小林香織(撮影:野原誠治)
 2005年2月、アルバム「Solar」でデビューを果たしたサックス・プレイヤー、小林香織。“ジャズ界のアイドル”とも呼ばれてきた彼女だが、コンスタントに4枚のアルバムを発売し、台湾や韓国でも精力的にライブ活動を展開。デビューから5年目に突入し、3月4日には初のベストアルバム「GOLDEN BEST」を発売した。

――2005年2月にアルバム「Solar」でデビューされてから4年間で4枚のアルバムを発売されましたが、今回のベストアルバム「GOLDBEN BEST」には、「Solar」から2008年6月に発売した最新作「Shiny」までの曲がまんべんなく収録されていますね。

小林香織(以降、小林):もっと最新があって、このベスト盤のために書いて、昨年の年末に録音したのが1曲入ってるんです。

――その新曲「Ele Best!」とは、どういう意味なんですか?

小林:「Electric」に「Best」を掛けて「Ele Best!」です。今まで私のアルバムには、必ずエレピとか鍵盤が入っていたんですけど、今回のベスト盤をプロデュースしてくれた、ベーシストの村田隆行さんのアイディアで、あえて鍵盤を入れていないんです。サックスとベースとギターしか入ってないんです。もちろん、ドラムは打ち込みで入っているんですけれども。なので、すごく変わった、今までの私のサウンドと全然違った新しいサウンドになっているんです。

――この4年間を振り返ってみて、変化を感じる部分はありますか?

小林:もう本当にレコーディングで録った1週間後ぐらいから「今ならもっとこう吹くのに」というのは、もう常に。ミュージシャンはみんなそうだと思うんですよね。それが終わってしまった時が引退する時だと私は思ってるので、ずっとそうでありたいと思っています。やっぱり色々な想いがありますけれども、「今ならこう吹ける」とかではなくて、「この時はこういう風に思ってたんだ」というように、その時の良かった部分をすごく前向きに見られるようになったと思います。

あと、自分のプライベートの細かいことで、例えば好きな色だったり、好きな食べ物だったり、好きな音楽とかって、知り合う人や社会がどんどん変わっていく中で、自分自身も趣味・嗜好が変わっていくと思うんです。だから、その時にはその時にしか出せなかったものがあると思うので、その時にベストを尽くせていたかどうかが大切だと思うので、懐かしく思うのと同時に、また次へ進むパワーを昔の自分からもらった感じがしました。

――収録されている1曲1曲に、その当時の思い出があるんですね。

小林:普通は、みなさん1年があっという間だっておっしゃるじゃないですか。私は本当に1年が長くて、デビューアルバムを出してから2枚目を出した時に、もう1枚目が5年ぐらい前の作品のように、それぐらい濃い1年でした。4枚目をレコーディングしたのが、ちょうど去年の今頃なんですね。この1年はさすがに早く感じるんですが、4枚目に至るまで各1年が本当に長かったので。もう「Solar」なんて大昔の曲で(笑)、2枚目も3枚目もすごく昔の作品という感じがするので。たった4年間の出来事とは、とても思えないんです。

――それだけ充実していたということなんだと思います。

小林:そうですね。もちろんサックス・プレイヤーとして思っている、ポリシーという芯の部分は変わらないのですが、毎回各アルバム毎に自分のアプローチの仕方が違うんです。なので、この時は妙にこのことを気にしていたなとか、こういう価値観だったな、ということが本当に毎年面白いぐらい違って、そして今があるんだなという感じがします。

――今日こうして実際にお会いしてお話を伺ってみると、ジャケット写真やミュージックビデオの映像で演奏している姿から想像していたよりも、すごく落ち着かれている印象を受けました。

小林:それは、そうかもしれませんねー。23歳でデビューして4年で、今27歳なんですけど、濃厚な時間を過ごせたおかげで、すでに40歳ぐらいの気がするんですよ(笑)。