対3で敗れた。

この試合に関しては、テレビ中継がされていないので、内容について語ることのできる人はごく少数であるが、「得点経過」と「失点シーン」の映像だけを見ても、カウンターから先制ゴールを許し、前に出たところを突かれて2点目、3点目を許すという「典型的な負けパターン」になったことは想像できる。スコアの上では完敗だったが、内容でも完敗だったのかは、よく分からないが、いい試合でなかったのは事実のようである。

スタメンは、GK守田。DF岡本、濱田、鈴木、丸橋。MF山本、山口、高橋、東。FW山崎、永井。FW山崎は登録上はフォワードになっているが、アジア大会の時と同様に、左サイドでプレーしたものと思われる。アジア大会でレギュラーだったMF水沼、MF山村、DF実藤がコンディション不良と伝えられておりスタメンから外れており、MF山口、MF東、FW山崎、FW永井はそのまま(※ DF実藤は合宿にも参加していない。)。結局、アジア大会組が5人で、それ以外が6人という構成となっている。

■ 初黒星

アジア大会では、見事に7戦全勝で金メダルを獲得したが、このときは主力のほとんどが不在で、実質、今回の合宿が「はじめて」と言っていいほどである。

それでも、このチームの主力と考えられるドルトムントのMF香川、名古屋のFW金崎、FC東京のGK権田とMF米本、鹿島のFW大迫といったメンバーが参加しておらず、これでも「ベストとは言い難いメンバー」であるが、G大阪のMF宇佐美、横浜FMのFW小野、磐田のMF山本、C大阪のDF丸橋といったレギュラー候補の選手達が合流し、アジア大会組との融合が期待された。しかし、コメント等から推測すると「まだまだ」だったようである。

■ 親善試合の意味

ということで0対3に終わったクウェート戦であるが、

  ・チームが発足して間もないこと。
  ・新メンバーが多かったこと。
  ・フル代表が相手であったこと。

を考えると、仕方のない結果である。特に、今回、新しく入ってきた選手は、MF宇佐美ら「個性の強い選手」が多く、彼らを2日・3日でチームにフィットさせることができるはずもない。よって全く慌てる必要もないのであるが、今後、代表チームに対する注目度が高まっているからこその「やりにくさ」が出てくるのでは?という懸念もある。

五輪代表に限らず、A代表にもあてはまることであるが、クウェート戦のようなゲームは、Jリーグで当てはめると、「トレーニングマッチ」や「プレシーズンマッチ」に相当するものであり、この結果を必要以上に「重要視」するサポーターはいないが、「代表関連」となると、そうならないケースも考えられる。

幸いにして、今回はアウェーゲームでテレビ中継もなかったので、多くの人の目に触れることがなかったので、ヒステリックに声を荒げる人もいないが、これがホームで「0対3」だったりすると、穏やかではなくなってくる。

本来は、ホームであろうと、アウェーであろうと、中継があろうが、中継がなかろうが、親善試合は親善試合であり、当面の目標である「アジア予選の初戦」を目指してチームを強化していけばいいのであるが、「興行」の色が強くなってきたりすると「親善試合とはそういうもの」ととらえることができない人が増えてきて、チームにマイナスをもたらすことも考えられる。「親善試合=強化試合」が余計な雑音のために、本当の意味での強化につながらないとしたら、不幸なことである。

■ 準備の遅れ

とはいっても、ちょっと準備が遅れているのは気になるところではある。北京五輪のときは、アジア予選の初戦が2月28日だったので状況は少し違うとはいえ、この段階ですでに何試合もベストに近いメンバーで親善試合を行っており、レギュラーも固まりつつあった。

しかも、1989年・1990年生まれが主体となるロンドン五輪代表チームは、U-20世界大会の出場権を逃しており、最後にベストメンバーが集結したのは、2008年のU-19アジア予選のときで、あれから2年以上が経過している。6月の予選までにまとまって合宿できるような余裕もなく、予選を戦いながら、チームを作っていかないといけない状況である。

そもそも、Jリーグのシーズン前の大事なときに、中東まで遠征するというのも、選手のことを考えると好ましいことではなくて、この間に所属クラブでポジションを失ってしまう選手がでてきてもおかしくはない。ただ、この時期に、一度、集まって合宿をしておかないと、大変なことになるという代表側の事情も理解できる。

現状、Jリーグも、代表チームも、ギリギリのスケジュールで戦っているので、双方にダメージのない「ベストな方法」は見つからないが「ベターなやり方」で強化を進めていってほしいところ。タレントが揃っているだけに、準備不足といった理由でロンドン行きを逃すようなことになるともったいない。

関連エントリー

 2010/11/08  【U-21中国×U-21日本】 関塚ジャパンが完勝スタート
 2010/11/11  【U-21日本×U-21マレーシア】 乏しい内容も2連勝で首位通過
 2010/11/16  【U-21日本×U-23インド】 輝いたボランチ山口蛍
 2010/11/19  【U-21日本×U-23タイ】 見事な関塚監督の手腕でベスト4
 2010/11/24  【U-21日本×U-23イラン】 ヤングジャパンが決勝進出!!!
 2010/11/24  【U-21日本×U-21UAE】 関塚ジャパン 見事な金メダル獲得
 2010/11/26  アジア大会のメンバーから漏れたロンドン世代の有力メンバーを考えてみた。