夫婦で作った時間を閉じ込めた丁寧で贅沢な写真は酒のつまみになる【新-写真空間】

ポルトガルと日本の繋がりは意外と歴史が深い。そんなポルトガルの風景の魅せられた一組の夫婦いる。

大門美奈・大門正明氏は、銀座リコーフォトギャラリー「RING CUBE」にて、1月19日から1月30日まで「Portugal」と題された写真展を開催する。

写真展では、ご夫婦あわせて50点の写真を通して、お二人が旅したポルトガルに生きる人たちのまなざしや街並みが映し出されている。


大門正明さんは「ポルトガルには、昔の日本を見るようなノスタルジックな印象があり、興味があった」、大門美奈さんは「何度も足を運びたくなる魅力的な国。絵になる場所も多く、人々も親切」と、ポルトガルに魅了された理由を語ってくれた。

こうした二人のポルトガルへの想いが、今回の作品展につながっているわけだが、その言葉どおり、ポルトガルで撮影された作品を眺めていると、大門夫婦の人柄までもが作品の中に表現されており、日本人のDNAに刻まれた原風景をも感じることができる。


■まるでポルトガルの街中に迷い込んだような写真展
ポルトガルでは、人々が街の風景に溶け込むように生きている。そして、日本では考えられないほど、穏やかに軽やかに暮らしているという。雑多で忙しないアジアの風景とも、華やかで賑わうヨーロッパの観光地とも異なる、その美しい街並みとそこに生きる人々を見ていると、まるで時が止まったような錯覚さえ覚えてくる。

展示されている作品は、二人で撮影されたはずなのに、おどろくほど共通した雰囲気が漂っており、会場で足を進めるにつれ、まるでその街に居るように思えてくるから不思議だ。

「40年代の東京のような、ノスタルジックな街並みです。観光客も多かったのですが、できるだけ現地の人を写しました」(正明さん)と語るように、今回の「Portugal」展には、かつての日本人の心に訴えかけるような魅力がある。

ポルトガルでは緑ワイン「ヴィニョ・ヴェルデ」を味わいながらの撮影だったそうで、お酒好きなお二人の撮影のお供はこの「ヴィニョ・ヴェルデ」だったという。


■撮影を楽しむ そして時間をかけて思いのままに
「Portugal」展の作品は、実に丁寧に時間をかけて撮られた印象が強い。作品1枚1枚に時間が上手に閉じ込められている。

お二人は、写真とどのよう向き合っているのだろうか。
写真展のために撮影しよう意気込むと、どこか張り詰めた雰囲気が写真にも現れてくるそうで、美奈さんは今回の写真について、「普段は、週末に2人で写真を撮りに行こうかと、よく銀座あたりをブラブラしていました。ポルトガルでの撮影も、その延長線上にあったと思います」という。

「ポルトガルでは、非常に気持ちよく撮れましたね」と正明さんも同じように語る。人の視点に近いところで撮り、あるときは被写体に寄って、あるときは引いて、物だったり、人だったり、街を歩きながら見渡しながら、目に入ったものを心の向くままに撮ったという。
お二人は撮影に車などを利用せず、主に徒歩で移動し、10時間以上も歩くこともあったという。ポルトガルは古い石畳が多く、宿に帰ると一気に疲れが押し寄せたが、撮影中は不思議と疲れは感じないのだそうだ。


正明さんは「最初から、こんなイメージで写真を撮ろうとイメージせずに、一期一会で目に入ってきたものを撮りました。感覚的ではありますが、丁寧に切り取ってきたかなと思います」と、今回のこだわりを教えてくれた。じっくり見て、ゆっくりシャッターを切っているという、「自分たちが撮影を楽しむことが最大の目的であって、発表を考えていなかったことがよかったのかな」とも語る。

■酒のつまみになる写真
美奈さんが、作品を意識して撮り始めたきっかけは、写真教室に通いはじめたことだという。「ただ撮るのではなく、技術面も意識し始め、もっと自分のイメージするような写真を撮りたい」と思い作品作りに踏み出した。
いい写真とは、「身構えなくてよい写真。乱暴に言えば、見逃してしまうような写真」と語る美奈さん。センセーショナルではなく、奥行きがあって、深みがあって、ごく普通に見える写真だが、最近では少なくなってきたように思う。だからこそ、「Portugal」展の作品は人をひきつけるのだろう。

もともと絵画をしていたという正明さん。絵を描く時間がなくなった今、手軽に自分を表現できるものとして写真を楽しんでいるとのこと。「撮るという行為自体が癒しになりますし、自己表現ができますから。逆にどういう作品を撮りたいというのはなく、その時々に応じて、撮りたいものを撮っているんです」と楽しそうに写真との距離を語ってくれた。

「写真と酒はセットです。写真を眺めながら、お酒を飲むとうまい。そういう写真はいいですね」と言う正明さんに、「お酒のつまみになるような写真が撮れたら嬉しいですね」と答える美奈さん。

「酒を飲むために人生はあると思っていますから。酒を美味しく飲むために写真を撮っている。人生は自己表現と酒ですから」というお二人。

息のあった夫婦だからこそ、写せる写真がそこにはあるのだろう。

大門美奈・大門正明 写真展
「Portugal」

1月19日(水)〜1月30日(日)
11:00〜20:00(火曜日休館 最終日17時終了)
入場無料

大門美奈
神奈川県出身
2008年心がうつるフィルムの写真コンテスト入選
旅先でのスナップをきっかけとして、現在は写真を見る人各自が持つ原風景のイメージを引き出せるような、ふと懐かしさを感じさせる情景を写すことを意識して撮影している。
大門正明
東京都出身
2009年ピクトリコフォトコンテストカラー自由部門佳作
約5年前デジタル一眼レフを購入。写真撮影から現像・プリントまでのワークフローに魅了され、ストリートスナップを中心に撮影している。

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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