知られざるエンジニア採用の舞台裏
業種・職種間でばらつきはあるものの、相変わらずエンジニア売り手市場が続いている中で、企業側は「あの手この手」でエンジニア獲得に必死だ。そこで採用活動の具体的な取り組みを紹介したい。

景気減速傾向の中でも、依然高いエンジニア採用ニーズ
2008年に入って世界経済は、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した金融不安や、原油・穀物価格等の高騰などによって景気減速の影響が顕著になりつつある。
エンジニアの転職市場にも少なからず採用を手控える動きもでてきているが、組み込み・制御系や金融系などでは依然として、高い採用ニーズが継続している。企業側としては一人でも多く優秀なエンジニアを採用したいわけだが、企業規模や業種・職種によって採用までの道のりがかなり険しいのが、現実だ。
そこで各社、さまざまな手段や応募者側にとって魅力的な待遇・体制等知恵を絞りながら採用活動を積極的に展開している。応募するエンジニア側からは普段、見ることのないその“知られざる採用活動の舞台裏”について今回、以下に紹介する2社の事例を通してみていきたい。

■事例1 見切り発車で秋葉原に事務所を新設、社長より高い時給……
ECサイト専用の検索・レコメンドエンジンを自社開発し、ASPで提供しているコトハコ。まだ設立4年目、社員5人の小さなITベンチャー企業であるが世界最大のECサイトに対抗すべく現在、積極的な事業展開を図っている。
そこで即戦力となれるエンジニアを求めて同社が展開している採用活動を探ってみると、そこには不退転の決意で望む社長の、エンジニア採用への並々ならぬ強い思いがあった。

■”見切り発車”で秋葉原に事務所を新設してしまったわけ
「経営コンサルタントの人に怒られましたよ」
と笑いながら話す、コトハコの代表取締役・山内氏。
今年4月、今後の事業展開やそれに伴うエンジニア増員の受け皿として、本社のある茨城県つくば市から離れた、東京・秋葉原に事務所を新設した。
といっても、4月時点ではまだ採用活動を展開中であるにもかかわらず、半ば“見切り発車”で事務所を新設してしまったことが、上記の発言につながるわけだ。
通常、採用が決まってから事務所を借りるのが常識にもかかわらずなぜ、山内氏はそのような行為をとったのか?
「それまでも採用活動は行っていたのですが、正直なところ、なかなかこちらの希望に合う方に出会う機会に恵まれませんでした。そこで今後の方策をあれこれ考える中で、多くのエンジニアの方にとって便利な場所にある秋葉原に拠点を置くことで、少しでも応募しやすい環境を事前に用意しておきたかったのが本音です」と打ち明ける。

しかしながら都心の秋葉原に事務所を借り、なおかつ3カ月以上も勤務すべきエンジニアが不在の状況の中で採用活動を展開していくことは会社にとって、経済的リスクは決して少なくないはずだ。
「正直、事務所の契約・月々の賃貸料やその他備品購入、そして採用活動に伴う費用も含めればベンチャー企業である当社にとって決して安くはありませんし、私自身、“背水の陣”で臨んでいます(笑)。しかしそこは先行投資、と割り切っていますし、これがきっかけで当社に関心をもってもらえるエンジニアが少しでも増えてくれれば、それでいいと思っています」

■社長よりも高い時給、自分にとってベストな環境が作れる場を提供する
事務所新設の件からも察しがつくとおり、山内氏をはじめ同社はエンジニアを尊重し、なおかつ最大限活躍できる職場環境や風土を大切にしている。
それを象徴するひとつの例が、“社長より高い時給”。「この業界は“新3K”と呼ばれるほど、長時間労働が常習化していますが、本来、エンジニアは余計な仕事を増やさずに、効率重視で業務をこなせる人が報われるべきだと思っているんです。だから仕事の進め方や評価・待遇に関して現場エンジニアの意向などを配慮し、同業種の大企業にも決して引けをとらない報酬を出していると自負しています。ここだけの話、時間給にしたら今こうして一人、秋葉原の事務所を切り盛りしつつ雑用から社長業までこなしている私より、つくばの本社で自社サービスの開発をしているエンジニアのほうが多いんですよ(笑)」。

また、現在募集中のエンジニアにとって、秋葉原オフィスが新たな魅力につながる。今回、「コンサルタント」として自社サービス(ECエンジン)のシステム開発からリリースまでを担当する一方、新事務所の「事業責任者」というポジションも任されることになる。仕事の進め方から新事務所の組織体制・職場環境まで「自分にとって最もベストな事業環境」を一から築き上げることができるチャンスでもあるのだ。
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