Appleの戦略は「堅実」。iPhoneから読み解くAIへのアプローチ
テックとAIの未来をテーマに、その最前線事情を紹介するイベント「AI First Lounge」。ギズモード・ジャパンとTECH INSIDERが共同主催しており、毎回好評をいただいています。
去る10月2日に、東京 神宮前交差点 ハラカドのBABY The Coffee Brew Clubにて、その3回目が開催されました。今回のテーマは「スマホAI最新事情。iPhoneで勢力図どう変わる」。
9月にリリースされたiPhone 17を中心に、Apple(アップル)やライバル企業のAIに対する製品展開が、われわれとテックの関係性にどう影響を及ぼすかディスカッションされました。
登壇者はギズモード・ジャパンから金本太郎、TECH INSIDERから小林優多郎のほか、ゲストとしてテックの最新事情に詳しい林信行氏(ジャーナリスト/コンサルタント)と、西田宗千佳氏(ITジャーナリスト)をお迎えしています。
Appleが誇るデザイン力
まず前半では、今回のApple新製品発表会を振り返って、その内容を再検証してみました。
林氏は「ひさびさにデザインをフィーチャーしていたのが印象的。発表会でもデザインチームが全面に押し出されていた」とのこと。製品発表のキーノートでも、最初にスティーブ・ジョブスの「形だけでなく、プロダクトがどう動くかまでを含めたものがデザイン」というメッセージが紹介されていましたね。
Appleのオフィスにもよく足を運んでいる林氏は、Appleのデザインスタジオを訪問したこともあります。そこでは製品のカラーリングを決めるスタッフなら、1年間ずっと色のことについて考えるという非常に専門性の高い体制になっているそうです。スタジオではハードウェアだけでなくソフトウェアもデザインされており、ハードとソフト両方で一体感を生み出すことを重視しています。こうした体制がAppleのデザイン力の強さにつながってくるのでしょう。
また新作iPhoneに関しては、Airでエレガンスを追求する一方で、Proでヘビーデューティなギアとしての魅力をアピールしており、異なる方向性を提示していた点にも注目していました。特にProに関しては、性能を突き詰めるためにリサイクルアルミを素材として使っていた点にフォーカス。
アルミは放熱製が高くリサイクル性も高い素材ですが、Appleは他のスマホメーカーでは追随できないほどその加工に優れているそうです。その技術をAppleはどうやって会得したか。西田さんは「潤沢に開発費をかけて大量に製品を作るから」と分析していました。
また、iPhone Airは鍛造チタンを採用していますが、これは今までのフレーム構造と比較するとねじれに強くなっています。これによって工作精度も放熱性もアップし、簡単に曲がったり歪んだりしない筐体が完成したのです。
林氏は、Appleのデザインや製品開発における強みは「製品ラインナップが厳選されていること」だといいます。他社はスマホで大量のラインナップを並べるのに、Apple製品はいつも少品目。だからこそ各モデルの性能を突き詰められるわけで、それがデザインの洗練にもつながっていくわけです。
AppleはAIに慎重なのか?
後半ではAppleがAI分野において、今後どうやってプレゼンスを発揮していくのかについて話されました。
Google(グーグル)やMicrosoft(マイクロソフト)といった他のテック企業と比べると、AppleはAIの展開がやや遅れているように見えます。今回の新製品発表でも、AI関連の新技術にはほとんど触れられていませんでした。
しかし、林氏も西田氏も、これに関してはあまり気にする必要はないといいます。AppleがAIの開発で存在感が薄いのは事実ですが、おそらく次のSiriではかなり発展した形で提示されるのではないかとの見立て。品質が伴わない中途半端なものだったら発表する意味がないですし、現状でiPhoneユーザーがAI機能で困っているという話もほとんど聞きません。
そもそもすべての人の生活に役立つようなAIの活用法は、まだどこのテック企業も明確な答えを打ち出せていません。重要なのは「AI FirstではなくHuman First」であって、Appleはそれを模索している段階だと感じられます。
AppleがSiriをユーザーとのインターフェースにしているのは正しいことです。実際にその裏で動いているのは、ChatGPTなど他社製のAIだったりするかもしれませんが、人が触れる部分は常にわかりやすくあることが大事。
総合的に考えると、AppleはAIに関してかなり堅実なアプローチを選んでいるといえます。ありとあらゆるデータをネットの海から探すというより、むしろiPhoneの中にある情報をベースにAIに取り組もうと考えているのではないでしょうか。これはセキュリティも考慮してのことでしょう。中途半端なベータ版も出しませんが、これはAIの強い影響力と製造責任のバランスを意識しているのかもしれません。
ユーザーとしては、AIから最適な答えを引き出すために、優秀なプロンプトを書く技術が求められるといわれています。しかし、林氏も西田氏もこれはあくまでも過渡期の話で、最終的にはAI側がユーザーに寄り添い、適当なプロンプトでも最適な答えを出せるAIが生まれてくるといいます。テック企業にとってはそうしたAIをいち早く開発することが狙いだし、逆に優れたプロンプトを販売するようなビジネスが生まれるかもしれません。
iPhoneをはじめ、スマホとAIの接点は今後より密になっていくでしょう。今回の「AI First Lounge」は、そうした視点を掘り下げていくという大きな意義がありました。今後のテーマにも大きな期待がかかります。
イベント開催後は懇親会も開かれて、登壇者に直接質問をぶつける機会も設けられました。またギズモードがKeychronと共同開発したトラックボールデバイス「Nape(ネイプ)」も展示されており、多くの人の目を惹きつけていました。
テックの最新事情に興味津々だという方は、次回以降の開催をギズモードでも告知しますのでチェックしてくださいね。また、AIをテーマにしたイベントを開催したいという企業関係者の方も、合わせてご連絡お待ちしております。
