ライブ演出とCG背景から読み解く『超かぐや姫!』の魅力

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大ヒットアニメ『超かぐや姫!』はどのように生まれたのか。ライブ演出を手掛けた中山直哉さん、CG背景を担当した草間徹也さんにお話を伺いました。

ライブ演出・中山直哉

映像の力で「推したい!」と思えるように

ライブ演出が担うのはライブシーンにおいて映像の方向性や色構成、どんな印象を与えたいか、などの設計部分です。Aメロではここを歩いてBメロで変化があって…という部分を決めています。本作はVR空間でのライブなので、設計をミスるとサイズ感が小さくなって説得力が欠けてしまう。当初は手描きでコンテを出したんですが自分でもしっくりこず、監督からもスケール感や密度が欲しいと伺い、Blender(3DCGのモデリングソフト)を使って今の形になりました。

本作はオリジナル作品なので、視聴前に触れられるキャラクター情報がほぼないんです。なので序盤のヤチヨのライブシーンはまさに掴みのポジション。ヤチヨは彩葉にとって神格化された存在なので、「推したい!」と思えるような映像パワーが必要だなと思い、ヤチヨが魅力的に見える演出にこだわりました。普段のツクヨミは暗い時間帯でもやや明るめですが、このライブではコントラストを意図的に強めてヤチヨの見栄えの良さを優先しています。デュエットライブは、本編と切り離されたエンディングやMVと違って劇中に差し込まれます。感情ラインから逸脱しすぎると視聴者が現実に引き戻されてしまうので、ストーリーラインにいかにシームレスに乗せるかを考えました。このライブに至るまでの彩葉は、かぐやに迷惑さを感じながらも少しずつ親しみを感じ始めている頃なので、「かぐやと一緒にいたらこの先もっと楽しい未来が待っているかも」と気づく感情変化をしっかり描けるよう1曲目と2曲目を通しています。

少し未来のライブですから現実ではできない表現も取り入れました。「Ex-Otogibanashi」では、普通ならAメロとサビだけ変える程度の光源変化を複雑にしたくて、色彩設計の方にかなりの色数をオーダーしました。色の変化を伝えるために3DCGモデルを作り、その中に複数のライトを置いて具体的に指示をして。関わる方が多いので、シミュレーションを作って共有できたことも大きかったです。

中山直哉

なかやま・なおや TVアニメ『かぐや様は告らせたい』の第3話ED「チカっとチカ千花っ♡」やYOASOBI「アイドル」MVのディレクションを手掛ける。

CG背景・草間徹也

VR空間でしかできない立体的なエフェクトを

私の担当はCG背景ディレクターで、主にツクヨミイブ演出が担うのはライブシーンにおいて映像のの背景を担当しています。またライブステージや戦闘シーンに関して3DCGのステージモデルを作成し、それに対してルック、いわゆる最終的な色付けやエフェクトを完成させました。ライブ演出の中山さんが予め用意したプリビズ(簡易的な3Dモデルで作る動く絵コンテ)の映像が80%ぐらい完成されていたので、肉付けをし精錬させていった形です。

ツクヨミの背景のベースはCGで作られた京都の街並みで、それを古風な街並みとサイバーパンクの要素を組み合わせた幻想的なメタバース風の3Dモデルにしたいとオーダーをいただきました。実はステージの奥にもうっすら美術さんにレタッチしていただいた、360度ビューの天球で作られたツクヨミの街並みが見えるんですよ。見えにくくても、奥に広大な何かがあるという情報を得られるのは世界を作るうえで大切なことだと思いますし、妥協せず作ってよかったなと思っています。

ライブステージは予め中山さんが作ったBlenderデータをブラッシュアップして構築しました。参考資料にはPerfumeのライブシーンの写真もあり、レーザービームとかプロジェクションマッピングといったデジタル的なイメージを求められているのを感じて、VR空間でしかできない立体的なエフェクトを形にしていきました。例えば「ワールドイズマイン」の床のエフェクトは柄が複雑に変化するんです。担当したスタッフは再現に苦労していましたが、なんとか形にすることができました。

3Dの立体表現を取り入れる良さは、これまでのアニメでは難しかった人間の視点に近いカメラワークで没入感が得られることです。これを実現させるには3Dに精通している監督や演出など周りのスタッフの理解が必要なんです。山下監督や中山さんのおかげで壮大なCG背景を完成させることができたと思っています。

草間徹也

くさま・てつや 3DCGやCGの背景制作やモデリング、ビジュアル構築を担う。参加作に『映画えんとつ町のプペル』、TVアニメ『ゴーストコンサート』など。

取材、文・飯田ネオ Ⓒコロリド・ツインエンジンパートナーズ

anan 2495号(2026年5月13日発売)より