高市総理が理解できなかった「自公政権」での公明党の役割〜同党元幹部らが本音で告白
2025年、自民党は公明党と連立を解消した。共に保守政党として肩を組んでいた両党だが、公明党が与党の「ブレーキ」として働いていたため、大衆に根差した政党にとどまれていたという向きもある。ではそのブレーキ役を失った高市政権はどうなるのか。前編記事『安倍元総理は「存立危機事態」についてどう悩んでいたのか…激論バトルを繰り広げた公明党元幹部の回想』より続けて報じる。
高市総理が幹事長を経験していれば……
一方、高市早苗総理は台湾に対して武力行使が起き、海上が封鎖されたら「存立危機事態になり得る」と答弁した。同事態に認定されると、台湾に支援に訪れた米軍が攻撃を受けた場合、日本は集団的自衛権を行使して反撃できる。
この答弁に、中国側は「台湾海峡に対して武力介入の可能性をほのめかした」と反発し、日中関係は悪化の一途を辿っている。
「公明党が連立を離脱して政策的に一番影響が出るのが、外交・安全保障です。防衛費の増大に抑制が利きづらくなるのは間違いありません。憲法改正については、公明党の代わりに維新が入ってきたことも重要です。ブレーキが外れ、アクセルが入ってきたことで、議論が進む可能性があります」(帝京大学法学部教授の柿粼明二氏)
高市総理は、自公政権で公明党が果たしてきた役割の重要性を十分に認識していなかった可能性がある。そんな指摘をするのは、自公政権に詳しい中央大学法学部教授・中北浩爾氏である。
「安倍さんは本来、日本国憲法に批判的で、『戦後レジーム』の申し子たる創価学会を攻撃する立場でした。ところが、選挙を取り仕切る幹事長を経験したときに、創価学会の集票力を目の当たりにして、政権を安定させるには公明党をつなぎ留めておくことが極めて重要だと認識したようです。
高市さんはこの認識が薄かったんだと思います。幹事長や選対委員長などの選挙に関わる党務を経験していないので、仕方がなかったのかもしれませんが」
'26年中にも行われるとされる次回の総選挙では当然、自民党はこれまでと違って公明票なしで戦うことを強いられる。自民党元幹事長の山崎拓氏は、自民党の主張が右に寄りすぎないかと案じる。
「公明党が連立から外れたことで、高市人気があったとしても、自民党の得票にはかなり大きな影響が出ると思います。だからこそ、高市自民党はますます右傾化するかもしれません。参政党の出現と躍進に見られるように、右寄りの発言が一定程度受け入れられる土壌が今の日本にはありますから」
公明党元代表も「落とし所がわからない」
そうなった場合、中国との関係はますます悪化していくことが危惧される。公明党元代表の神崎武法氏は維新に一縷の期待を寄せるが……。
「やはり自民党と連立を組む政党は、ブレーキの役割も果たす必要があると思うんです。維新にぜひその役割を期待したいところですが、そこをきちんとできるかどうか。
歴代の政権は、中国と台湾の問題について、『曖昧戦略』を取っていて、対応をあまりはっきりさせないようにしてきました。米トランプ大統領も、そういう対応をしています。そこは高市政権も慎重な対応をされたほうがいいと思います。隣に中国という大国がいる現実からは逃れようがないですし、アジアで最大の貿易相手国なのですから、戦略的な関係をよく考えながら行動していただきたい」
一方で、今回の高市総理の国会答弁が引き起こした事態は簡単に収まらないとも神崎氏は憂慮する。
「中国側も過剰なほど反応しています。高市さんと習近平さんの会談が実現した直後という、この問題が発生したタイミングもよくありませんでした。関係各所がいろいろと忖度しながら動いているため、余計に過剰な反応になってしまっている感じがします。これをどういうタイミングで収めるかというと、なかなか難しい問題です」
かつて中国との太いパイプを誇った公明党の元代表でさえ、落とし所がわからないと語るのだ。前出の山崎氏はこんな恐ろしいケースもあり得ると指摘する。
「中国の習近平総書記は'27年に3期目を終え、4期目の続投をうかがっています。そのためには自身の政権のレガシーとして台湾を統一したい。その際に、日本は自衛隊を派遣して戦うという意味に受け取ったわけです」
高市氏がそのときに総理の座にいるかは定かではない。仮に中国と武力衝突となった場合、公明党が自民党と訣別した'25年10月10日が、日本の転換点だったと振り返ることになるだろう。
「週刊現代」2026年1月5日号より
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