1月19日の某スポーツ紙、とある競走馬の記事が一面を飾った。競馬閑散期といわれる1月に、それも火曜日のできごと。何ごとかと思った一般読者も多かったことだろう。

それは「ルーラーシップ」という馬の記事。父はNHKマイルCからダービー馬となった、変則二冠馬キングカメハメハ。母はオークス、天皇賞(秋)などを制した名牝エアグルーヴ。そう、管理する角居調教師が「極上の芸術品」と評するほどの良血馬のことだ。

同馬がデビューしたのは、昨年の有馬記念当日(12月27日)。京都での圧巻の勝ちっぷりに、大観衆で溢れる中山競馬場にもどよめきが起こった。レース後の岩田騎手も「すごすぎ」と語る惚れ込みぶり。そして1戦1勝の身で若駒Sに挑むこととなったわけだが、そのレースの当週に出た記事が、冒頭のスポーツ紙の話である。

「ディープインパクトの再来! あるぞクラシック三冠制覇」

世の不景気の打撃を受け、競馬人気も低迷気味。であるがゆえに「スターホースの誕生」が待たれるのは事実だ。しかし、わずか1戦1勝の馬を、スターホースに祭り上げようとマスコミが煽るのはいかがなものか。それも偉大なるディープインパクトと比較してまで…。某紙が競馬会サイドから、煽るように打診をされたと勘繰るファンが現れたのも、無理な話ではない。

そして同週の木曜日、つまりルーラーシップの追い切り後、またまた出てしまった。

「皐月2着馬トライアンと互角の動き。ディープの再来。翔ぶ準備できた!」
 
さらに、煽りに煽った某紙。当日では再度一面で「伝説の一戦」とのコピーが躍った。案の定ルーラーシップは、若駒Sで単勝1.7倍の一番人気に推される。1勝馬、それも取り立てて速い時計をマークして勝ち上がってきたわけではない馬に対しての評価だ。

結果、若駒Sではヒルノダムールに及ばなかったルーラーシップ。あの"世紀の大見出し"によって陣営、鞍上にかかったプレッシャーは、我々には計り知れないものがある。そもそも比較対象のディープインパクトが、あまりにも偉大すぎるのだから。だが陣営、鞍上が認めるように、素質の高さに疑う余地はない。ディープ級のスターに成長する可能性もゼロではないだろう。だからこそマスコミにもミスリードを避けてほしかった。次走にセントポーリア賞という自己条件を選択したのも「あまり騒がないでほしい」という、陣営の本音が表れているではないだろうか。我々も、彼のことはそっと見守っていきたい。