過密日程をエクスキューズにしてはならない<br>(Photo by Keisuke KOITO/PHOTO KISHIMOTO)

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広州アジア大会に出場しているU−21日本代表が、グループリーグを3戦全勝で突破した。

日中関係との関連で大きく騒がれた中国戦に3−0で快勝したチームは、マレーシア、キルギスからも勝ち点3を奪い、銀メダルを獲得した02年大会以来となる決勝トーナメント進出を果たした。ロンドン五輪への第一歩は順調に踏み出されたわけだが、前回大会とはレギュレーションが異なる。4年前を上回る好スタートを切ったとするのは早計である。

男子サッカーは大会開幕に先立って行なわれているが、それでもスケジュールはかなりタイトである。グループリーグの3試合は中1日と中2日で行なわれたが、ここから先も最大で中3日という厳しい日程が待っている。準決勝から決勝は中1日(!)だ。技術や戦術以上に、心身にわたるタフさが求められる。連戦を耐え抜いていく人間的な強さが求められるのだ。

グループリーグ初戦の日本対中国戦は、アクチュアルプレイングタイム(※)が53分だった。続くマレーシア戦は57分で、キルギスとの最終戦は55分である。アウトオブプレーの時間が、すべてのゲームで30分以上もあったのだ。

これだけボールが止まっている時間が長ければ、ゲームの持続性は乏しい。流れは途切れがちだ。選手はそのたびに、心身をリセットすることができる。

先の南アフリカ・ワールドカップでは、60分台後半から70分以上のプレイングタイムが当たり前のように記録されていた。たとえば、カウンターサッカーやリアクションサッカーと言われたウルグアイは、グループリーグ3試合の平均が70・66分である(少数第3以下は切り捨て)。

疲労が蓄積していく決勝トーナメントに入っても、プレイングタイムが短くなることはない。韓国戦では79分、ガーナ戦では86分、オランダ戦では70分、ドイツ戦では78分である。ゲームがブツブツと止まることがなく、絶えずプレッシャーのかかる展開でも判断は鈍らず、それでいてプレーの精度が落ちないからこそ、彼らのカウンターサッカーは世界を驚かすことができたのだ。

日本の長所は技術力にあると言われているが、ハイプレッシャーのなかでもテクニックがブレないかを問うと、そこには決して小さくない疑問符がつく。韓国に敗れてU−20ワールドカップ出場を逃したU−19日本代表も、コンタクトプレーが激しさを増すとプレーの精度が落ちていた。

プレイングタイムが短くなってしまうのは、対戦相手にも理由がある。日本が望んでいるわけではないだろう。だとしても、アジア大会の競技レベルが、決して高くないことは理解しておくべきである。このレベルでしっかりとプレーできなければ、フル代表入りなど厳しいと言わざるを得ない。

21歳以下という年齢制限で括られているためか、あるいは五輪と同じようにメダル獲得を目ざして戦っているためか、ここまでのところは非常に好意的な報道が目立つ。だが、21歳以下でも代表入りしている選手は数多く、このチームは2014年のブラジルW杯出場も視野に入る世代である。いまのうちから高いレベルのプレーを要求していきたい。21歳以下というだけで何の抵抗もなく「若手」と言い切ってしまうのは、きわめて内向きな発想でしかないのだ。過密日程をエクスキューズにすることなく、最終日まで戦い抜いてほしいのである。

※実際のプレイ時間

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