愛子さま、佳子さまだけではない――皇族数減少の議論が進む中、女性皇族方が海外で支え続ける国際親善の実像

全国赤十字大会への出席後、職員らに声をかけられる皇后さま。(左から)秋篠宮妃紀子さま、常陸宮妃華子さま、寛仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さま(2026年5月12日、写真:共同通信社)
皇族数の減少を背景に、国会では女性皇族の結婚後の身分保持を含む皇族数確保策の議論が進んでいる。制度の行方に注目が集まる一方で、女性皇族方が現在実際に担われている公務の具体的な内容は、意外なほど知られていない。
宮内庁の外国ご訪問一覧を見ると、令和以降だけでも、女性皇族方が幅広い国々を訪問されていることが分かる。しかも、その内容は実に多彩だ。公式の海外親善訪問に加え、文化行事への出席、学術講演、スポーツ大会へのご臨席、自然保護や芸術文化に関わる非公式訪問、さらにはご旅行まで含まれる。
公式の親善訪問に加え、文化行事への出席、学術講演、スポーツ大会へのご臨席、自然保護や芸術文化に関わる非公式訪問、さらにはご旅行まで含まれる。
つまり、皇室の国際親善は決して一つの型に収まるものではなく、女性皇族方はそれぞれの立場や専門性、関心分野を生かしながら、海外との関係を多層的に支えておられるのである。
次世代を担う愛子さまの公式訪問、現地と向き合う佳子さまの歩み
例えば、愛子さまは2025年11月、日本とラオスの外交関係樹立70周年という節目に、ラオス政府の招待を受け、初の外国公式訪問として同国を訪問された。
愛子さまの、このご訪問は、令和の皇室の次世代を担う内親王として、大きな意味を持つものだった。国家主席への表敬に加え、日本語教育に関わる学校、医療施設、戦争の記憶を伝える施設などを訪ねられ、現地の人々の暮らしや、日本との関係の積み重ねに丁寧に向き合われた。

ラオスのトンルン国家主席を表敬訪問された天皇、皇后両陛下の長女愛子さま(2025年11月18日、写真:代表撮影・共同通信社)
また、2026年11月には、シンガポールを公式訪問される方向で調整が進められているとも報じられている。2026年は日本とシンガポールの外交関係樹立60周年にあたり、実現すればラオスに続く2度目の外国公式訪問となる。
このご訪問が実現すれば、周年行事への出席にとどまらず、歴史や文化、若い世代との交流を通じて、アジアとの友好を次世代へとつなぐ機会にもなるだろう。
一方、佳子さまの海外ご訪問には、周年行事を通じて、現地の日系社会や若い世代と丁寧に交流を重ねられているという特徴がある。
2023年に訪問されたペルー、2025年に訪問されたブラジルはいずれも日系社会の歴史が深い国であり、日本から移住した人々とその子孫が、長年にわたって両国の架け橋となってきた。

日本とブラジルの外交関係樹立130周年を記念した公式訪問(2025年6月)の際、各地で日系人や現地の子どもたちによるサンバの歓迎を受けられた秋篠宮家の佳子さま(写真:ロイター=共同通信社)
佳子さまのご訪問は、そうした歩みに敬意を示すものであり、現地の人々にとっても、祖父母や曾祖父母の世代が築いてきた日本とのつながりを改めて実感する機会になったと考えられる。
愛子さまがこれから国際親善の経験を重ねていかれる存在だとすれば、佳子さまはすでに海外の現場で人々と直接向き合い、親しみやすさを備えた国際親善を重ねてこられた存在だといえる。
しかし、海外での国際親善を担われているのは、愛子さまや佳子さまだけではない。国際交流という点で、三笠宮の彬子さまもきわめて注目すべき存在だ。
三笠宮家の彬子さまが体現する、文化と学術の明確な専門性
彬子さまは、英国留学を経て日本美術史を研究され、博士号を取得されている。またこのときの体験を描いた『赤と青のガウン オックスフォード留学記』は話題を呼び、作家というもうひとつの顔を持つ。彬子さまは、海外ご訪問においても、文化と学術という明確な専門性が色濃く表れている。
令和以降のご訪問を見ても、2019年には英国・大英博物館で開催された「奈良─日本の信仰と美のはじまり展」のオープニング・レセプションおよび学術シンポジウムに出席されている。
2023年にはフランスで「ラグビーワールドカップ」を視察されるとともに、スイスのチューリッヒ大学で「日本美術に関する基調講演」を行うため、非公式に訪問されている。

2023年9月17日、フランスで開催されたラグビーワールドカップ「イングランド─日本戦」の観戦に訪れた三笠宮の彬子さま(写真:ゲッティ/共同通信イメージズ)
さらに2025年には、英国で開催された「女子ラグビーワールドカップ」を視察し、トルコでは「日本・トルコ外交関係樹立100周年記念 出光美術館所蔵 日本陶磁展」のオープニング式典やアヤンラル遺跡鍬入れ式に臨まれている。
そして同年11月には、エジプトの「大エジプト博物館」の開会式典にも出席されている。
彬子さまの海外ご訪問は、単に日本文化を「紹介する」ことにとどまらない。スポーツや歴史にも学者としての視点から、海外の専門家や関係者と向き合い、より深い日本文化への理解を促すものだと言えるのではないか。
皇族としての立場と研究者としての専門性が重なり合うところに、彬子さまならではの国際親善のかたちがある。
皇室の国際親善というと、政府首脳や王室関係者との面会、記念式典への出席といった場面が思い浮かびやすい。しかし、文化や学術の分野では、長い時間をかけて築かれる信頼関係こそが、豊かな文化の継承や相互理解へとつながっていくと思われるが、彬子さまの学者としての知見は、まさにその点で高い評価を得ているのだろう。

ナショナルデーのパレードを送り出す、スウェーデンのカール16世グスタフ国王(中央)と三笠宮家の彬子さま(2025年5月14日、写真:共同通信社)
五輪招致から続く、高円宮妃久子さまの国際ネットワーク
彬子さまと同様に、自然、文化、スポーツを通じて積極的に海外との交流を重ねてこられたのが、高円宮妃久子さまである。
2013年9月のIOC総会で行われた、「東京オリンピック招致プレゼンテーション」では、堪能なフランス語と英語によるスピーチで大きな注目を集めた。
久子さまのスピーチは、日本の代表団による最終プレゼンテーションの冒頭を飾り、東日本大震災に際して寄せられた国際社会の支援への感謝も丁寧に述べられた。その格調ある語り口は、皇室とスポーツ外交の結びつきを印象づけるものとなった。

IOC総会での東京のプレゼンテーションで、あいさつされる高円宮妃久子さま(2013年9月7日、ブエノスアイレス、写真:共同通信社)
その後も、久子さまは海外で精力的に活動を続けられている。
令和以降だけでも、スウェーデンでの「認知症フォーラム」、カナダでの「日加修好90周年記念行事」、カタールでの「FIFAワールドカップ」、フィンランドと英国での「鳥写真展やバードライフ・インターナショナル創立100周年記念祝賀会」、アイスランドでの「北極サークル総会」など、スポーツ、自然保護、文化、国際会議にまたがるご訪問が続いている。

カタールで開催されたFIFAワールドカップ「日本─スペイン戦」の観戦に訪れた高円宮妃久子さま(2022年12月1日、写真:共同通信社)
久子さまの場合、単発のご訪問というより、長年にわたって築かれてきた国際的なネットワークの積み重ねが、現在の継続的な交流につながっているといえる。
故高円宮憲仁親王は、生前、スポーツや文化交流との関わりが深く、久子さまはその国際交流の遺産を引き継ぎながら、各国との友好の場に立たれているのだ。
アーチェリーや柔道など、スポーツと文化が紡ぐ皇室の人的つながり
高円宮家の長女・承子さまは、2018年1月に全日本アーチェリー連盟の名誉総裁、同年2月に日本スカッシュ協会の名誉総裁に就任された。とりわけアーチェリーでは、全国高校総体の競技大会に臨席されるなど、若い世代の活躍を後押しされている。

秋の園遊会で招待客と懇談される高円宮家の承子さま(2025年10月28日、写真:共同通信社)
また、𥶡仁親王妃信子さまは、柔道を通じた国際交流で存在感を示されている。
令和以降では、フランスやハンガリーで国際柔道連盟主催の大会に臨席するため、非公式に訪問されている。柔道は日本発祥の武道であると同時に、現在では世界各地で親しまれる国際的なスポーツでもあり、信子さまのご訪問は、日本文化としての柔道と国際スポーツとしての柔道へ、より理解を深めるものだったといえよう。

「東京2025世界陸上競技選手権大会」を観戦に訪れた寛仁親王妃信子さま(2025年9月、写真:共同通信社)
彬子さまの妹である瑶子さまも、近年、アメリカ・カリフォルニア州で開催された日本の芸術文化を紹介する行事に出席されている。こうした活動もまた、文化を通じた国際交流の一端を担うものであった。

春の園遊会に臨まれる三笠宮家の次女瑶子さま(2026年4月17日、写真:代表撮影・共同通信社)
国際親善は、確かに式典の場だけで成り立つものではない。むしろ、その背後には長年、専門の分野に関わってきた経験と、そこで培われた人的なつながり、そして多様な文化への理解と相手国への敬意がある。
女性皇族方の海外での役割を考えるとき、公式訪問だけでなく、代々受け継がれ、時間をかけて醸成されてきた「皇室の絶え間ない交流」の実像にも目を向ける必要がある。
皇族数の減少が現実の課題となる中、女性皇族方が海外で果たしてこられた役割は、今後ますます重みを増していくはずである。
筆者:つげ のり子
