「現存最古の電子計算機」が復活へ、画像で紹介

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Priya Ganapati


1961年にはWolverhampton and Staffordshire College of Technologyでコンピューター教育に利用されていた。Photos courtesy of The National Computing Museum and Computer Conservation Society/UKAEA/Wolverhampton Express and Star

正常に動くものとしては英国で最も古いコンピューターが、30年近くに及ぶ眠りから覚め、かつての輝きを取り戻そうとしている。

『Harwell Computer』、別名『WITCH』(Wolverhampton Instrument for Teaching Computing from Harwell)が、『ブレッチリー・パーク』にあるコンピューター博物館で第2の人生を歩むことになった。同博物館によると、Harwell Computerは、プログラムやデータが電子的に記録されているコンピューターとしては、現存する中で最も古いという。[稼働開始は1951年。なお、ブレッチリー・パークは庭園と邸宅だが、第二次世界大戦期に政府暗号学校が置かれたことから、現在は第二次世界大戦の暗号解読をテーマとした博物館となっている]

Harwell Computerは『デカトロン』[計数放電管]という、ガスを封入した管を900個使用したリレー式のマシンだ。管1個につき1けた記録できる。データの入力とプログラムの記録の両方に紙テープが使われている。


デカトロン管。画像はWikipedia

英国で初期の原子炉の設計に利用されていた。Harwellとは、英国の原子力研究所(AERE)の別名だ。(1940〜1950年代に同研究所で使われていたコンピューターについてはこちら)

「スピードより信頼性を重視したマシンで、もちろん、信頼性については申し分なかった。『ウサギとカメ』の物語でいえば、間違いなくカメの方だ」と、コンピューター博物館のKevin Murrell館長兼理事は説明する。

「数学者が計算機を使った場合と比較すると、最初の30分はマシンも人間も同じペースだった。ただし、その後、人間は疲れ果ててあきらめ、マシンはいつまでも計算を続けた。クリスマスから新年にかけての10日間、無人で動き続けたこともある」

これは当時としては偉業だった。Harwell Computerは1957年まで原子力研究所で活躍し、1973年までコンピューター教育に役立てられた。その後は分解され、保管されていた。それが今、よみがえろうとしている。

リストアが完了したら、復元された『Colossus Mark II』のそばに置かれる予定だ。こちらはHarwell Computerより歴史があり、世界初の電子計算機として暗号解読に利用されていた。

[Colossus(コロッサス)は第二次世界大戦の期間中、ドイツの暗号通信を読むためにイギリスで使われた。用途は限定されていたものの、世界初のプログラム可能なデジタル電子計算機。

プロトタイプの『Colossus Mark I』は1944年2月、改良版の『Colossus Mark II』は1944年6月に完成し、ただちに暗号解読に成功、ノルマンジー上陸作戦の成功につながった(日本語版記事)。国家機密とされ、情報が開示され始めたのが1970年代後半であったため、通常の歴史上では世界最初の電子的なデジタル・コンピューターは1946年に稼動した米国の『エニアック』とされている。正式に機密扱いから外されたのは2000年。

戦争が終わるまでに10台が製造され、多くは意図的に破壊された。現在博物館に展示されているのは、2003年に作成されたレプリカ]



撮影は1964年。当時はWolverhampton and Staffordshire College of Technologyに置かれていた。

WITCHの復元に関するBBCの動画ニュースはこちら


WIRED NEWS 原文(English)

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