■「いいフォワードだよ」
囲み取材も終わりNACK5を後にしようかという頃、ベガルタ仙台の手倉森浩ヘッドコーチはこう呟いた。 シンプルなひとこと。けれど、それだけに赤嶺真吾の仙台における認められようがよく伝わってくる。

8月22日J1第20節、大宮アルディージャ対ベガルタ仙台の試合前。エルゴラッソの板垣晴朗記者に赤嶺の様子を訊くと、こんな答えが返ってきた。

「入ってそれほど経っていませんが、ものすごくフィットしているんですよ。きょう辺り点を取るんじゃないですか」

そのとおり、赤嶺とその他のメンバーとの連携は驚くほどスムースだった。

1トップ気味の4-4-2は、左右のサイドハーフと2トップの一角フェルナンジーニョが流動的に動きまわる。ドイスボランチの片割れ富田晋伍が積極的に攻撃に絡み、もちろんサイドバックのオーバーラップもある。仙台の攻撃はとてもダイナミックだ。そして好調時のFC東京にちょっと似ている。この"渦"のようなサイクルのなかに赤嶺は身を委ね、時に柔らかい足下でパスを流し、動き直しで“渦”の形成に役立ち、ドリブルやシュートを試みていく。

■まるで五年もいっしょにプレーしているかのように、仙台へ溶けこんでいる赤嶺
まるで五年もいっしょにプレーしているかのように、赤嶺は仙台に溶けこみ、イレブンのひとりとなりきっていた。

そして板垣記者の“予言”のとおりになった。引き気味に位置してゲームをコントロールしていた斉藤大介が、少し遠目から打ったシュート性のボールは、ゴールの左へ逸れていこうとする。

そこへペナルティボックスの左から横切るように進入してきた赤嶺が、ワンタッチでコースを変えてゴールマウスへと流し込んだ。移籍後三試合目にして、仙台での初ゴールが決まった。

今季、東京で十二試合出場してノーゴールだった男にしては、ずいぶんと早くゴールを取れたものだ。

ディエゴ・マラドーナほどの突出した存在であれば話は別だが、いい選手であっても、チームのやり方に合わなければ能力を発揮することは難しい。

赤嶺の場合、長年いた東京よりも、入ったばかりの仙台のほうが、より自分を生かせる環境だったのだろう。

「赤嶺もここで点を取れたことで、またノってやってくれると思いますから。(フェルナンジーニョと)ふたりのコンビネーションがいま非常にいいので、それを継続させていきたいと思います」

手倉森誠監督がこう言えば、フェルナンジーニョも「赤嶺はインテリジェンスの選手だと思っている」と称え、「来たばかりでコンビネーションはなかなかすぐうまくいかないと思ったが、きょう彼が決めてくれたことは非常に嬉しく思う」と、我がことのように喜んだ。

■できたてホヤホヤ、仙台と赤嶺の関係
一見してあらゆる点がベストマッチングに見え、東京の支援者としての立場で言えばうらやましいというか悔しい思いが強いが、まだまだ仙台と赤嶺の関係ができたてホヤホヤであるのも確かだ。

この日、赤嶺は仙台メディアの質問に答えて「勝ったときにずっとあそこ(ゴール裏)にいるのは、ちょっとよくわからなかったです」と、仙台勝利時のしきたりに戸惑っていることを告白した。

また、「ゴールの瞬間はどういう心境でしたか?言い方は失礼かもしれないですが、キレイなかたちではなかったと思うんですけれども」と問われ、答えに窮しかける瞬間もあった。瞬時に気をとり直して無難な答えを返したのは見事だったが。

「キレイなゴールじゃないと言われたけど、それが持ち味なのにね」と話しかけると、赤嶺は「いやー、まだわかっていないですから」と苦笑した。

■赤嶺は、「仙台の子」になってしまうのか