除草剤でカエルがメス化、免疫機能にも悪影響

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Brandon Keim


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両生類は皮膚が薄く浸透性で、雨や地下水、水蒸気などに含まれる化学物質を吸収しやすい。そのことが、彼らが世界的に減少している原因である可能性がある。

「環境汚染の影響が両生類の免疫システムに及んでいることが、多くの研究で実証されている。これらの研究のほぼすべてが、両生類は特に敏感だと結論している。とりわけ、広く使用されている除草剤のアトラジンは、免疫機能を低下させ、発病率を高くする」と、米カリフォルニア大学バークレー校の生物学者Tyrone Hayes氏は、『Journal of Experimental Biology』(JEB)誌の3月15日号に掲載された論文の中で述べている。

Hayes氏は、3月1日付けの『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)にも別の論文を掲載している。この論文のテーマは、米国では一般的なレベルと言える地下水のアトラジン濃度と同じ水中で育てられた、オスのカエルにおける発達的変化だ。(米国では毎年、およそ3万6300トンのアトラジンが使用されている。)

研究対象となったカエルの精子とテストステロンのレベルは低下し、中には、エストロゲンを出してメスの生殖器を発達させ、最終的にオスと交尾して産卵した個体さえいた。[90%がテストステロン濃度が下がり、10%が雌化したという]

アトラジンの影響は性別にかかわるものだけではない。JEBに掲載された論文にも記述されているように、多くの科学文献が、アトラジンによって白血球数が減少し、免疫システムを制御する遺伝子に悪影響が生じる仕組みを説明している。またアトラジンは、カタツムリの免疫機能も低下させる。カタツムリは、両生類が感染する寄生虫を持っていることが多い。こうしたプロセスで、両生類は免疫機能が低下し、病気にかかりやすくなるのだ。

両生類の死因として最もよく知られているのはツボカビだ。カエルツボカビ症によって、コロンビアとパナマにいるカエルの95%が死に、アテロプス(ヤセヒキガエル)属の1993年だけでも30種が絶滅した。だがHayes氏によると、ツボカビは両生類の明確な死因として特定されているものの、他の原因も複数存在しており、それらは致命的ではないという理由で見過ごされている。そしてそれらは両生類の健康状態を悪化させていき、絶滅を逃れられる個体数を維持できないところまで行かせる可能性があるという。現在、全世界の両生類の個体群のおよそ70%が減少している。

また、アトラジンはよく使われ、時には1000キロメートル以上も[雨の形で]移動し、拡散しているが、両生類にとって危険な化学物質として特定されているのはアトラジンだけではなく、多くの除草剤や農薬が両生類の免疫機能に悪影響を与えると考えられている。

[アトラジンはチバ・ガイギー社が開発したトリアジン系の非ホルモン型、移行性除草剤。雨によって土壌から流出し、飲み水に利用されている河川に流れ込んでいることが判明したこともあり、米環境保護局(EPA)は2009年10月、安全性の再評価を行なうことを決定した。EUは2004年に使用を禁止しているが、日本では使用されている]

WIRED NEWS 原文(English)

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