オスロの市バスが屎尿を動力燃料に:バイオガスを積極活用
Photo: Stor-Oslo Lokaltrafikk
ノルウェーの首都オスロでは、80台の市バスを改造して、屎尿から取り出したバイオメタンを動力燃料として利用しようとしている。
CO2排出量を削減し、「2050年までにカーボン・ニュートラルを実現する」というノルウェー政府の野心的な計画に沿った、(いささか胸が悪くなるかもしれないが)画期的な取り組みだ。
9月から、オスロにある2カ所の下水処理場が、下水を分解する微生物作用の副産物であるメタンを回収して市バスの燃料にする予定だ。市当局者によると、燃料を転換すれば燃費の節約になり、下水処理場とバスの両方においてCO2排出量を削減できるという。
「オスロは、環境面で持続可能な世界有数の首都を目指している。バイオメタンの利用は理にかなっている。利用しなければバイオメタンが無駄になるだけでない。バス1台当たりのCO2排出量を削減すれば、カーボン・ニュートラルという目標の達成に大いに役立つ」とプロジェクト責任者のOle Jakob Johansen氏は『Guardian』紙に語っている。
バイオメタン推進派は、このガスを燃料として利用すれば、大気の質が改善するだけでなく、農村を代替燃料の生産基地に変えることができると主張している。
カリフォルニア州のバイオメタン推進グループは、同州にいる170万頭の乳牛からメタンを回収すれば、1億5000万ガロン(約57万キロリットル)以上のガソリンに相当する約2億3000万立法メートルのメタンを年間で生成できると主張している。
これは米国の1日のガソリン消費量である3億9000万ガロン(約150万キロリットル)の半分にも満たないが、ばかにならない数字だ。
屎尿を動力燃料にするというとぞっとするかもしれないが、防護服を着た者たちが、未処理の下水をシャベルですくってガスタンクに入れるわけではない。バイオメタンは、微生物を利用して屎尿や残飯、芝生の剪定ゴミ、食肉処理場から出た廃棄物などあらゆるものを分解する「嫌気性発酵」と呼ばれる4段階のプロセス中に生成される。
これまで、オスロの下水処理場で生成されたメタンの大部分は燃焼されており、約1万7000トンのCO2を大気中に排出していた。一方、交通機関による大気汚染レベルは急激に上昇しており、2000年以降10%上昇し、その影響はノルウェーの年間CO2排出量の半分以上に及んでいる。市当局はこれらを懸念し、メタンを回収してバスの動力燃料とすることに決めた。
この方式であれば、炭素の増加量は実質的にゼロに等しい、と市当局者は語る。メタンガスを生成するのに必要な電力を計算しても、CO2排出量はバス1台当たり年44トン減少するという。
バイオメタン生成に必要なインフラの新設にかかる費用は少なくないが、生成されるバイオメタンガスは安い。オスロの統計担当者によれば、バイオメタンガスはディーゼルよりもリッター当たり平均0.5ドル安く、バスを少し改造するだけで動力燃料を切り替えられるという。
また、オスロには処理すべき汚泥が有り余っていることが分かっている。市の2カ所の下水処理場は、試用されるバス80台の燃料にするのに十分な量のバイオメタンを生成できる。このプログラムが成功すれば、家庭やレストランから出る生ゴミからメタンを生成して、400台の市バスすべてに取り組みが拡大される予定だ。
[バイオガスは、発展途上国では低価格の燃料、調理に用いられており、日本でも、精製メタンを供給する試みが行なわれている。2008年1月、企業11社が合同会社バイオガスネットジャパンを設立し、都内で天然ガス清掃車50台で試験供給を行うことを発表した]