依然として低い状態にある「日本人の金融リテラシー」…札束と高級車で着飾った「投資詐欺」に引っかからず、人から奪われにくい資産の持ち方
2018年のつみたてNISAや2024年の新NISAを追い風に、ここ十数年で「投資」は急速に一般化しました。今では、学生や新社会人が資産運用を始めることも珍しくありません。こうした投資意欲の高まりの一方で、その流れを逆手に取った「投資詐欺」には注意が必要です。オルカンの生みの親である代田秀雄氏の著書『オルカン思考:世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken)より、巧妙化する投資詐欺の手口と、投資の本質についてみていきましょう。
「長期・分散・低コスト」の商品は、プロにとっても合理的
長期投資の本質は複利の力を活かし、資産形成の軸をぶらさないことにあります。近年あらためて強く実感しているのは、オルカンのような長期・分散・低コストの商品が、単に初心者向けというだけでなく、プロの投資家にとっても非常に合理的で強固な手法であるという点です。
長期で見れば再現性が高く、市場のノイズや一時的な誘惑に惑わされにくい――まさに「土台が崩れにくい」資産形成の方法です。どれほど相場が荒れても、どれほど新しいテーマ株が登場しても、世界全体の成長を取り込むこの仕組みは、投資家の人生を守る土台になります。
投資の普及によってはびこる「投資詐欺」
こうして長期投資の土台を固めたうえで、注意したいのが「悪い場」に身を置くことです。インデックス投資ナイト(※)のような良質なコミュニティとは異なり、情報環境や仲間の支えが整っていない場では、短期的な流行や詐欺的な話に心を奪われやすく、せっかく築いた資産や習慣が簡単に揺らいでしまいます。
※インデックス投資家が意見交換するイベント
このリスクは、近年の日本の投資環境の変化と深く関係しています。インデックスファンドがここまで一般化したのは、この十数年のことにすぎません。私たちがeMAXISシリーズを立ち上げた2009年当時、投資はまだ「一部の詳しい人だけがやる特別な行為」という印象が強く、資産形成を語ること自体に気恥ずかしさがありました。
それが、NISA制度の拡充や低コストファンドの普及を背景に、今では学生や新社会人が自然と資産運用を始めています。15年前には想像もできなかったことです。こうした投資の普及は、日本の資産形成文化にとって大きな前進であり、私自身も誇りに思っています。
しかしその一方で、投資が当たり前になったことで新たなリスクも生まれました。それが「投資詐欺」です。情報や仲間の支えが不十分な場では、短期的な利益や話題に心を奪われ、せっかく築いた長期投資の土台を簡単に崩してしまいます。まさに、前述した「悪い場」の危険性が現実化する形です。
投資の普及で、日本全体の金融リテラシーは向上するはずだったが…
投資が広く浸透したことで、日本全体の金融リテラシーは向上するはずでした。しかし残念ながら、その前向きな流れを逆手に取るような甘い誘いがSNSなどで横行しています。
「絶対に儲かります」「年利〇%を保証します」といった触れ込みは、金融の専門家から見ると明らかに詐欺的な要素が含まれることが少なくありません。人は誰でも、できるだけ早く大きなリターンを得たいと考えます。その自然な欲求を逆手に取り、リスクを巧妙に隠して夢だけを見せるのが詐欺の手口です。
本来、投資にはリスクが伴います。高いリターンは、投資家が「不確実性」を受け入れる見返りとして得られるものであり、値動きは大きく、場合によっては元本を大きく損なう可能性もあります。
にもかかわらず、詐欺はその大前提を無視し、短期的な利益や華やかな成功イメージだけを見せます。その結果、何年も積み立ててきた大切なお金や、老後の生活を支える資産が、一瞬で奪われてしまうのです。「投資で人生をよりよくしたい」と一歩踏み出した人たちの希望を食い物にする行為は、絶対に許されません。
投資とは静かで地味で、しかし着実に資産を育む営みです。SNSのきらびやかな投稿や過剰な成功談に惑わされる必要はありません。長い目で見れば、インデックスファンドへの投資ほど誰からも奪われにくく、続けやすい方法は他にありません。
だからこそ、正しい商品を選び、信頼できる仲間とつながり、安定した心理で淡々と続けることが重要です。その積み重ねこそが、あなたの未来を誰にも奪われないものにしてくれるのです。
代田 秀雄
三菱UFJアセットマネジメント 前常務
シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ 代表
