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ベタープレイス(Better Place)がラウンドBの資金調達を実施し、HSBC Groupなどからあわせて3億5000万ドルの資金を集めた。

この資金調達は、投資前の評価額が9億ドルと、グリーンテック関連分野の資金調達のなかでも歴代ランキングに入る規模の大きさで、しかもロブ・デイ(Rob Day)が記すように、この金額のなかにはベタープレイスのイスラエルおよび豪の子会社に流れ込んだお金は含まれていない。

電気自動車(EV)/充電ステーション/バッテリー交換/電力の販売を組み合わせた大胆なビジネスモデルの実現を目論む同社では現在、2011年の商用サービス開始を目指している。

今回ベタープレイスに出資したのは、HSBC、Morgan Stanley Investment Management、Lazard Asset Management、Israel Corp.、VantagePoint Venture Partners、Ofer Hi-Tech Holdings、Morgan Stanley Principal Investments、 Maniv Energy Capitalなどの金融機関やベンチャーキャピタルなど。

HSBCは1億2500万ドルの出資と交換にベタープレイスの株式の10パーセントを手に入れたが、このことについて同社のアントニー・バーンバウム(Anthony Bernbaum:Special Opportunities部門のトップ)は以下のコメントをしている。

「ベタープレイスは最初にイスラエルとデンマークでサービスを立ち上げるが、この2つの市場で2年以内に同社のビジネスモデルが(技術面でも商売の面でも)成立することが明らかになるとわれわれは期待している。イスラエルとデンマークには各国の政府関係者が視察にやってくるだろう。そして、各国が先を争って自国への導入を図ろうとするとわれわれは考えている。」

「ベタープレイスの圧倒的に良い点のひとつは、EV(の導入・普及)を成功させるためのインフラの整備に関して公的資金に(ほとんど)頼らずに済み、また消費者が大きな犠牲を払うこともないところ。・・・これは技術的な飛躍ではなく、ビジネスモデルの飛躍である」

「ベタープレイスは技術面でもビジネス面でもすでに準備が進んでおり、もはやアーリーステージのベンチャーではないとわれわれは考えている。またごく短期間で、相当額の売上をあげ、黒字化できると思う」

ベタープレイスはこの日の会見で、イスラエル、デンマークの両国でそれぞれ1万5000から2万箇所の充電ステーションを今後数年間で構築するつもりだとしたが、これは以前に掲げていた数よりもはるかに少ない(訳者注:2008年時点では、イスラエルでの充電ステーションの数は10万箇所となっていた)。同社はすでに1000箇所以上の充電ステーションを構築しているが、これは始まりに過ぎない。そして、イスラエルのような小国においてさえ、国全体に同社のインフラを張り巡らせるには、大量の資金、税制面の優遇、そして国民の受入に前向きな姿勢が必要となる。


[著者:Eric Wesoff(Greentech Media)/抄訳:坂和敏/原文公開:1月26日(米国時間)]

原文はこちら:
$350M for Better Place: An EV in Every Garage

訳者コメント:
バッテリー交換ステーションのプロトタイプを横浜に設置したり、タクシーでの実験を六本木ヒルズ周辺で実施したりと、日本にも比較的馴染みのあるベタープレイスですが、今回の増資で売上のないベンチャーとしては異例の12億5000万ドル($1.25 billion)の評価額が付いたそうです。上記文中にあるように出資者らは楽観的な見方をしていますが、一方には米国のような自動車をめぐる国情の異なる市場での展開に関してなど不利な点も残っているようです。ただし、ベタープレイスのモデルがタクシーや貨物配送などの業務用には適しており、たとえ一般への普及が簡単にいかないとしても、そうした業務用のニッチは十分な大きさがある("A trillion dollar niche market")と著者は指摘しています。

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