終了間際、一人少ないバーレーンに立て続けにゴールを許した日本<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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 中村憲のシュートがゴールネットを揺らし、日本が3点目を決めた後半40分、スタンドのバーレーンサポーターの多くが席を立った。0−3とリードされ、しかもDFのモハメド・ハサンが退場したバーレーンの選手たちの足も止まり始めていた。しかし42分、右サイドからのクロスボールを受けたサルマン・イサが放ったシュートが日本ゴールを割った。さらに43分には後方から放ったロングボールを闘莉王がヘディングでバックパス。しかし楢崎がそれをキャッチできず、ボールは日本ゴールへ。スコアは2−3に縮まった。

 ロスタイムは3分。バーレーンはボールを持つと次々とシュートを放つ。3本のシュートのうち2本を楢崎がセーブし、1本は枠をはずれ、試合は2−3のまま試合終了の笛が吹かれた。2010年のワールドカップアジア最終予選。来年6月まで続く大会の初戦。日本は勝ち点3を手にした。しかし、終了間際の2失点は後味の悪さを残した。

 岡田監督は試合後の会見で、失点について聞かれ「これがサッカー」と語り、次のように付け加えた。

「1点目が入ってもまだ相手は、足は動いていなかったんですが、ちょっとしたミスでこれくらい、サッカーは流れがガラっと変わるんだということ。それとやはり交代で入った選手の役割が徹底できていなかった。それだけではないですが、一番大きなことはちょっとでも気を緩めるとこういう事が起きるんだということだと思います」

 後半40分に交代し、ベンチへ座った長谷部誠は失点について「点を取られたところなどは、誰もプレッシャーに行かなくて、蹴られて引いてしまった部分があるので、ああいうところは修正しなくちゃいけない」と話し、闘莉王は「あの場面はプレスに行かないとダメだった。(相手が退場して)一人多いのに、フリーで蹴らせてしまった。フリーで蹴らせると距離も出るから下がらざるを得なくなる」と振り返った。

 試合開始から、豊富な運動量を発揮していた田中達也の疲労は、終盤ピークに達してるように見えた。前半30分に痛めていた右足首を蹴られた中村俊輔は走ることもままならいほどの痛みを堪えていた。「代えてもらおうと思ったけど、その時に(佐藤)寿人が交代して入ってきたから」と、状況を察知しそのままプレーを続けた。

 後半25分、松井大輔が中村憲剛に交代。続く後半33分には、玉田圭司に代えて佐藤寿人を投入した。佐藤と中村俊のポジションを代え、中村俊の負担を軽減するよう岡田監督は指示を送っている。そして後半40分、長谷部に代わり、今野がピッチに送り出されている。守備を固める意図だったのだろうが、カウンターを狙うバーレ−ンのロングボールの起点を押さえるべき前線の選手は、その任務を果たせなかった。

 結果的に途中出場の中村憲のゴールがあったからこそ、勝ち点3が手にできたわけだが、完封での逃げ切るには、指揮官や選手たちに足りないものがあったということだろう。

 前半18分、中村俊の鮮やかなフリーキックで先制すると、バーレーンの攻撃時間が次第と長くなる。日本の右サイドを崩しながら攻め込むバーレーンだったが、パスミスやシュートミスも多く、ゴールを決めるまでには至らなかった。日本も何度か細かいパスで相手を崩し、前線では玉田や田中、そして松井がドリブルで仕掛け、ファールを誘うシーンも数多く見られた。

 バーレーンは攻めてはいたが、日本のほうが落ち着いてゲームをコントロールしていたように見えた。そして前半終了間際、左サイドのペナルティエリア付近でフリーキックのチャンス。遠藤はペナルティエリア内へ低い弾道のクロスを送ると、闘莉王らにディフェンスがひきつけられ、フリーの中村俊へ渡ると左足でシュート。ジャストミートはしなかったが、相手DFの手に当たり、日本はPKを得て、貴重な追加点を挙げた。