(※写真はイメージです/PIXTA)

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2026年1月末に米司法省によって公開された、350万ページに渡る捜査資料、エプスタイン・ファイル。未成年の少女たちから性的搾取を行ったエプスタイン氏の交友関係が記録された文書として世間を騒がせましたが、そこではアメリカ超富裕層たちの資金繰り・資産活用法の実態も明らかとなりました。4月末に『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か--税制が映し出すアメリカの真実』を刊行したばかりの奥村眞吾税理士が、アメリカ超富裕層の資産運用戦略について具体的な事例を紹介しながら解説します。

性犯罪者・エプスタインの捜査資料に超富裕層たちの資金動向

未成年少女らの性的搾取を行っていた性犯罪者ジェフリー・エプスタイン氏を巡る「エプスタイン・ファイル」の公開が進み、アメリカ社会で大きな話題となっています。

本資料には、エプスタイン氏が交流を持っていたとされる政治家、実業家、著名投資家など、世界的な権力者や超富裕層の名前が数多く記録されています。トランプ大統領、クリントン元大統領、ビル・ゲイツ氏、アンドリュー元王子などの名前が確認されています。

エプスタイン氏の交友関係は世間や世論に衝撃を与え、衆目を集めました。しかし、このファイルに記録された注目すべき内容は彼の交友関係だけではありません。名前が挙がっている超富裕層たちの資金の動きや資産管理の実態が明らかになっているからです。

超富裕層レオン・ブラックの資産管理法

特に注目を集めた富裕層が、大手プライベートエクイティファンドApollo Global Management元CEOのレオン・ブラック氏です。ブラック氏は、エプスタイン氏に対して、相続税対策や税務アドバイスなどの名目で、2012年から2017年にかけて総額1億5,800万ドルもの報酬を支払っていたことが問題視され、2021年にCEO職を辞任しています。

エプスタイン・ファイルで開示されたブラック氏の資産は2014年から2015年の記録ですが、当時の彼の純資産は50億ドル(5,000億円)以上と見積もられています。

では、ブラック氏はどのような資産を保有し、どのような投資を行っていたのでしょうか。

希少なコレクションへの積極投資

まず資産内訳を見ると、中心となっていたのは自社・Apollo関連の資産です。当時の価値でApollo株は約20億ドル、Apollo関連投資は約12億ドルに達していました。一方で、一般的な上場株投資は比較的少なく、非Apollo投資は数百万ドル規模にとどまっていました。NYのKappo Masaに25万ドル程度投資していました。

ブラック氏は固定資産としては住居を7件所有し、プライベートジェットや大型ヨットも保有していました。特に目立つのが、アートや希少資産への巨額投資です。

彼は、ムンクの「叫び」を約1億2,000万ドルで購入したほか、ドガ、セザンヌ、ピカソなど著名画家の作品を多数保有していました。また、希少書籍のタルムードのコレクションを2015年に900万ドルで購入。中国ブロンズなどにも3億3,500万ドルの巨額投資を行っています。

固定資産を融資の担保に

こうした資産は、単なる趣味のために保持されたわけではありません。ブラック氏はこれらの固定資産を融資の担保とする金融資産として活用していました。

2015年には、約30億ドル規模とされるアートコレクションを担保に、Bank of Americaから4億8,400万ドルの融資を受けていました。当時のアートコレクションの価値は30億ドル、含み益は10億ドルほどあったと言われ、金利はわずか1.43%だったとされます。融資の利率としては非常に低いです。

希少なコレクションを積極に保有することで流動性の高い資金融資の借入れを可能にする、という投資・資産管理法を取っていたことになります。

アメリカの超富裕層の資産戦略「買って、借りて、死ぬ」

明らかになったブラック氏の資産内訳や投資方法は、いわゆる「Buy, Borrow, Die(買って、借りて、死ぬ)」と呼ばれるアメリカ超富裕層にとって王道の資産運用モデルです。

超富裕層は、自社株やプライベートエクイティ(日本と異なり非上場株式にはほとんど税がかからない)、アートなど流動性の低い資産を大量に保有し、それを担保に低金利で借り入れを行います。資産を死亡時まで売却しないため、相続時の時価に資産の取得価格が引き継がれ(ステップアップ・ベース制度)含み益に対するキャピタルゲイン課税を回避できます。資産防衛だけでなく相続税対策にもつながるのです。

現在74歳になるブラック氏の純資産は約136億ドル(2兆円)と予測されています。約半分の66億ドルはアートコレクション、現金、株式等に分配され、残りの70億ドルでApollo株を保有するとみられます。順調に資産規模を拡大したようです。現代アメリカ社会においては、富裕層ほど低リスクで資産を増やせる構造が存在するといってよいのではないでしょうか。

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表