国際ローミングサービスは各キャリアも力を入れている。空港へ向かう列車内にも広告をよく見かける。

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auの国際ローミングサービス「GLOBAL PASSPORT (グローバルパスポート)」は、自分が普段利用しているCDMA携帯電話をそのまま海外に持ち出せるサービスである。しかし今月1月28日よりオーストラリアでのサービスが停止されることとなった。日本でもビジネス層を中心に自分の携帯電話を海外に持ち出す“国際ローミングサービス”の利用が増えているだけに、auは今後どのような対策を打ち出していくべきなのだろうか。


■海外のCDMAキャリアの現状はどうなっているのか
オーストラリアでのauのサービス停止は、現地のローミングパートナーであるTelstraがCDMA方式のサービスを終了することに伴うものである。

この意味はオーストラリアでTelstraが携帯電話サービスを終了するということではない。同社は以前からGSM方式のサービスを提供しており、現在はNTTドコモやSoftbankと同じW-CDMA方式のサービスも提供している。すなわちGSM、CDMA、W-CDMAという3つの携帯方式を採用しているのだ。このうちW-CDMAは実質GSMのアップグレード規格であるため、GSMとW-CDMAは同系統の方式と括ってもよいだろう。すなわち今回のCDMA終了は複数提供している通信方式を1系統に絞り、今後の新しいサービスはW-CDMA方式に集中するということでもあるようだ。

このようにオーストラリアでは複数の通信方式を採用しているキャリアがサービス統合によりCDMA方式を停止していくなか、ほかの国においてもCDMA方式は主力のサービスにはなっていないようだ。特にヨーロッパはCDMA方式がアメリカ発の規格であるということからか、採用は全く進んでいない。一方アジア各国はCDMA方式を採用するキャリアは多いが、既存のGSM方式と新しいW-CDMA方式の座を脅かすほどにはなっていない。また台湾やタイにおいては通話品質やサービス内容が劣っているようで苦戦が続いているとのことである。

CDMA方式が国の主力方式となっているアメリカや韓国では日本と同様に、通信キャリアとメーカーが一体となって端末とサービスを開発して魅力ある製品を定期的に市場に投入しているのに対し、ほかのCDMA採用国の大半はGSM/W-CDMA方式と同様の分業体制が取られているからだ。
GSM/W-CDMA方式であれば数十社のメーカーから年間100機種以上の端末が市場に投入されている。メーカー同士が激しく競争し合うことで技術開発も日進月歩で進んでいるため、キャリアとしても端末に搭載する新しいサービス開発を行いやすい。
一方、CDMA方式では参入メーカーも年間で投入する新機種数もGSM/W-CDMA方式を大きく下回ることから、新しい技術や機能を搭載した端末がなかなか開発されにくい。そのためキャリアも魅力あるサービスや製品を提供しにくくなっている。

たとえば台湾のCDMAキャリアは、サービス開始当初はコンテンツ内容や端末の単体機能でGSM方式より進んだものを提供していたが、今ではGSM/W-CDMAキャリアのほうがはるかに高度なサービスを提供している。CDMAキャリアは開始当初からサービス内容に大きな差は無く、端末の機能もほとんど向上していないのだ。またMotorolaやSamsungなどの大手メーカー端末のみの提供から、今では台湾と中国メーカーの安価な端末が主力となってしまっている。

■CDMA消失を免れた香港 -低調に終わったCDMA2000免許オークション
香港でもCDMAサービスが提供されているが、事業免許は今年11月で終了となる。この方式は日本で言えばcdmaOne、すなわち1世代前の規格である。このため香港電信管理局は新しくCDMA2000方式の事業者免許1つをオークション形式で提供することとした。しかし昨年10月の免許オークションには1社しか入札が無く、ほかの既存携帯キャリアや通信サービス企業などからの入札は1件も無かったのである。また入札した企業はすでに携帯サービスとしてGSMとW-CDMA方式を提供している通信キャリアであり、CDMA2000方式を積極的に今後の主力サービスとする予定も無いようである。おそらく海外からの国際ローミング受け入れを主目的としたサービス展開を行うのではないかと業界では言われている。

とはいえauのグローバルパスポート利用者にとっては、今年中にも香港でパケット通信ができるようになるため喜ばしいことではある。しかし香港のこの新しいCDMAキャリアの事業が思わしくなくなれば将来的に通話品質などのサービス低下やローミング料金引き上げなどが起こりうる可能性は否定できない。香港からCDMAサービスが無くなる事態だけは避けられたが、今後の動向はいまだ予断を許さない状況なのである。

■auの海外対策は何が必要なのか?
auは2008年春にCDMAとGSMの両方式に対応した端末を提供する予定だ。これによって海外のCDMA方式採用国だけではなく、GSM方式の国でも同端末ならば携帯電話をそのまま利用することが可能になる。GSM方式は日本と韓国以外のほぼ全世界で利用されている規格であるため、この両方式端末を利用すれば世界中で利用することが可能になるだけにグローバルパスポートサービスの利用者にとっては朗報であろう。

しかし、NTTドコモやソフトバンクモバイルが国際ローミング対応機種を多数用意しているのに対し、auのGSM対応グローバルパスポート端末はおそらく年に1機種程度の発売となるとみられている。頻繁に海外に渡航する利用者はこの機種を選べばよいが、年に1-2回程度の海外旅行をする程度ならば、ほかの魅力的な機種を選びたくなる消費者も多いはずだ。

●グローバルエキスパートのサービス
auは「au ICカード」対応端末からICカードを抜き、GSM携帯電話に装着することで海外のGSMエリアで自分の電話番号をそのまま利用できる「GLOBAL EXPERT(グローバルエキスパート)」サービスも提供している。これを利用すれば普段は日本国内専用端末を使っていても、年に数度の海外旅行時に自分の携帯電話番号を海外で利用することができる。しかしこのサービスは、実際に利用してみると対応する携帯電話やサービス内容に若干不満が残る利用者も多いのではないだろうか。

まず利用にはSIMロックフリーのGSM携帯電話を別途購入する必要があるのだが、日本で入手できる推奨機種はノキア・ジャパンから発売されている英語版端末だけである。これでは電話帳を作成しようにも、ローマ字では入力や閲覧などの操作性が劣ってしまう。
ノキア・ジャパンからは、日本語に対応したSIMロックフリー端末「Nokia E61日本語版」が発売されており、HTCニッポンからも日本語対応で海外でも利用できる端末が発売されているのだから、これらの端末を推奨機種に加えてもよいだろう。また日本語対応のGSM端末の開発や日本での取り扱いを、これらのメーカーと共同で行うことも必要なのではないだろうか。

音声通話だけしか利用できないというのでは、他社のサービスや同社のグローバルパスポートサービスと比較しても見劣りしてしまうだろう。また日本人の携帯電話の利用形態からしても、せめてE-mailは利用できるようにするべきではないだろうか。将来的には全ての端末でGSMやW-CDMAのデュアル化を実現するのが望ましいが、海外に出ない利用者にとってはそのために端末単価が高くなることを受け入れることは難しいかもしれない。

では、どうすればいいのか。まずはau全機種をau ICカードに対応させ、突然に海外に行くことになっても手軽に自分の携帯電話番号を海外に持ち出せるようにすること、そして願わくば海外でもメールを自由に送受信できるようにすることが同社の国際サービスを強固なものにするのではないだろうか。

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山根康宏
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