――「キミモノガタリ」はアニメの世界観を意識しつつも、サビで「起死回生」という言葉があるように、自分達にも向けた歌でもあるのかな?と感じたのですが、如何でしょうか?

hideco:まさにそれは!自分達のことでもあるので、そういう気持ちを込めて歌えるというのもありますよね。

――「EDEN」の「It must be change」という言葉も、前作のシングル「ハミングバード」で書かれていた「周りと違ったとしても自分らしくあればいい」というような気持ちと、この2年半で少しずつ変わってきた部分なのかなと。

tetsuhiko:そこが今回のテーマで、この2年半を見ていると大人が謝っていることが多かったり、子供達に夢がなくて「社長にはなりたくない、部長になりたい」みたいな。そういうのって、「ハミングバード」を作っていた頃とはまたちょっと違うかなって。「頑張れ!」と言えなかった当時に、今は逆に言った方がいいんじゃないのか?その人柱になってみようかな、みたいな気持ちですね。

――そういった世の中で起きている事件などから触発されて、歌詞に込める想いは大きいですか。

tetsuhiko:大きいですね。音楽がどういうものかは人それぞれあると思うんですけど、僕が聴いてきた音楽は生き方そのものを左右されるものが多かったので。今なら自分達がそれをやってみたい、という気持ちにもなって。ハッキリ「起死回生」と書いてもいいのかな、という。

――一人称が「キミモノガタリ」は「ボク」で、カップリングの2曲は「あたし」となっていますが、男性のtetsuhikoさんが女性目線の歌詞を書く際に苦労することはありますか?

tetsuhiko:まず、必ず男目線で書くんですよ。それを女の子に主語を置き換えますよね。すると、どこが違うかが分かるんです。男がこう考えるということは多分、女は違うだろうというので。迷った時はhidecoだったり、違う女の人に。hidecoの答えはあまりアテにならないんですよ(笑)。

hideco:ヒドイ…(泣)。

tetsuhiko:hidecoはまた特殊なんですよ。中性的な、両方の目線を持っているという。hidecoが「ボク」で歌って説得力があるのは、そういう所なのかなと思って。一回、hidecoの声を乗せてみて、グッとくるかこないか。「こないということは、歌詞が間違っているということかな」と僕は思うので、そこは書き直すんですね。だからどんどん歌ってもらって歌詞を聴いて、「まだグッとくるんじゃないか?」と思ったら歌詞が間違えている。表現とかじゃなくて、考え方そのものが間違えているんだなって、より女の子の目線に変えたりはしますね。

――女性のhidecoさんから見て、男性のtetsuhikoさんが書く歌詞はどうですか?

hideco:…私はやっぱり特殊なのかな?「普通の女の人だったら、そう思うんだろうなぁ」という。少し感じ方が違うのかな?と。(笑)。

tetsuhiko:ずっと音楽をやっているじゃないですか。もちろん普通の女の子だと思うんですけど、どこか超越した何かを手に入れてしまったんじゃないのかな?って。普通はこんなに空いて、正直これだけ続けていけるとは思っていなかったですし、hidecoのことはすごいなと思いますね。ブログもあれからずっと一日も休まずに。

hideco:食べ物ブログみたいになっちゃった時もありますが(笑)。

――アーティストだからといって、そんな毎日がドラマみたいな日常にはなりえないですから。どんな状況下でも継続することが大事なんだと思います。

hideco:人間は毎日、何かしら食べますからね。

――hidecoさんは、歌詞よりサウンド面に対してtetsuhikoさんに注文することが多いですか?

hideco:そうですね。歌詞は逆に「あぁ、なるほど!」という(笑)。いつも歌詞で勉強させてもらっている所があって。「キミモノガタリ」とかを見ても、「私も頑張らなきゃ!」という。

tetsuhiko:俺もそう思っているよ。

――hidecoさんの声質ってすごく独特な存在感があって、決して不快なわけではないのですが、遮られることなく脳に直接響くような周波数というか…。

hideco:超・超音波って書かれたり(笑)。

tetsuhiko:真っ直ぐくる帯域があるんですよね。それはhidecoのもった才能というか。基本的にヒソヒソ話ができないですから(笑)。

hideco:でも、tetsuさんが上手いことメロディで、私のいい所なのかどうか分からないですけれど、そういう部分を引き出してくれているのかなと。

tetsuhiko:普通の人が歌って全然普通の歌が、hidecoが歌うとよく聞こえる時もあるんですよ。「あっ、こんなにいい曲だっけ?」となる時もあるし、逆に「こんなにいい曲なのに、なんで?」ということもあるんですよ。

hideco:(苦笑)。

――良くも悪くも特徴があるんですけど、個性ってそういうものだと思いますね。

tetsuhiko:すごく大事なことだと思いますよ。