やはり地味な日常ベースの話が自分には一番あっているなと語る原恵一監督

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「クレヨンしんちゃん」の映画シリーズなどで高い評価を受ける原恵一監督が、長年に渡り映像化を考えていた「河童のクゥと夏休み」が、7月28日、全国ロードショーとなる。
「河童のクゥと夏休み」は、現代によみがえった河童の子供と少年、そして少年たちを取り巻く人々とのひと夏の出来事を描いた心温まる物語だ。

原作に出会ってから20年。アニメ映画化を実現させた原恵一監督のインタビューの前編をお送りする。
・後編はこちら

■この作品を映画にしたいと思われた理由はなんだったのでしょうか

何が何でもという気持ちで、ずっと企画を抱えていたわけではないんです。ただ、いつまでたっても、これが一番作りたいものだったという感じです。
皆が知っている原作である分けではないので、実現できる可能性は少ないだろうなと思っていました。僕自身、地味な日常をベースにしたお話を作りたかったので、企画としてもなかなか通りにくいだろうなと思っていたんですよね。だから、ある意味、僕の夢の企画だったんです。

アニメーションはファンタジーだったり、SFだったり、カッコいいアクションが求められるかもしれないのですが、僕がそういうものに興味がなくなってしまったんですよね。そういうものを自分なりにやっていたことはありますけれども、やはり地味な日常ベースの話が自分には一番あっているなと思うようになってきたんです。

ただ、日常といっても河童がでてきたり、龍が出てきたりするので、完全には日常とは言えないんですけどね。日常をベースにした少し非日常的なものを日常ベースに描がきたかったんでしょうね。

■そうすると、特に「河童」の話を描きたかったというわけではないんですね

そうではないんです。気に入った原作が、たまたま河童のお話だったというだけで、昔から河童が大好きだったというわけではないんです。
ただ、これをアニメ化したいと思って河童に関する本をかなり読んだんです。そうすると、河童が持つ妖怪としての性格など、魅力的なところを発見できました。河童の好きなところは、やっぱり愛嬌ですね。妖怪のわりに、人間の周りをうろうろしているんです。

■では、今回の映画で監督が特に訴えたかったものはありますか

特にこれがというものはないですね。あえてそうしたくなかったんです。
「普通の家族がいました。そこに河童の子供が加わりました。さあどうなるでしょう」といったときに、これは面白いなと思ったんです。いろんな事が起きて、いろんな局面があって、そこで家族はどう思うか。河童はどう思うか。そうして、どんな事が起こるだろうかというのが描きたかった部分です。
それがずっと20年間、自分の中で一番興味をもって描けそうな作品だなと思い続けることができた理由です。

■監督が始めて原作を手にされて20年という歳月が過ぎたわけですが、監督ご自身が年をとられるに連れて映画化への思いは変化されたのでしょうか

変わった部分もあるし、変わらなかった部分の両方ありますよね。最初にこの作品をアニメにしたいと思ったときには、自分にそれを作り上げるだけの力はないと思っていたんです。だからこそ夢の企画だったんですね。
それが、20年の間に今なら作れるんじゃないかと。自分の技術的な点からいっても、そう思えるようになってきたんです。それは、「クレヨンしんちゃん」などを何本も製作する中で身に付けてきたことが役に立っていると思います。

■若かりしころの監督が足らなかったと思われたものは何なのでしょうか

すべてが足りないと思いましたね。この作品を何とかしたいという気持ちだけはあったのですが、どうしたらいいんだろうと思いましたからね。
これをアニメにするという時に、どういう風に作り上げていったらいいんだろうかと考えても、こうすればいいんだということが見つからなかったんです。だから、20年間ずっと抱えていたといっても、今の形で作ればいいんだと思えるようになったのは、それほど前ではないんですね。10年くらい前辺りから、何となく一本の映画としてできそうな気がするなと思えるようになった。
ただ、その頃から更に10年経っているわけですから、もっとこうしようとか、ここはもっとこうした方がいいんじゃないかという作業は、時々やっていました。「クレヨンしんちゃん」の映画を作りながらも、この作品のことを考えていましたから(笑)。
逆に「しんちゃん」を作ったおかげで生まれたことも、今回の映画に活かされているはずなんですね。反対に、この映画のために考えたアイデアを「しんちゃん」で使ったりしていましたからね。アイデアはそれほどあるわけではないので、いざ「河童のクゥ」を作ることができることになったときに、このアイデアは「しんちゃん」で使っちゃったよなと、困った覚えがあるんです。でも、あえていいやと、それが自分なんだと思うようにしました。

■この映画を製作するにあたってある程度のターゲットを設定されたのでしょうか

ターゲットとかは、余り言いたくないんですよね。皆さんに見てもらいたいですから。
でも、誰に向けて作ったのかといえば、作りながらも余り考えたことはなかったんです。今回が特別そうだったというわけではなく、「しんちゃん」の映画を作りながらもそうだったんですけれどもね。こういう質問はよく受けるんですが、答えは余り考えていなかったよ、となるんです。
強いて言うならば、僕と同世代の人に見てもらいたいということなのかな。作品を作った時の、私自身の同世代の人に。
じゃ、子供は見るなとか、お年よりは見るなという気は全然ないですから。当然、子供にも見てもらいたいし、お年よりの方にも見てもらえると嬉しいしですね。ただ、子供に安心して見てもらえるという作品にはしたくなかったんですね。

原 作:木暮正夫
監 督:原恵一
脚 本:原恵一
音 楽:若草恵
出 演:田中直樹(ココリコ)、西田尚美、なぎら健壱、ゴリ(ガレッジセール)、冨沢風斗、横川貴大、植松夏希 ほか
配 給:松竹
公式サイト: http://www.kappa-coo.com/
7月28日、全国ロードショー

『河童のクゥと夏休み』原恵一監督「これは何にも似ていない映画」後編【独占インタビュー】

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