ビジネス生産性ソフトウェアのデファクトスタンダードである、マイクロソフト・オフィスは、ベンダーロックイン(ある特定のメーカーや販売会社がユーザーを自社製品で囲い込むこと)だという批判により、代替製品が模索されてきた。

中でも無償のOpenOffice.orgは、マイクロソフト・オフィスとの互換性や性能面の良さ、プラットフォームがWindows,MacOSX、Linuxに対応していること、保存文書形式であるODF(Open Document Format)がISO認定されるなどの理由から、「マイクロソフト・オフィスを捨ててOpenOffice.orgに移行しよう」という意見が多くなっている。

しかし、実際には様々な理由により、「移行は困難」と言わざるを得ない。その理由について、ここでは大きく3つの理由を挙げてみたい。


(1)コスト削減にはそれほど貢献しない
OpenOffice.org自体は無償であるが、移行に当たっては、ヘルプデスクの開設、マイクロソフト・オフィスで作成した文書資産の修正などのイニシャルコストがかかる。特にマクロやVBAは、OpenOffice.orgでは全く使えないと同時に、新たに書き直すために必要な「手続き、手順記録型のマクロビルダー」がOpenOffice.orgには搭載されていない。よって業務に必要不可欠となっていたマイクロソフト・オフィス資産は、別途外注して新規開発する必要がある。

イニシャルコストの額についてはケース・バイ・ケースだが、むしろ、ボリュームライセンス契約、ユーザーの業務に応じて余計な製品(マイクロソフト・アクセスやパワーポイントなど)を導入しない、バージョンアップを据え置くなどの措置により、マイクロソフト・オフィスを安価に使用出来ることを考えると、コストメリットはそれほどないと考えられる。いたずらに混乱を招くよりマイクロソフト・オフィスを使った方が得策であるケースが多いだろう。


(2)マイクロソフト・オフィスの新インタフェースが優れている
マイクロソフト・オフィス2007で採用された、新ユーザーインタフェースは「結果指向インタフェース」と呼ばれている。従来の操作と大きく異なるため、現在のところ賛否両論であるが、一度慣れてしまえば、旧インタフェースよりも使いやすくまとまっている。そして、このインタフェースは、次期 Windows7で搭載予定のマルチタッチスクリーンとの親和性が良い。実際に試したわけではないが、ざっくりしたアイコンやタブのサイズと配置から、そう判断できる。

おそらく、Windows7の登場とほぼ同時に、マイクロソフトはマルチタッチスクリーンとの親和性の高い次期オフィス製品を投入してくると思われる。たとえば横に長いエクセルの表を、くるりと裏返して続きを表示するなどのインタフェースが搭載されてくれば、ユーザビリティは格段に向上するだろう。


(3)OSと併せてサポートが受けられる
仮にOpenOffice.orgに移行したとしても、プラットフォームであるOSの大半はWindowsであることに変わりはない。そうなると、OSもオフィスソフトもまとめてサポートが受けられるマイクロソフト製品を選ぶほうが、結果的に楽である。


ベンダーロックインが好ましくないというのは、いわば「お上の考え」であって、エンドユーザーの視点で見れば、使い慣れたものが一番なのだ。
OpenOffice.orgは、パーソナルレベルで無料で使える優れたオフィスソフトである。すなわち優秀なPoorman's Officeなのである。

ベンダーロックインが排除されるとすれば、むしろWebサービスの高機能化がカギを握る。10年前に提唱されて、一度は消えたNC(Network Computer=ブラウザだけを搭載した端末)の21世紀型リベンジが成功するかどうかにかかっていよう。

(編集部 真田裕一)