【世界のモバイル】世界で勝つケータイメーカー!PRADA携帯をしかけた″LG電子″躍進の秘密
■ライバルとの差別化により"その他"からの脱却に成功
数年前まではLG電子の携帯電話は"アジアメーカーによる安い製品"であり、世界シェアにはメーカー名が出てこない「その他」の1メーカーに過ぎなかった。それが2006年にはSonyEricssonとマーケットシェア4位、5位を争う堂々たる大メーカーにまで成長している。特にCDMA事業では北米でトップを取るなど、国や地域によってはNokiaやMotorolaなどの上位メーカーよりも好調な売り上げを記録している。同社がここまで成長した原動力はどこにあるのだろうか? それは同じ韓国メーカー、Samsungを常にライバルとして意識していたからだろう。その後SamsungはMotorolaを一時は抜くほどの成長を見せ、LG電子はマーケットシェアで倍程度にまで差を広げられる。特に小型のスライド型端末はスタイルと機能バランスの良さから世界中で売り上げを伸ばし、数百万台クラスのヒット商品も生まれるなど、Samsungの顔ともいえるデザインとなっていった。一方のLG電子はスタイリッシュな折りたたみ形状端末などをリリースするが、大ヒットまでには至らなかった。
しかし、ここで1つの転機がLG電子に訪れるのだ。W-CDMAキャリアとして欧州などで事業を開始したHutchisonグループからW-CDMA端末の大量受注を受けたのだ。2004年にHutchison向けに納入した「U8110」は、それまでのW-CDMA端末と比較すると小型で電池の持ちもよく、価格も安いことからW-CDMA端末としては当時トップクラスの売り上げを記録した。その後Hutchisonグループ以外へのW-CDMA端末の供給も広がり、一時はW-CDMA市場でシェア1位メーカーになったほどであった。これにより同社はW-CDMAに強い技術力のあるメーカーとして消費者から認知されるようになる。そのころSamsungはW-CDMA端末の小型化に苦しんでおり、この市場ではLG電子がはじめてSamsungを大きく引き離すことに成功したというわけだ。
Huchisonから発売されるW-CDMA端末は同社のもう一つの顔だ(写真はU890) |
ただし同社のW-CDMA事業の成功も、その後は大手メーカーが本格参入を開始したこととから競争は激化していくことになる。またGSMやCDMA市場ではなかなかヒット作を出すことができなかった。そこで同社が採用した新しい戦略がデザインを中心にした製品開発なのだ。高機能化だけで製品をアピールするのではなく、製品そのものを"価値"あるブランド化し、端末を持つことをユーザーが満足できる製品作りを目指していったのだ。そのブランドが前述した「Black Label」であり、その第一弾としてリリースされたチョコレートフォンは製品の良さだけではなくマーケティングの成功もあって大ヒット商品へと育ったのだ。
このようにLG電子が成功した理由は、他社を追いかけるのではなく他社にはない製品作りに力を投入した結果であろう。Samsungというライバルの背中を追わずに差別化を行い、メーカーとしてのアイデンティティーを確立したことが躍進の秘密でもあるわけだ。
■日本にはメーカー間の競争はあるか
日本でも以前は各メーカーが、他社との機能合戦を行うなどメーカー同士がライバルとなり、開発合戦を行うことがよくみられた。しかしここ数年はキャリアがまとめて「夏モデル」のように端末を揃えて発表することが多くなり、キャリアの仕様の統一などから、各メーカーが直接競争するという状況がみられにくくなっているように感じる。そのため似たような端末が揃ってしまうこともあるようだ。日本メーカーの端末もいくつかの機種はそのまま海外でも発売されているが、それらが海外で爆発的に売れているという報道をみることはない。これはメーカーとしてのブランド力が確立していないため、たとえ機能が優れていたとしても独立したメーカーとして消費者に認知されていないからだろう。海外で日本メーカーが成功するにはLG電子の「その他」からの躍進例も一つの参考になるのではないだろうか。
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山根康宏
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