――自分のメッセージを伝えたいという衝動は、デビューから音楽活動を続けていく中で、徐々に強くなってきている実感はありますか?

森山:そうかもしれないですね。ただ、前提として、自分が「楽しい」とか、「おもしれー!」と思える自我とかエゴというものは、衝動としては非常に強いんですよ。デビューした当時はもしかしたら、「こんな曲も作れる」とか「誰かに褒められたいな」とか、もう少し子供っぽい気持ちもあったかもしれないですけどね。今でも無いといったら嘘になるし、多分それは変わらないとは思うんですけど、それがたまたま歌だったという話。たかが歌で、されど歌、って根本的には思っているんですけど。

ただその中で、歌という一つの言語というか、ボキャブラリーを得て誰かに褒められたり、何かを得たことで満たされることが、本当の意味で自分にとっての本質的な幸せではないという。すごくその場だけの、ある種の欲求とか快楽を自分の中で消化しているだけで。物質的なものとか、目に見えるもので何か満たされることが、豊かさとか幸せではなくて。何か一つのものを人と分かち合えた時、多分そこに“ハッピー”という物があるんだなという。

満たされることより、分かち合うことに意識が向いたのは、つい最近かもしれませんね。でも、なんかそういうの「気持ち悪いー」とも思うんだけど。美味しいものを食べた時に、美味しいから幸せなんじゃなくて、美味しいという感覚を誰かと共に味わえたから多分、美味しいものを食べた時って「幸せだよね」という言葉になると思うんです。

豊かさはきっと、誰かと交わり合いをもって、何かを一瞬でも共有できた時に、全てがあるのかな。もしかしたら楽曲作りの中に、御徒町とのセッションとか、レコーディングのスタッフ達とのやり取りもそうだし、それを知っている人や顔の見えない人にまで伝えていく作業の中で、「何かを分かち合おう」という本能的な衝動は、どこか自分の無意識にあるかもしれない。

――共有という意味では、アルバム「諸君!!」発売後、4月から7月まで全国ツアーを行なっていましたが、ツアーのテーマに掲げていたことはありましたか?森山:あるか無いかというと、いっつも超!後付けで(笑)。「フタを開けてみたら、俺はこんなことを歌いたいのかもしれない」みたいな(笑)。でも今回に関しては「諸君!!」という、“同時代感の共有”という相当堅く、カクカクした言葉なんだけど。世代を越えて、自分達がどんな世界に生きているか、どんな風に吹かれているかということが、音楽を通して分かち合えたらいいなという、ある種においては途方も無いテーマがあって。アルバムを作っている時点から、ライブのテーマはすごくハッキリしていました。だから、アルバムの曲順とライブの流れが全く同じだったのは多分、ライブにおいても、レコーディングで作る曲においても、少しずつ色々なものが一致してきたのかなと。

――昨年はスペイン・サッカー「リーガ・エスパニューラ」で、クラシコ(レアル・マドリード対FCバルセロナのスペインダービー)を取材されていましたが、今年スペインに行く予定は?森山:すっごく行きたいんですよ!今一番行きたいのは、スペイン。プレミアも行ってみたいんですけど、どちらかと言われたらもう断然!スペインですね。今後ちょっとお休みを頂けるような話を頂いているので、そこで行きたいなと(笑)。

――最近、癒しを感じるものは何かありますか?森山:よくアナログ・レコードを聴くようになりました。今、俺達の世代って色々なメディアがあって、本当に色々な情報が行き来していて。そこから色々な音楽や文化に触れることができて。個人的に今、色々なスタンダードやルーツから枝葉になって分かれている部分に、触れているような気がするんですね。枝葉って、根っ子と違って枯れてしまうじゃないですか。「新しいものへ」「新しい花を咲かそう」「新しい実をならそう」と枝は頑張るんですけど、どうしても消費されていくというか。多分それが今の消費文化だと思うのね。もしかしたら、短い命であるという儚さが混在するのかもしれないけど、やっぱり不変的なもの、根っこの部分の栄養素が特に今、自分に欠けているような気がして。せめて音楽の歴史だけでも、自分の中で知っておきたいのも含めて、敢えてスタンダードをよく聴いています。「星に願いを」でもいいし、とにかく歌い継がれている曲の空気に触れたいなと。

――音楽とサッカーからは、これからもずっと離れない感じですか?森山:そうですねー。本当に残念なぐらい、もうそれ以外は無趣味で。

――人生設計として、いつくらいに結婚したいですか?森山:僕の中では、全然している予定だったんですけど。若干、何かがズレ始めていますね(笑)。

森山直太朗 - アーティスト情報

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