「参議院予算委員会で答弁する麻生首相」(首相官邸ホームページより)

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 各方面から非難囂々(ごうごう)の「定額給付金」。 1人1万2000円のお金はどのように使われていくのか。バラマキ批判と政局に隠された本当の支給理由とはなんだろうか。恩恵を受ける意外な人たちとは?(バックナンバーはこちら

■政府の審議会からも「国家財政破綻」政策と批判される

 最近のマスメディアではもっぱら、「麻生首相が定額給付金を受け取るのか?」ということが話題になっている。新聞や通信社などでも、盛んに世論調査を行っているのだ。

 定額給付金とは、「生活対策」として、2008年10月30日の新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議で盛り込まれた給付金方式の定額減税政策のことで、その規模は2兆円とされている。この政策については、与党内からもバラマキとか経済効果が低いなどいろいろな反対意見があり、麻生首相自身の言動も一貫せずに迷走している。
「参議院予算委員会で答弁する麻生首相」(首相官邸ホームページより)

 共同通信社が新年明けの1月11日と12日に行った調査では、定額給付金については「評価しない」が70.5%と7割を超えた。中でも「2兆円の財源を優先的に使うべき政策」への回答では「年金・医療など社会保障」が42%と最多で「定額給付金」はわずか3.3%で最少だった。

 同じく朝日新聞社が10〜11の両日実施した全国世論調査(電話)によると、政府が補正予算案に盛り込んだ総額2兆円の定額給付金について、「やめた方がよい」が63%に達し、「政府の方針どおり配った方がよい」の28%を大きく上回ってしまった。自民支持層でさえ「配った方がよい」は48%にとどまり、「やめた方がよい」が43%に上ったのだ。また、給付金が景気対策として「有効だと思う」人は18%にとどまり、「有効ではない」が71%を占めている。

 経済の専門家の間でも悪評紛々で、ある経済評論家は「天下の大愚策」として、あの昭和の三大バカ査定「戦艦大和、青函トンネル、伊勢湾干拓事業」に匹敵するとして糾弾しているのだ。財務相の諮問機関、財政制度等審議会からも、「使途見直しが必要」で、「他の経済活性化策に振り向けるべきだ」とか「同様の施策が次々出てきたら、国家財政は破綻する」という批判を受けている。政府の審議会から、予算案の見直しを求められるのは極めて異例のことで、身内からも反旗を翻されるほどの愚策ということなのだろう。

■日本人が定額給付金をよく思わない本当の理由とは?

 ここで、その具体的な問題点を挙げておこう。  まず定額給付金の目的とされている「経済効果」については、懐疑的な意見が多くなっている。個人消費への波及効果は限定的で、2兆円のうち消費に向かうのは2割程度、実質経済成長率の押し上げ効果は、0.1%(BNPバリバ証券)とか0.2%(三菱総研・野村金融経済研究所)という観測がされているのだ。

 内閣府は、この数字を0.2%としているが、国会での質問に「0.15%を四捨五入して0.2%とした」として、「0.05%」もの水増しを認めた。また後述するが、支給する際にもいろいろな手間や費用がかかるので、実質的な効果はどれほどあるか不明なのだ。

 それと、資産1億円以上といわれる富裕層にも支給する必要があるのか。政府がいうところの定率減税分だとすると、一般の人たちより高額の税金を納入している富裕層には、さらに多くの金額を上乗せしなければならないことになる。

 一方、現在予定されている支給方法では、住民票を持たない派遣労働者や日雇い労働者には支給できないことになるのだ。いちばん生活に困窮している層に届かなければ、支給する意図は半減してしまう。もともと農耕民族である日本人の性向からしても、働かずにお上からお金を支給されても、意外とありがたく感じる人は少ないのではないだろうか。われわれ日本人は、古くから毎日畑を耕し、水や肥料をやり、コツコツと世話をしながら、実が熟して初めて成果が得られるという生活習慣に慣れ親しんできたのだ。

 したがって、労働に対する対価以外にお金を得ることは政府が思っているほど国民にとってうれしいことだとは思えないのだ。おそらく、定額給付金のアンケートでも評価しないという人の多くは、そのように考えているのではないだろうか。

■給付作業に要する「手間」と「時間」をまったく無視

 ではなぜ、これほどまで非難されても支給しようとするのだろうか。  その理由は、この政策が決まった経緯に隠されているのだ。新聞報道によると、最初にこの政策を言い出したのは公明党だとされていた。(次ページへ続く)


橘 尚人[著]

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