滴草由実(撮影:野原誠治)
 愛から逃げて、愛と出逢う――。ペネロペ・クルス主演最新作、「抱擁のかけら」。2000年「オール・アバウト・マイ・マザー」で、2003年には「トーク・トゥ・ハー」で同賞の最優秀外国語映画賞を受賞しているアルモドバル監督が新たなる愛の物語に挑んだ話題作だ。いよいよ2月6日からの公開を控え、今回は「カタチあるもの」、「Someday〜私を忘れて〜」というW失恋ソングが好評配信中のアーティスト・滴草由実に映画の感想や、自身の恋愛話などを聞いた。

――映画「抱擁のかけら」をご覧いただいて、率直な感想はいかがですか?

滴草:観終わった後すぐに、マネージャーさんにばーっと感想を言ってしまうくらい面白かったです。色んな形の愛が詰まっていて、深い話だと思いました。

――基本的に、主人公のマテオとペネロペ・クルス演じるレナ、レナと大富豪エルネストの話が中心に描かれていますが、その陰ではマテオに想いを寄せるジュディットの存在もあり、色々な愛が錯綜していますよね。

滴草:男女の愛だけじゃなく、男と男の愛もあったけど、みんなに共通しているのは「愛」を探していることだと思いましたね。その愛が最初はそれぞれバラバラなんだけど、話が進むにつれて、つながっていく感じがして。冒頭で意味が分からなかったシーンがあったとしても、後から「あれはこういう意味か!」と分かるのが面白かったです。

――最も印象に残っているシーンはどこですか?

滴草:愛人関係にあったエルネストと休暇に島へ訪れた時、ベッドの上でエルネストが死んだように見せかけた所で、それを見たレナが驚くわけでもなく普通にベッドに腰掛けるシーンですね。その後社長さんがガバって起きてビックリさせて、あの驚きは映画にスパイスを与えているなと思いました。

――女性のすごく恐ろしい一面が現れているシーンですよね。愛にまっすぐ生きるレナに滴草さんは共感できますか?

滴草:監督に恋をしたのは、監督本人の魅力はもちろん、映画という才能があったからだと思うので、2人の恋愛は映画があってこそだと思うんです。それが私にとっては、音楽で。自分がレナだったら同じ状況になると思いますね。

――「抱擁のかけら」は、マテオが昔に失った恋人レナとの思い出を語る形式で物語が進んでいきますが、滴草さんにとって一番思い出深い恋愛はどのような体験ですか?

滴草:振り返って、そうだなぁ。色々あるのでどれを選ぼうかな(笑)。もし自分が映画にするんだったら…。自分の好きになった相手が、友達の恋人だった事ですね。でも、友達はすごく大事。だから自分は身を引かなきゃいけないっていう。なんか切ない。

――恋愛には行かず、友情を守った。

滴草:密かに好きな期間はあったんですけど、その時はすごく彼女に対しての罪悪感があって、苦しい時期でした。今考えると、そういう"愛の形"だったんだなと思うし、みんなにもそういう経験ってあると思いますね。