■立場が揺らぎ始めた日本の組織サッカー
 その問題点をしっかりと見抜いたチームがあった。それが日本の最大のライバルである韓国だ。グループリーグ最終戦まで決勝トーナメント進出決定がもつれ込んだ韓国は、日本対サウジアラビア戦の後に、同じスタジアムでイラクと戦い、見事に勝利。グループBの2位通過を決め、U−20W杯出場を懸けた準々決勝で日本と激突することとなった。
 イラク戦後のプレスカンファレンスで、韓国のチョ・ドンヒュン監督は、「ホームのサウジアラビアと対戦するより、日本と対戦したほうが我々にとってよかった」とはっきり言い切った。この時点で韓国には『日本は強い』というイメージがなく、試合もまさにそのとおりの展開となった。
 
 韓国は日本の連係の悪さに目をつけた。精錬された組織サッカーで、日本の連係ミスによって生まれたバイタルエリアのスペースを徹底して突き、日本にリズムを掴ませなかった。
 日本が戦ったグループリーグの中東3チームと違い、韓国はショートパスとロングパスを使い分け、連動した攻撃でチャンスの山を築いていった。守備面もボランチを軸にしっかりとリスクマネジメントし、日本がグループリーグで見せた“奇襲”すらも通用しなかった。
 韓国の緻密な戦い方の前に、手も足も出なくなった日本は、シュート16本を浴びて3失点を重ね、反対にシュートを1本(枠内シュート0本)しか打てず、内容、結果ともすべてにおいて劣った言い訳無用の完敗を喫した。
 
 比較的、身体能力にものをいわせて雑なサッカーをする中東相手だと、苦戦はするものの、細かいミスが致命傷にならず、対抗はできた。しかし、相手が同じ組織力を売りにする韓国のようなチームだと、たちまち組織的エラーを致命傷にさせてしまった。
 組織力がウリだった日本が、組織力を身につけてきたライバル・韓国に完敗。韓国のほかにも中国、ウズベキスタン、オーストラリアといったアジアの強国が組織的なサッカーを展開しており、それには大きな危機感を感じざるをえない。
 
 日本が急速な発展と地位向上を勝ち得た組織サッカーが、アジア諸国で当たり前のことになりつつある。結果的に今大会を制したのはUAEだった。UAEが見せたサッカーは、中東独特の勢いと雑さこそあったものの、局面での理にかなった連動性は非常に高いものがあった。決勝の相手となったウズベキスタンも、国を挙げて世界大会の出場を目指していただけに、U−19チームの快挙は、今後のウズベキスタンサッカー界に大きな影響を与えるはずだ。こういう状況を見ても、日本の立場への危機感は増す一方だ。
 
 韓国戦の敗戦を受けて、牧内ジャパンは2年も経たずに終焉を迎えてしまった。7大会連続で続いたU−20W杯の出場権を逃したことも大きいが、同時にこれは日本サッカー界に大きな警鐘を鳴らす敗戦でもある。
 日本が築き上げてきたアジアの強国としての立場は、非常に脆く、いつ転がり落ちてもおかしくない状況にあることを、しっかりと認識しなければならない。(了)
  
著者プロフィール
安藤隆人(あんどう たかひと)
元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。小学校2年生からサッカーを始め、以来サッカーの魅力にどっぷりとはまる。特に高校世代のサッカーは小学生のころから興味を抱き続け、今もこの世代を中心に全国を飛び回り、ユース年代の取材を精力的に行っている。